中島哲也 ナカシマテツヤ

  • 出身地:福岡県
  • 生年月日:1959/09/02

略歴 / Brief history

【ポップな映像で映画界を変革する新時代のクリエイター】福岡県生まれ。明治大学卒業後、CM制作会社・日本天然色映画(現・ニッテンアルティ)を経て、1987年よりフリー。山口美江が「しば漬食べたい」とつぶやく『フジッコ漬物百選』、山崎努と豊川悦司の卓球バトルをスーパースローモーションで撮影し、ACCグランプリに輝いた『サッポロ黒ラベル』、SMAPがガッチャマンに扮した『NTT東日本』など、数々のヒット作を生み、CMディレクターとしての地位を築く。 映画にも造詣が深く、82年、大学在学中に製作した「はの字わすれて」が、PFFで入選。88年のオムニバス「バカヤロー!・私、怒ってます/遠くてフラれるなんて」で劇場映画監督デビュー後、しばし映画からは遠ざかる。「夏時間の大人たち」(97)、「Beautiful Sunday」(98)と、90年代に入って相次ぎ発表された作品には、人物や事象のアンビバレントな視点など、中島作品の特徴がすでに見てとれる。その後も、『世にも奇妙な物語/ママ新発売』(01)、『私立探偵濱マイク/ミスター日本・21世紀の男』(02)などエッジの利いたテレビドラマの演出で気を吐きつつ、04年、初のメジャー作品「下妻物語」を発表。我が道を行くふたりの女の子の青春を、ポップな映像とリズム感あふれる語り口で一気に見せ、興行的にもヒットを飛ばすとともに、ヨコハマ映画祭作品賞・監督賞、カンヌ・ジュニア・フェスティバルのグランプリなど、数々の賞を受賞した。06年の「嫌われ松子の一生」ではCGやアニメーションなどを盛り込み、壮絶なヒロインの一代記を音と映像をシンクロさせたミュージカル風の寓話に仕上げ、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。08年の「パコと魔法の絵本」では、後藤ひろひと作の戯曲『MID SUMMER CAROL/ガマ王子vsザリガニ魔人』をもとに、豪華キャストを奇抜なメイクや衣裳で飾り立てたうえ、3DのフルCGキャラクターへと転換させるという、実験的娯楽作の領域に踏み出した。最新作は湊かなえのベストセラーを映画化した「告白」(10)。【多様な技法による斬新なビジュアル】大林宣彦、市川準らに連なるCMディレクター出身の映画監督のひとり。初の劇場用映画を手がけた80年代後半は、まだ“異業種監督”への風当たりが強かったが、デジタル時代の21世紀に入り、さまざまな分野のクリエイターにとって、映画を撮る行為がある種のステータス的な意味合いしか持たなくなった。そんな風潮に乗り、さりげなく登場した「下妻物語」の想定外の面白さは、中島のCMディレクターとしての功績にも改めて光を当てるという逆転現象を生んだ。多様な技法を結集させた斬新なビジュアルの裏で語られるのは、ひたすら幸せを求めて迷走する女性や、少女の記憶に残りたい偏屈な老人などが織り成す普遍的な物語である。クライアント第一のCM界を牽引してきた中島は、観客を中心に据えることで、一見不釣合いなパッケージと中身を、誰の目にも楽しく心に響くエンターテインメントとして融合させ、停滞気味の映画界を革新し続けている。

中島哲也の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 時には懺悔を

    制作年: 2025
    「告白」の中島哲也監督による7年ぶりの新作。西島秀俊と満島ひかりが中島組初参加にして初共演。原作は打海文三の同名小説で、重度の障がいを抱える子どもを通して描く、親子の絆の物語。20年ほど前にこの小説に出会った中島監督は「見る人の気持ちを動かす映画ができるのでは」という想いをずっと抱き続けた。「過去に大きな傷を負った大人たちが、今を必死に生きる“たったひとつの小さな命”と出会い、人生の活路を見出す物語」を独自の視点と緻密な演出で描き出す。出演は黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、塚本晋也、片岡鶴太郎、佐藤二朗、役所広司など。
  • 来る

    制作年: 2018
    第22回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智による『ぼぎわんが、来る』を「告白」の中島哲也監督が映画化。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者が現れ、取り次いだ後輩は謎の死を遂げる。それ以降、秀樹の周囲で奇妙な出来事が起こり始める。出演は「散り椿」の岡田准一、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「恋は雨上がりのように」の小松菜奈、「小さいおうち」の松たか子、「怒り」の妻夫木聡。脚本を中島哲也と、劇作家の岩井秀人、「渇き。」の門間宣裕が務める。
    60
  • 渇き。(2014)

    制作年: 2014
    読者を圧倒するような筆致で第3回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した深町秋生の小説『果てしなき渇き』(宝島社・刊)を、「告白」が第83回アカデミー賞外国語映画賞日本映画代表作品に選出された中島哲也監督が映画化。行方不明になった娘を探すうちに、娘の知らなかった一面が徐々に明らかになり、狂気じみた行動に出る元刑事の父親を描く。家族崩壊を招いたろくでなしの父親を演じるのは「わが母の記」「Shall we ダンス?」の役所広司。中島監督とは「パコと魔法の絵本」以来のタッグとなる。また、周囲を翻弄する美貌の娘に「ただいま。」の小松菜奈が扮する。ほか、「悪人」の妻夫木聡、「嫌われ松子の一生」の中谷美紀らが出演。
    50
  • 告白(2010)

    制作年: 2010
    湊かなえの同名ベストセラー小説を原作に「パコと魔法の絵本」の中島哲也がメガホンを取ったミステリー。教え子に娘を殺された中学校教師の復讐を描く。出演は「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の松たか子、「僕の初恋をキミに捧ぐ」の岡田将生、「キラーヴァージンロード」の木村佳乃など。
    65
  • フラレラ

    制作年: 2010
    2010年9月21日にデビュー15周年を迎えるシンガーソングライター・BONNIE PINK。彼女に由縁ある、竹内鉄郎、信藤三雄、森りょういち、箭内道彦、中島哲也、柿本ケンサクの6人のクリエイターが「フラれる」をモチーフに共同制作した、1話15分のリレー式ショートムービー。全エピソードとも主演は「すべては海になる」の佐藤江梨子。
  • パコと魔法の絵本

    制作年: 2008
    とある病院を舞台に、偏屈な老人と1日しか記憶が保たない少女との心の交流を描くハートウォーミング・ファンタジー。後藤ひろひとによる舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人』を原作に、「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が実写とフル3DのCG合成で大胆に映画化した。出演は、「バベル」の役所広司、「どろろ」の妻夫木聡、「さくらん」の土屋アンナ、「舞妓Haaaan!!!」の阿部サダヲら。パコ役を演じるのは、オーディションで選ばれて本作が映画デビュー作となるアヤカ・ウィルソン。
    80