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リーアム・ニーソン主演 ×「007」シリーズのマーティン・キャンベル監督で、記憶障害の殺し屋がFBIに追われながら人身売買組織に立ち向かう姿を描く「MEMORY メモリー」が、5月12日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかで全国公開。銃撃戦シーンの映像が解禁された。 巨悪に立ち向かうことを決意し、SWAT部隊が警備するビルにひとりで乗り込んだ殺し屋アレックス。エレベーターを降りて早々、激しい銃撃戦が巻き起こる。彼は目的を果たせるか? マーティン・キャンベルのスタイリッシュな演出、70歳を迎えてなお躍動するリーアム・ニーソン、そして信念に生きる男の姿に胸が熱くなる。 Story 完璧な殺し屋として裏社会で名を馳せてきたアレックスが引退を決意。アルツハイマーを発症し、任務の詳細を覚えられなくなってしまったのだ。彼は最後の仕事を引き受けるが、ターゲットが少女だと知って怒りに震え、契約を破棄。そして自ら捜査に乗り出し、財閥や富豪を顧客とする人身売買組織の存在を突き止める──。 © 2021, BBP Memory, LLC. All rights reserved. 配給:ショウゲート ▶︎ リーアム・ニーソン主演 × マーティン・キャンベル監督。記憶障害の殺し屋が最後の戦いに挑む「MEMORY メモリー」
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不倫される妻を絶妙な熱量で演じてみせた広末涼子。歪で非凡な愛のかたち「あちらにいる鬼」
2023年5月10日作家・僧侶の瀬戸内寂聴、小説家・井上光晴、そしてその妻。実在の3人の男女をモデルに、井上夫妻の長女である作家・井上荒野が綴った傑作小説を、廣木隆一監督が映画化した衝撃作が5月10日、Blu-ray&DVDリリース。特典映像に収められた寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子および監督のコメントなどから、歪で非凡な愛のかたちを描いた本作に迫った。 純粋で凄まじい男女の生きざま 夫が布団にもぐりこみ、妻の身体に手を伸ばす。妻は、剝きだした二の腕を撫でさする夫の好きにさせながら、落ち着いた声で言う、「あなたに葬式に来てほしかったと思う。最後に恨みきるためだけだとしても……」。最後に恨みきる、すごい。夫のために自殺未遂を繰り返し、その果てに病で亡くなった女の葬式に、夫が行かなかったことを、妻はこう言って静かに責める。夫を演じているのは豊川悦司、妻は広末涼子。 昨年の11月に公開された「あちらにいる鬼」は、作家・井上光晴と瀬戸内晴美、そして井上の妻の3人をモデルにして、井上の長女で直木賞作家の井上荒野が書いた同名小説の映画化作で、荒井晴彦が脚本を執筆、廣木隆一が監督した。井上夫妻がモデルの白木篤郎と妻・笙子が豊川と広末で、もう一人の主人公、瀬戸内晴美にあたる長内みはるを演じているのが寺島しのぶ。女性関係にだらしなく、普段から嘘ばかりつくのに、どうしようもなく女性を惹きつける男。男には妻子があり、道ならぬ恋と承知の上で身を焦がしていく女。そして、そんな二人の関係を知りながら男と添い続け、やがては女と不思議な連帯感を持つようになる妻。非凡で歪とも言える関係だけれど、そこには「書くこと」「愛すること」に才能と情熱を持った人間たちの純粋で凄まじい生き方があった。 絶妙な熱量で魅せる広末涼子 本原稿のために、映画を数カ月ぶりに観直した。これまでは、寺島しのぶ、豊川悦司の迫力ある演技に目が行き、広末涼子は二人の演技によく対抗しているという見方をしていた。ところが、今回強く引き付けられたのは、冒頭に書いたシーンをはじめとする広末涼子の芝居だった。彼女はこの演技で、キネマ旬報ベスト・テンの22年度助演女優賞を受賞。筆者も彼女に一票を投じたが、改めて、普段は感情を封じ込め、ふとしたときに絶妙な熱量で発露させるその演技に感心した。ベスト・テン表彰式で廣木監督が彼女の演技に対し「怖いだけじゃなく、幅の広さを出してくれて、すごく助かりました」とコメントしているが、その通りだろう。考えてみると、役としてもこの妻・笙子役が一番面白いかもしれない。というのも、クランクイン前に廣木監督と寺島しのぶが、瀬戸内晴美が得度して瀬戸内寂聴となって開いた尼寺「寂庵」を訪ねる様子が、特典映像〔撮影舞台裏〜寂庵訪問〕としてソフトに収録されているのだが、そのなかで、寺島しのぶが初め希望したのは実はみはる役ではなく笙子役だったことが本人によって語られているのだ。ただ、そうなると誰がみはるを演じるの、と監督から詰め寄られ、説得されたというのを他のインタビューで読んだけれど。それでも、やはり寺島しのぶが笙子役に一番魅力を感じていたというのは興味深い。また、映画の中にも得度式のシーンがあり、そこで寺島は自身の本当の髪を切って頭を剃り上げており、役者としての覚悟や思い切りの良さが評判になったが、そうすることにやはり初めは戸惑いがあったことも同じ映像内で語られている。 特典映像はもう2本あって、監督と寺島と広末が登壇した〔完成披露試写会の舞台挨拶〕では、先の寂庵訪問で感じた瀬戸内寂聴の存在が、剃髪を決意する背中を押してくれたことを寺島が語り、〔公開記念舞台挨拶〕では、「いや、寺島しのぶなら本当にやるだろうと初めから思っていました」と豊川悦司が俳優・寺島への敬意を口にしている。おそらくどちらも本当の気持ちで、そのことを知った上であのシーンを観直すと、また新たな感慨が湧き上がってくる。この映像には、俳優たちのすぐ近くで、マイク・スタンドや照明用のレフ板を持ったスタッフが映り込んだ現場写真も何点か収められていて、現場のリアルな様子を伝えてくれる。こういう写真があると特典映像の価値もグッと上がるというものだ。 廣木監督と役者の信頼関係 廣木監督は仕事が途切れない監督で、特に昨年は、コロナ禍のスケジュール変更があったとはいえ、5本もの新作が公開された。村上淳がSMの刺激から醒めそうになっているM男を演じた「夕方のおともだち」、藤原竜也と松山ケンイチが殺人の隠蔽を図る「ノイズ」、戸田恵梨香と永野芽郁が葛藤を抱えた母娘を演じた「母性」、それに大泉洋、有村架純の主演で生まれかわりを題材にした「月の満ち欠け」と、どれも人気俳優が主演する話題作で、製作サイドの監督への信頼がうかがえる。 そんな廣木監督の全作品の中から一本だけ代表作を選ぶとしたら03年の「ヴァイブレータ」だろう。主演は寺島しのぶ、脚本は荒井晴彦で本作と同じ。これが3人の初共働で、06年の「やわらかい生活」で豊川悦司が加わり、今回は4人が揃ったそれ以来の作品。荒井脚本と取り組む廣木演出は気合いの入り方が一段違う、というのはファンの勝手な思いこみか。でも今回の、広末涼子の芝居のように観直すたびに深い発見があるのは確かで、その意味でBlu-ray/DVD化はとてもありがたい。 文=春岡勇二 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=VFX2kTc8H-o 「あちらにいる鬼」 ●5月10日(水)Blu-ray&DVD発売(レンタルDVD同時リリース) ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray:6,270円(税込) DVD:5,280円(税込) 【封入特典】 ・ブックレット(20P) 【映像特典】 ・メイキング ・完成披露試写会 ・公開記念舞台挨拶 ・予告編集 ●2022年/日本/本編139分 ●監督:廣木隆一 ●脚本:荒井晴彦 ●出演:寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子 ●発売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング ©2022「あちらにいる鬼」製作委員会 -
テレビアニメ化もされた同名人気漫画の実写版が、ドラマ化に続いて映画化。元アイドルの松村沙友理が、真逆の立場ともいえる赤ジャージの伝説的なファンを熱演する「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」が、5月12日より劇場公開される。ドラマ版未見でも楽しめる劇場版なのか、そもそも長編映画にふさわしい作品となっているのか。ドラマ版のファン、原作やアニメ版のファン、そしてドラマ版を未見の方にとっても、皆が気になるところだろう。 ドラマ版未見でも楽しめる劇場版 原作は、平尾アウリが『COMICリュウWEB』に連載中で、“推し武道”の略称でも愛される人気漫画。既刊9巻のコミック累計発行部数は100万部を突破しており、2020年1~3月にテレビアニメ版が放送、2022年10~12月にはテレビドラマとして実写化、放送された。今回の劇場版は、そのドラマ版と同キャスト&同スタッフによるもので、ドラマ版の続きを描いている。 ドラマ版の続編ということで初見の方にはハードルが高そうに思われるかもしれないが、実はそうでもない。もちろんドラマ版を見ていた方がより楽しめるのは間違いないが、今回の劇場版の冒頭には簡単なドラマ版の振り返りもあるし、熱狂的なファンと、そのファンに推されるアイドルたちの物語であることは、初見でもすぐに理解できるだろう。応援する側と応援される側、どちらにもそれぞれに夢を追う熱狂や青春のドラマがあることを、笑いや感動と共に軽快に綴っていく。 舞台となるのは岡山県。フリーターのえりぴよ(松村沙友理)は3年前に、街中のイベントで野外LIVEをしていた7人組のローカル地下アイドルのChamJam[チャムジャム]と出会う。そこでメンバーの舞菜(伊礼姫奈)に人生初のトキメキを感じたえりぴよは、熱狂的な舞菜のドルオタ(アイドルオタク)としてLIVEや握手会などに通い続けるようになり、私服は高校時代の赤ジャージしか持たないほど、収入の全てを舞菜への推し活に捧げてきた。そんなえりぴよの推し活も今回の劇場版では4年目に突入。武道館のステージに立つ夢を持つChamJamが活躍の場を広げていく中、鼻血を流すほどのえりぴよの応援にもさらに力が入る。しかし、その一方で、内気すぎて人気が伸び悩む舞菜は、ケガのため一人だけ活動休止を余儀なくされ、焦りや葛藤が深まっていくこととなる。 映画館でこそ体感できるLIVEシーンの臨場感 アニメ版は原作ファンの評価が高かったが、実写版も負けてない。漫画原作の実写化は、まずそのキャラクターの再現度を問われてしまうことも多いが、えりぴよ役の松村沙友理は思い切りのよい振り切った熱演を見せ、ChamJamのメンバー役は実在するアイドルグループの@onefiveの4人と若手女優の中村里帆&和田美羽&伊礼姫奈が歌とダンスも交えて演じ、共に高評価を受けた。特にそのChamJamの実在感は、実写版独自の魅力といえる。3人の若手女優と4人のアイドルという組み合わせは、演技・歌唱・ダンスなどの技量や経験がそれぞれ全く異なりながらも、絶妙なバランスでローカル地下アイドル役を好演。マイナー・アイドルの悲哀など彼女たちの物語も描かれるため、アイドル好きでなくとも、応援したくなってしまう。 そんなChamJamが今回の劇場版では岡山を飛び出し、初の東京進出を果たす。とはいえ、それは一筋縄ではいかないのだが、成長のための大きな足掛かりを掴む。また、ChamJamの楽曲は、アニメ版で制作された曲を実写版キャストでリメイクしているが、今回は実写版としては初披露の『私たちが武道館にいったら』を聞くことができる。LIVEシーンは映画館で見ると臨場感たっぷりで、応援上映などにもハマりそうだ。大谷健太郎監督にとっても「NANA」(05)「NANA2」(06)などで取り組んできた音楽映画の一つとも言えるだろう。 長尺で濃密に描かれる推す側と推される側の関係性 そして、本作の根幹ともいえるえりぴよと舞菜の関係にも、ドラマ版以上に焦点が当てられ、特に舞菜は本作で大きな転機を迎える。推す側と推される側だが、すれ違う恋模様のようにも見えるふたりの関係性が、1話30分のドラマ版と違い、長尺で濃密さを増して描かれていく。さらに今回はえりぴよの働く姿もたっぷり見られ、オタク仲間のくまさ(ジャンボたかお)と基(豊田裕大)と玲奈(片田陽依)以外では、唯一かもしれないえりぴよの友人かつバイト仲間の美結(あかせあかり)もいい活躍を見せてくれる。 推す側のファンの物語であると共に、推される側の全国区のアイドルを目指す少女たちの物語でもあり、誰もが様々な立場に想いを重ねて応援したくなるような本作。今回の劇場版が初見となる方でも、夢を追う者たちの青春群像劇として楽しめることだろう。また、原作のエピソードにオリジナル要素も交えて描かれるが、前提となるドラマ版自体が一部を除き基本的には原作を忠実に映像化しているので、原作ファン、アニメ版のファン共に、劇場版から見ても違和感なく楽しめる。原作も継続中であり、推しに人生を捧げたえりぴよがどのような道を歩むのか、そしてChamJamは武道館に立つことができるのか。その成長を見届けるため、さらなる続編にも期待したい劇場版だ。 文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社 「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」 5月12日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー! 出演:松村沙友理、中村里帆、MOMO(@onefive)、KANO(@onefive)、SOYO(@onefive)、GUMI(@onefive)、和田美羽、伊礼姫奈、あかせあかり、片田陽依、西山繭子、豊田裕大、ジャンボたかお(レインボー) 原作:平尾アウリ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(COMICリュウWEB/徳間書店) 監督:大谷健太郎 脚本:本山久美子 音楽:日向萌 主題歌:@onefive「Chance」(avex trax) 製作:「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会 配給:ポニーキャニオン ©平尾アウリ・徳間書店/「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会 公式HP:oshibudo-movie.com 公式Instagram/Twitter:@oshibudo_abc
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踊って絶望から甦り、連帯する。ムニア・メドゥール監督「裸足になって」
2023年5月10日「パピチャ 未来へのランウェイ」のムニア・メドゥール監督が再び主演にリナ・クードリを迎え、声と夢を奪われたダンサー女性の再生を描いた「裸足になって」が、7月21日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。本予告と本ポスタービジュアルが到着した。 内戦の傷が癒えず、不安定なアルジェリア社会。貧しいながらもバレエダンサーになることを夢見るフーリアは、ある夜、男に階段から突き落とされて大怪我を負い、踊ることも声を出すこともできなくなってしまう。抜け殻同然となったフーリアだったが、リハビリ施設で出会ったのは、心に傷を抱えたろう者の女性たちだった。「あなたダンサーなのね。わたしたちにダンスを教えて」。その一言から始まったダンス教室で、フーリアは生きる情熱を取り戻していく──。 1990年代に“暗黒の十年”と呼ばれる内戦が続き、治安回復の過程でも多くのテロが起きたアルジェリア。その傷を抱え続ける社会を舞台に「現代の問題や、人間と言語の豊かさをもっと掘り下げたいという気持ちがあった」というムニア・メドゥール監督は、以下のように続けている。 「『裸足になって』では、事故による変化に苦しむ若いダンサーの物語を語ることで、現在のアルジェリアの歴史に再び踏み込むことにした」 「私はドキュメンタリー映画出身だから、フィクションに書き直すために、自分の記憶の奥や体験に迫るのが好きなの。私自身、事故でかかとを複雑骨折した後、しばらく動けず、長いリハビリをしたことがあって、孤独や寂しさ、障害、そして何よりも再起について語りたいと思っていた」 「フーリアは再生して、最終的にはもっと強い女性、つまり彼女自身になる。耐えることにより偉大になったフーリアのヒロイン像は、傷つきながらも立ち上がるアルジェリアのイメージを想像して出来上がった」 なお製作総指揮は、「コーダ あいのうた」でろう者の俳優として初めてアカデミー助演男優賞に輝いたトロイ・コッツァーが担当。予告編のナレーターは、声優の沢城みゆきが務めている。 手話をモチーフに振り付けられ、言葉より雄弁に訴えるフーリアのコンテンポラリーダンス。そして抑圧的な社会で手を携え、立ち上がる女性たち。瑞々しく力強い物語に注目だ。 「裸足になって」 監督:ムニア・メドゥール 出演:リナ・クードリ、ラシダ・ブラクニ、ナディア・カシ 製作総指揮:トロイ・コッツァー 原題:HOURIA/99分/フランス・アルジェリア/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:丸山垂穂 配給:ギャガ ©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT 公式HP:https://gaga.ne.jp/hadashi0721 -
福士蒼汰&松本まりかW主演。吉田修一原作 × 大森立嗣監督の衝撃ミステリー「湖の女たち」
2023年5月10日吉田修一の同名ミステリー小説を、福士蒼汰と松本まりか主演で、大森立嗣のメガホンにより映画化した「湖の女たち」が、11月より全国公開される。各者コメントとファースト・ビジュアルが到着した。 琵琶湖近くの介護施設で百歳の老人が不可解な死を遂げた。老人を延命させていた人工呼吸器の誤作動による事故か、それとも何者かによる殺人か。真相を追う刑事たちと介護士の女、そして過去の事件を探る記者の運命は、深い湖に沈んだ恐るべき記憶に呑まれていく──。 「さよなら渓谷」の原作者と監督の再タッグで放つ本作。刑事の濱中圭介(福士蒼汰)と介護士で容疑者の豊田佳代(松本まりか)は、事件が袋小路に入り込むにつれ、インモラルな関係性に溺れていく。衝撃の物語に注目だ。 〈コメント〉 福士蒼汰 圭介は今まで経験したことのない役柄だったので、僕にとって非常に大きな挑戦であり、役者人生におけるターニングポイントと呼べる作品となったと自負しています。 原作や台本を読み込み、撮影に向けて準備を整えて臨みましたが、役者がすべきことは“その場の空気に身を置く”こと、思考を取っ払って感じるがままを表現することだと、改めて気付かされた現場でした。 大森監督が僕を原点に引き戻して下さったのだと感じています。 “わかりやすさ”や“意味”を求められることが多い昨今ですが、この作品では、人間の奥底で疼く何かを感じていただきたいです。言葉だけでは説明がつかない人間という生き物を、湖の絶景と共に受け止めていただけたらと思います。 松本まりか 大森立嗣という人はただひたすらに私を見つめ続けました。 何も語らず肯定し続けました。 私は認められ解き放たれ自由であることに戸惑いました。芝居は俳優はこうあるべきとか、誰かが決めてくれた常識を鵜呑みして従い縛られ生きることに安心感を覚えていること…なんならその不自由さを求めてすらいることに気がつきました。自分は何者なのか、何がしたいのか、何がしたくてここまできたのか、自分の中に何があるのか、何もない、持たない、結局何者でもないことを突き付けられ、焦り、限界を知り、静かに壊れてゆきました。 そこに至って私はようやく、自分を守る、偽るガードが崩れ、その隙から本当に美しいもの、その本質に一瞬、出会うことが出来たのです。 それは私であり佳代であり、自分と役を隔てるものはなかったように思います。 ラストシーン。 彩りを帯びてゆく空と湖、逆光の大森組が三位一体になった夜明け。 あんなにも美しい景色を見たのは初めてでした。 どうしようもなく此処で生きたいと思ってしまった。 「誰かを信じ切る」という監督の揺るぎない覚悟と共に、 あの強烈な映画体験は、生涯この身体から離れることはないでしょう。 監督・脚本:大森立嗣 吉田修一さんの『湖の女たち』と言う小説を読みました。この世のケガレと生の輝きが渦巻くようなものすごい小説でした。沸々とした気持ちを抑えられず、大きな挑戦でしたが映画にしたいと熱望し、なんとか完成までこぎつけました。福士蒼汰と松本まりかが主演です。二人は本当に素晴らしい演技をしています。今は心に響く映画になったのではないかと思っていますが、どのように伝わるか緊張の中にいます。どうか皆さまに届きますように。 原作・吉田修一 海は眺めるものだが、湖はこちらを見つめてくる。 本作を観終わって尚、ざわざわと落ち着かぬ心にそんな言葉が浮かんでくる。 映画を見ていたつもりが、気がつけばずっとその映画に見られていたような感覚だった。 劇中、不毛でアブノーマルな性愛に溺れていく男女を演じる福士蒼汰さんと松本まりかさんからも、その何かを問いかけるような凄みが強く伝わってくる。 二人が重ね合わせるのは体ではなく、互いの弱さである。互いが日常生活で抱えている服従心である。 では人はどのようなときに服従を選択するか。 自由を奪われたときである。 では自由とは何か。 それは恐怖心がないということだ。 とすれば、服従心というのは、恐怖心への対抗策であり、自由を希求する心であるとも言える。 暗い湖に落ちていくような二人の姿に、そんな根源的なことまで考えさせられた。 本作で描かれるのはグロテスクな事件であり、目を背けたくなるような人間の弱さである。しかしその人間の弱さこそが、物語を生み、歴史となっていくことを大森立嗣監督は伝えてくる。 そしてそれでも尚、ほんの少しの勇気によって世界が変わることを、あの涙が出るほど美しい湖の風景を通して観客にそっと教えてくれる。 「湖の女たち」 原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊) 監督・脚本:大森立嗣 主演:福士蒼汰、松本まりか 製作幹事:東京テアトル、ヨアケ 制作プロダクション:ヨアケ 共同配給:東京テアトル、ヨアケ ©2023 映画「湖の女たち」製作委員会 公式サイト:thewomeninthelakes.jp/ 公式Twitter:@thewomeninthelakes