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まずタイトルを二度見していただこう。 「飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件」。 これがメインタイトルだ。 最近注目されているやたら題名の長い人気ライトノベルの映画化? いいや、本作はアフリカの原野で繰り広げられる血みどろのサバイバル・ホラーだ。タイトルだけで一本取られた気分な話題作が7月24日にレンタル開始になる。 砂漠にセスナ墜落からノンストップで開始される連続恐怖 2005年に日本公開されヒットした「オープン・ウォーター」(監督クリス・ケンティス)を憶えているだろうか。島影も見えない大海原に置き去りにされたダイバー夫婦が海上でサメの群れに襲われるスリラーだ。低予算を逆手にとり、緻密な演出でシンプルなシュチエーションの恐怖を描いた佳作だった。本作はその「オープン・ウォーター」の陸上版というべき作品だ。登場人物たちが孤立するのはライオンや毒蛇が生息するアフリカの原野。夜ともなれば漆黒の闇の中、肉を求めてライオンが襲い来る。絶体絶命の中を彼らはどう生き延びるのか。 プロットは長いタイトルがほぼ表現している。しかし飛行機が墜落してライオンが襲ってくるだけでは観客も飽きてしまう。本作の魅力は墜落とライオンだけではなく、目まぐるしくサスペンスが詰め込まれている点にある。 何もないサバンナでの恐怖をどう見せる? 監督の手腕が試される 貧しい子供たちを救う使命を持ちアフリカにやってきたアンドリュー(ライアン・フィリップ)とスー(ミーナ・スヴァーリ)の夫婦だったが、テロリスト集団ボコ・ハラムの襲撃から逃れ、胡散くさい男グラン(エミール・ハーシュ)の操縦するセスナで脱出を試みる。が、セスナは故障し、あっという間に墜落してしまう。夫婦のほかに運良く生き残ったのは4人。しかし妻のスーは脚を負傷し歩けず、非情なグランは夫婦だけ残し近くの集落へ去ってゆく。残された2人、血の匂いを嗅ぎつけにじり寄るライオン。開巻からわずか10分ですでに絶体絶命だ。 いっぽう集落へ向かった4人は砂漠の中で行く先を見失う。炎暑。疲労。のどの渇き。こちらも絶体絶命。集落に行く着くことができずに墜落したセスナの下に戻ってくる。そして夜が来る。ライオンが襲う。毒ヘビも紛れ込む。ひとり、またひとりと死んでゆく……。 南アフリカ出身のムクンダ・マイケル・デュウィル監督はサバイバル・ホラーの構造を研究し尽くしているようで、映像を見ていて飽きさせることがない。地面と草以外何も見えない原野の上に出せるアイデアをすべて投入、二重三重のサスペンスを張り巡らせ緊張を持続させる。やがてセスナの搭乗客の隠された秘密が明らかになる。なるほど、そんな伏線が。闇の中、襲ってくる獣たちの恐怖。見えないライオンだからこそ恐怖が増幅される。夜明けが来る。ふたたび灼熱の太陽が生き残った者を痛めつける。 地平線から車が走ってきた。助かったのか? まだ映画は50分過ぎたばかり。ああ、やっぱりもっとひどい状況になった。 もう水もない。体力もない。それでもサバイバルは続く。そして、最後の最後にもたらされる感動を貴方は見逃すべきではない。 90~00年代に活躍した俳優たちのもうひとつのサバイバル 俳優陣をみれば初めからバレバレだが、後半まで生き残るのはアンドリュー役のライアン・フィリップとグラン役のエミール・ハーシュだ。リドリー・スコット監督「白い嵐」(96年)やクリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」(06年)で純朴で気弱な青年を演じたライアン。一方、マイケル・ホフマン監督「卒業の朝」(02年)やキャサリン・ハードウィック監督「ロード・オブ・ドッグタウン」(05年)では美しい若者だったハーシュ。ふたりとももうすっかりオジサンと化し、かつてのようにマスクだけで女性観客を惹きつける輝きはない。しかし、ベテラン俳優になったからこそ表現できるリアルな人間像、複雑なキャラクターがある。本作では90年代から00年代に活躍した彼らの成長と変化がたっぷり堪能できる。ふたりにとってはそれが映画界でのサバイバルだったのだ。そこが映画のもうひとつの魅力といえるだろう。 ことにエミール・ハーシュは2022年に本作のデュウィル監督と組み「The Immaculate Room」(純白の部屋 日本未公開)という作品を完成させている。それは真っ白でシミひとつない密室に50日間住むゲームで賞金を得ようとする男女の関係の変化を追求するソリッド・シュチエーションを逆手に取った実験的スリラーだった。本作もまた広大なで何もないアフリカの原野でいかにサスペンスを構築するか、監督と俳優で新たな挑戦を仕掛けたように見える。低予算でも底なしの恐怖と緊張を繋いでゆく。その技術と努力は映画ファンも学ぶべき要素が多い。 では最後にもう一度タイトルを。「飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件」。ぜひ暗記して本編を鑑賞あれ。 文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=_K4ghzp50uM 「飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件」 ●7月24日(水)レンタルリリース ●2024年/アメリカ/本編85分 ●監督・脚本:ムクンダ・マイケル・デュウィル ●出演:ライアン・フィリップ、エミール・ハーシュ、ディラン・フラッシュナー、ミーナ・スヴァーリ ●発売・販売元:プルーク © 2024 KALAHARI FILM LLC
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空音央監督「HAPPYEND」がヴェネチア映画祭オリゾンティ・コンペティション部門出品
2024年7月23日新鋭・空音央監督が長編劇映画デビュー作として二人の高校生の関係を描いた「HAPPYEND」が、第81回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門でワールドプレミア上映されることが決定した。 空監督作品の同映画祭への出品は、アウト・オブ・コンペティション部門に選出されたコンサートドキュメンタリー「Ryuichi Sakamoto | Opus」に続き2年連続2度目となる。なお日本公開は、10月4日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて。 〈コメント〉 空音央監督 友情の物語である『HAPPYEND』を映画にするにあたって、一番大切にしたのは、スタッフやキャストとの関係性でした。幼馴染である登場人物に説得力を持たせるためには、撮影現場での俳優やスタッフ同士の友情や信頼関係が必要不可欠だと考えました。キャスティングやリハーサルを始めると、自分の想像をはるかに超えて、みんな仲良くなり、まるで何年も前からの友達みたいに、みんな和気藹々と制作に励んでくれました。その現場の雰囲気は、絶対にスクリーンに滲み出てくるだろうと、強い手応えを感じていました。ヴェネツィア国際映画祭がその魅力を受け止め、「地平」という意味を持ち、新しい視点を見出す『オリゾンティ部門』のコンペティションに選出してくれたことを心から嬉しく思っています。 この場を借りて、愛のこもった素晴らしい仕事をしてくれたキャスト・スタッフに感謝します。 栗原颯人(ユウタ役) 今作で僕は、友情というものの捉え方をとても考えさせられました。 今生きている瞬間を大事にしたい人間もいれば、この先の未来を考えて生きるべきという人間もいる、そんな人間同士が同じものを見たり聞いたりしていても、その場の在り方は一緒なように見えて違うというのは当たり前の話です。 でもそんな儚いものでも大事にするべきだと思うし、それがより自分という人間の中身を構築し、築き上げていくものだと思います。 スクリーンデビューとなった今作ですが、温かいキャストやスタッフの方に囲まれて、とてもかけがえのないものとなりました。ヴェネツィア出品も決定ということで、中々頭が追いついていませんが、良い作品だと自信をもって言えます。是非観てください。 日高由起刀(コウ役) 撮影期間中、初めての演技ということもあり好奇心と戸惑いが入り混じっていたのを覚えています。演技に正解なんてないのは分かっていますが、当時は自分の思う正解に近づこうという思いで取り組んでいました。結果としてこのような素晴らしい映画祭へ出品が決まった事を、とても嬉しく思います。監督はじめ、作品に携わった方々、皆様に助けていただきました。公開前の今、なんとも言葉には表せない、このワクワクとした感覚を忘れないように今後の俳優人生に活かしていきます。 Story 幼馴染で大親友のユウタとコウ。仲間たちと音楽を聴いたり悪ふざけをしながら日々を過ごしていた。 高校3年のある晩、こっそり忍び込んだ学校でユウタはとんでもない悪戯を思いつく。翌日それを知った校長は激昂し、校内に生徒監視用AIシステムを導入する騒ぎに発展。 この一件をきっかけに、大学進学を控えるコウは自らの将来やアイデンティティを深く考え始める。一方でユウタは、変わらず楽しいことだけしていたい。2人の関係は次第にぎくしゃくし……。 「HAPPYEND」 出演:栗原颯人、日高由起刀、林裕太、シナ・ペン、ARAZI、祷キララ、中島歩、矢作マサル、PUSHIM、渡辺真起子、佐野史郎 監督・脚本:空音央 撮影:ビル・キルスタイン 美術:安宅紀史 プロデューサー:アルバート・トーレン、増渕愛子、エリック・ニアリ、アレックス・ロー、アンソニー・チェン 製作・制作: ZAKKUBALAN、シネリック・クリエイティブ、Cinema Inutile 配給:ビターズ・エンド 日本・アメリカ/2024/カラー/DCP/113分/5.1ch/1.85:1 © Music Research Club LLC -
男女3人の青春のひと時。カンヌ映画祭出品「国境ナイトクルージング」
2024年7月23日北朝鮮に近い中国の延吉を舞台に、偶然出会った若い男女3人のひと時を描き、第76回カンヌ国際映画祭ある視点部門への出品ならびに第96回アカデミー賞国際長編映画賞シンガポール代表作への選出を果たした「国境ナイトクルージング」が、10月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国で公開される。ティザービジュアルと特報映像が到着した。 友人の結婚式に参列するため、冬の延吉を訪れたハオフォン。披露宴が終わり、上海に戻る翌朝のフライトまで、暇つぶしに観光ツアーに参加する。ところが運悪くスマートフォンを紛失し、観光ガイドのナナはお詫びとしてハオフォンを夜の街に連れ出す。男友達のシャオも合流して飲み会は盛り上がり、3人はナナの部屋になだれ込んで朝まで飲み明かす。 そのまま寝過ごしてフライトを逃し、途方に暮れるハオフォン。ぽっかり空いた週末、シャオの提案で3人はバイクに乗り込み国境クルージングに出かける。目的もなく数日を一緒に過ごしただけ。それでも心から笑い、冒険した思い出が、迷える若者たちの未来を変えていく──。 https://www.youtube.com/watch?v=eH2O0N5kuNY 監督は「イロイロ ぬくもりの記憶」(13)でカンヌ国際映画祭カメラドールを受賞したシンガポール出身のアンソニー・チェン、プロデューサーは「MEMORIA メモリア」(21)「熱帯雨」(19)のメン・シェ、撮影は「少年の君」(21)のユー・ジンピン、音楽は“シンガポールのアンビエント・ボーイ"ことキン・レオン。 キャストは、ナナ役に「少年の君」のチョウ・ドンユイ、ハオフォン役に「唐人街探偵」シリーズ(15~)のリウ・ハオラン、シャオ役に「流転の地球」(19)「あなたがここにいてほしい」(21)のチュー・チューシアオを配する。 是枝裕和監督が「本当に大好きな作品」と称える、繊細でドリーミーな青春映画に注目だ。 「国境ナイトクルージング」 監督・脚本:アンソニー・チェン 出演:チョウ・ドンユイ、リウ・ハオラン、チュー・チューシアオ 2023年/中国・シンガポール/中国語・一部韓国語/100分/1:2.00/5.1ch 原題:燃冬 英題:The Breaking Ice 日本語字幕:本多由枝 PG-12 提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム © 2023 CANOPY PICTURES & HUACE PICTURES 公式サイト:kokkyou-night.com -
夢はロイヤル・バレエ団で踊ること。「リトル・ダンサー」がデジタルリマスター版でリバイバル
2024年7月23日イギリスの炭坑町に暮らすビリー少年が抱いた、無謀とも思える夢「ロンドンのロイヤル・バレエ団で踊ること」。それはやがて家族の希望となる──。不朽の青春映画「リトル・ダンサー」(2000)がデジタルリマスター版となって、10月4日(金)より新宿ピカデリーほか全国で公開。ティザービジュアルが到着した。 監督はこれが長編映画デビュー作となり、のちに「愛を読むひと」(2002)「めぐりあう時間たち」(2008)「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(2011)などを送り出すスティーヴン・ダルドリー。 ビリーを演じたのは当時13歳で、2000人の候補者から選ばれたジェイミー・ベル。バレエを習うことに反対する父親への怒りをはじめ、さまざまな感情をダンスに乗せて表現し、カンヌ国際映画祭監督週間クロージング作品として上映されるや否や、無名の少年が一夜にしてスターに! と称賛された。 ビリーにバレエの楽しさを教える先生には「ハリー・ポッター」シリーズのジュリー・ウォルターズ、父親には「マーベルズ」のゲイリー・ルイスが扮し、世界的バレエダンサーのアダム・クーパーが特別出演。さらにT・レックス、ザ・クラッシュ、ザ・ジャムの楽曲使用もポイントだ。鮮やかに甦った映像で、再び感動を味わいたい。 「リトル・ダンサー デジタルリマスター版」 監督:スティーヴン・ダルドリー 脚本:リー・ホール 製作:グレッグ・ブレンマン、ジョン・フィン 撮影:ブライアン・トゥファーノ 編集:ジョン・ウィルソン 音楽:スティーヴン・ウォーベック 振付:ピーター・ダーリング 出演:ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルイス、ジェイミー・ドレイヴン、ジーン・ヘイウッド、スチュアート・ウェルズ、アダム・クーパー 2000年/イギリス/111分/カラー/ビスタ/5.1ch 字幕:戸田奈津子 配給:シンカ G 映倫番号(S-3733) © 2000 Tiger Aspect Pictures (Billy Boy) Ltd. 公式サイト:https://synca.jp/littledancer2024/ -
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』が、東京・帝国劇場で開幕中、8月7日まで上演される。本作は、ニコール・キッドマン&ユアン・マクレガーが主演を務めて話題を呼んだ、バズ・ラーマン監督によるミュージカル映画「ムーラン・ルージュ」(01)をベースに、演出家のアレックス・ティンバースが、ザ・ローリングストーンズやエルトン・ジョン、マドンナ、レディ・ガガなど、およそ70曲に及ぶヒット曲を全編に散りばめた「マッシュ・アップ・ミュージカル」として舞台化したもの。2018年のボストン公演を皮切りに、2019年にはNYブロードウェイで上演され、トニー賞最優秀作品賞(ミュージカル部門)を含む、10部門を受賞。その後、シカゴやロンドン、メルボルン公演を経て、2023年6月、ついに日本でも帝国劇場で初上演。真っ赤に染められたゴージャスなステージと、豪華キャストが織り成す華麗な歌とパフォーマンスにより大好評を博した舞台の再演となる。 物語の舞台は、1899年、パリ。キッチュで退廃的なムードを漂わせるナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」で、花形スターであるサティーンと、アメリカ人作曲家のクリスチャンが出会い、激しい恋に落ちるが、クラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラーの手引きで、サティーンのパトロンとなった裕福な貴族デューク(モンロス公爵)が二人の間を引き裂く。サティーンを愛するクリスチャンは、画家のロートレックやタンゴの振付師のサンティアゴなど、ボヘミアンである友人たちと共に、華やかなミュージカルショーを舞台にかけ、窮地に陥った「ムーラン・ルージュ」を救うことで、サティーンの心を掴もうとするが……。 「ムーラン・ルージュ」仕様の赤いライトに照らされたロビーに足を踏み入れたその瞬間、帝国劇場の吹き抜けを彩ってきた猪熊弦一郎による美しいステンドグラスの意匠も相まって、「ここはパリ?」と錯覚しそうになるほど。深紅のビロードカーテンとシャンデリアで装飾された劇場舞台の上手には、いまにも動き出しそうな巨大な青いゾウのオブジェが鎮座し、下手では電飾付きの赤い風車が回転。舞台上にはレースを模した電飾付きのハート型のアーチが幾重にも重なり、舞台中央には、「MOULIN ROUGE」のロゴが妖艶に光り輝く。 開演10分前から、プレショーとしてダンサーやアンサンブルのキャストたちがゆったりとした身のこなしでステージ上に姿を表し、胸を高鳴らせてショーが始まるのを待ちわびる時間の贅沢さを肌で感じる。剣を呑むマジックが披露された後、一旦幕が下り、クリスチャンが登場。マドンナのようなコスチュームを纏った女性ダンサーらによる「Hey sister, Go sister……」の歌声とともに、ムーラン・ルージュのショーが華々しく幕を開ける。そして「ムーラン・ルージュ」の支配人であるハロルド・ジドラーが巧みな口上で、客席ごと熱狂の渦へと誘ってゆく……。 日本版では、エルトン・ジョンの「Your Song」の訳詞を松任谷由実が手掛けているほか、宮本亜門やUAら、多くの人気アーティストたちも訳詞を担当。誰もが一度は耳にしたことがあるような有名楽曲のサビのフレーズを、抜群の歌唱力を誇るキャストが歌い繋いでいく「マッシュ・アップ」という手法が採用されており、幅広い年齢層に刺さるであろう「愛」にまつわる数々のヒットソングの日本語版のメドレーが、登場人物の心情として楽しめる。 舞台美術はもちろん、宝石のように光り輝く煌びやかなレオタードや、フリルたっぷりのカラフルな“カンカンドレス”を身に纏い、舞台上を軽やかに飛び回っては歌い踊る、キャストやダンサーの姿に目を奪われずにはいられない。物語をドラマチックに彩る照明や音響効果と、セリフを歌にのせて感情を伝えるミュージカルスターたちの“場”を掌握する存在感。「いまここ」でしか体験できないエンターテインメントの真髄に触れ、幕間さえ夢見心地に。 「ムーラン・ルージュ」の花形スター・サティーンが、ダイヤモンドのように光り輝く衣裳を身に纏い、空中ブランコに乗って優雅に登場するシーンや、2幕の頭でレディ・ガガの「バッド・ロマンス」に合わせてダンサーたちがショーのリハーサルをするシーン。さらには、恋に溺れて自暴自棄になったクリスチャンが、グリーンのライトで照らされた舞台の中で、シーアの 「Chandelier」の1.2.3のリズムに乗せて、アブサンを煽るシーンも脳裏に残る。 悲恋を描いた物語ではあるが、湿っぽいまま終わらないのも本作の特徴だ。カーテンコールではキャストが舞台に勢ぞろいして、「皆でカンカン!」と賑やかにラインダンスを披露。ラストにはライブコンサートさながら、バズーカ砲から銀テープが発射され、花吹雪が舞う。 昨年同様、サティーン役を望海風斗と平原綾香、クリスチャン役を井上芳雄と甲斐翔真、ハロルド・ジドラー役を橋本さとしと松村雄基、デューク(モンロス公爵)役を伊礼彼方とKのWキャストで上演。舞台とは、一期一会の生モノ。キャストの組み合わせや客層が異なれば、印象がガラリと変わるゆえ、中毒性もある。来年改装を控える帝国劇場で目にできる機会はこれが最後。ぜひ「ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル」を観てほしい。 文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社 写真提供=東宝演劇部 『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』 東京公演 日程:2024年6月20日(木)~8月7日(水) 会場:帝国劇場 大阪公演 日程:2024年9月14日(土)~28日(土) 会場:梅田芸術劇場 メインホール キャスト: 【サティーン】望海風斗 / 平原綾香 【クリスチャン】井上芳雄 / 甲斐翔真 【ハロルド・ジドラー】橋本さとし / 松村雄基 【トゥールーズ=ロートレック】上野哲也 / 上川一哉 【デューク(モンロス公爵)】伊礼彼方 / K 【サンティアゴ】中井智彦 / 中河内雅貴 【ニニ】加賀 楓 / 藤森蓮華 【ラ・ショコラ】菅谷真理恵 / 鈴木瑛美子 【アラビア】磯部杏莉 / MARIA-E 【ベイビードール】大音智海 / シュート・チェン 作品公式HP/公式SNS HP:https://www.tohostage.com/moulinmusical_japan/ X:https://twitter.com/MoulinMusicalJP Instagram: https://www.instagram.com/moulinmusicaljp/