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B級映画の帝王ロジャー・コーマンが製作総指揮を務め、多くの映画出演オファーを断っていたラモーンズが唯一出演したロック・ムービーの決定版「ロックンロール・ハイスクール」(1979)が、日本で初めてロードショー公開される(9月23日よりシネマート新宿ほかで全国順次公開)。日本版キービジュアルが解禁された。 ヴィンス・ロンバルディ高校でロック全面禁止を掲げる女校長ミス・トーガーは、校内のダメ男2人を手下に、ロック系レコードを燃やして生徒を取り締まる。ロックが大好きなリフ・ランデルは執拗な妨害にめげず、音楽の課題でラモーンズのために〈ロックンロール・ハイスクール〉を作詞し、ライブ会場でプレゼントすることに成功。曲を受け取ったジョーイ・ラモーンは大喜びし、ラモーンズはミス・トーガーをやっつけるため高校へ乗り込んでいく──。 当初コーマンは、「ディスコ・ハイ」というタイトルでディスコ音楽をフィーチャーした映画を予定していたが、「ハリウッド・ブルバード」(76)「デススポーツ」(78)を手掛けたコーマン門下生の監督アラン・アーカッシュが「ディスコに合わせて高校を爆破することはできない」という明快な理由を提示、コーマンも納得のうえでこの痛快ロック・ムービーを誕生させた。 原案はアーカッシュと「ピラニア」(78)のジョー・ダンテ。撮影は「ハロウィン」(78)「遊星からの物体X」(82)「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ(85・89・90)のディーン・カンディ。メンバー全員がコーマンのファンだったことで出演を快諾したラモーンズは、劇中ライブで5曲を披露し、キャデラックのオープンに乗りながらの演奏なども見せる。 さらに「キャリー」(76)「ハロウィン」(78)のP.J.ソールズが女子高生リフ・ランデルを演じ、コーマン・スクール卒業生ロン・ハワードの弟で「デビルスピーク」(81)「処刑ライダー」(86)のクリント・ハワード、「デス・レース2000年」(75)「フライパン殺人」(82)の監督ポール・バーテル、アンディ・ウォーホル・ファクトリー出身で「爆走!キャノンボール」(75)「ハリウッド・ブルバード」(76)のメアリー・ウォロノフ、「白昼の幻想」(67)「ビッグ・バッド・ママ」(74)のディック・ミラーなどコーマン組ががっつり登場する。 サウンドトラックはラモーンズ楽曲はじめ、アリス・クーパー、ポール・マッカートニー&ウイングス、ディーヴォ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどロック満載。コーマン、ラモーンズ、ロック、学校、爆発という奇跡の融合にしびれること必至だ! 「ロックンロール・ハイスクール」 監督:アラン・アーカッシュ 製作:マイケル・フィネル 製作総指揮:ロジャー・コーマン 原案:アラン・アーカッシュ、ジョー・ダンテ 脚本:ジョセフ・マクブライド 撮影:ディーン・カンディ 出演:P・J・ソールズ、ヴィンセント・ヴァン・パタン、メアリー・ウォロノフ、ポール・バーテル、クリント・ハワード、ディック・ミラー、デイ・ヤング、ラモーンズ 1979年/アメリカ/93 分/PG12/原題:ROCKʼNʼROLL HIGH SCHOOL © 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved. キングレコード提供 ビーズインターナショナル配給 公式サイト:newworldpicturesmovie.jp
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エイドリアン・ブロディ主演で、凄腕の殺し屋が少女を守るために戦う姿を描くハードアクション「クリーン ある殺し屋の献身」が、9月16日(金)より全国公開。予告映像と場面写真が到着した。 「戦場のピアニスト」のオスカー俳優エイドリアン・ブロディは、本作で殺し屋〈クリーン〉を演じるのみならず製作・脚本・音楽も担当。共演は「ジョーカー」のグレン・フレシュラー、「パージ:大統領令」のミケルティ・ウィリアムソン、そしてラッパーであり監督や俳優としても活躍するRZA。監督はブロディとは「キラー・ドッグ」に続くタッグとなるポール・ソレット。 都会の闇に生きる孤独な“清掃人”は、心を通わせた少女を危険な戦いの末に守れるか? 壮絶にしてエモーショナルな物語に注目だ。 Story 深夜の街にゴミ回収車を走らせ、廃品や廃屋の修理を趣味にしている寡黙で孤独な男〈クリーン〉。彼は隣人の少女ディアンダと心を通わせていたが、街を牛耳るギャングたちがディアンダに手を出してくる。彼女を救い出すため、クリーンはアジトに乗り込みチンピラたちを半殺しに。だがその中にギャングのボスの息子がいたため、クリーンは組織に追われる。警察もギャングに加担し、もはや逃げ場はない。クリーンはディアンダを守るべく再び銃をとり、たった1人で反撃に挑むが……。 「クリーン ある殺し屋の献身」 出演:エイドリアン・ブロディ、グレン・フレシュラー、リッチー・メリット、チャンドラー・アリ・デュポン、ミケルティ・ウィリアムソン、ミシェル・ウィルソン、ジョン・ビアンコ、RZA 監督・製作・脚本:ポール・ソレット 製作・脚本・音楽:エイドリアン・ブロディ 製作:ダニエル・ソリンジャー、エリオット・ブロディ 撮影:ゾーラン・ポポヴィック 2021年/アメリカ映画/英語/94分/シネマスコープ/原題:CLEAN/字幕:田崎幸子 提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム clean-kenshin.com © 2018 A Clean Picture, LLC All Rights Reserved.
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「みんなのヴァカンス」ギヨーム・ブラック監督および加瀬亮、深田晃司監督の声が到着
2022年8月3日若者たちの不器用で愛おしいヴァカンスを描いたギヨーム・ブラック新作「みんなのヴァカンス」が、8月20日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開(同監督の特集上映も同時開催)。ギヨーム・ブラックの動画メッセージ、および加瀬亮と深田晃司監督のコメントが到着した。 加瀬亮コメント 人が本当に正直に演じるとき、人が本当に正直に監督するとき、 映画は瑞々しく観客の心の奥底に、人生そのものに流れ込んでくる。 深田晃司コメント 喧嘩する男女がやがて恋に落ちていくのはラブロマンスの典型だけど、「みんなのヴァカンス」はそれをひっくり返しさらに楽しく、 この上なく優しい変奏で見せてくれた。ヴァカンス映画というもはや古典的ジャンルの魅力を確実におさえながら、間違いなく現代の映画にさらりと仕上げた監督の手腕に拍手。何より夏の旅行欲を存分に満たしてくれる映画だった。 ギョーム・ブラック監督 動画メッセージ全文 親愛なる日本の観客のみなさま、こんにちは。 みなさんに8月20日公開の新作「みんなのヴァカンス」を見ていただけるのを、大変嬉しく思います。コメディ映画です。これまでの私の作品の中で、最もコメディタッチの強い作品です。南フランスのキャンプ場で、良きにつけ悪しきにつけ出会う若者たちを描いた夏の映画です。実際には、良くないケースの方が多いのですが……。 この映画は、私がまだ映画経験のない、とても若い舞台俳優たちのために書き上げた作品です。彼らからインスピレーションを得て、彼らのために書きました。フィクション映画ですが、同時にとてもリアルで、ドキュメンタリー的側面があります。この映画を見て、観客のみなさんがたくさん笑って、時に涙してくださることを期待しています。 本当は日本へ行って、みなさんの前でこの作品を紹介したかったのですが、残念ながら今もなお新型コロナウイルスの影響で遠方への移動が難しい状況です。しかし公開のとき、オンラインで、みなさんとお話しすることができるでしょう。 この映画「みんなのヴァカンス」を遠方からみなさんにお届けできること大変嬉しく思います。 映画を楽しんでください。 ありがとうございました。 また、ギヨーム・ブラックと加瀬亮を招いた劇場トークイベントも決定(ギヨーム・ブラックはオンラインで参加)。スケジュールは劇場サイトで確認を。 ©2020 – Geko Films – ARTE France 配給:エタンチェ ▶︎ ギヨーム・ブラック新作「みんなのヴァカンス」公開、監督の特集上映も同時開催! -
イケメンで優しいAR彼氏に女子たちがこぞって沼落ち!? 驚きのストーリーを打ち出してくる中国ドラマ ハマっている恋愛シミュレーションゲームの王子様が現実に現れたら? そんな乙女の夢を叶えてくれる最高にロマンティックな恋を描いた『ラブ・クロスド~魔法が解けた王子様~』。ゲームやSNSを取り入れた設定と、驚きのストーリーで展開する注目の中国ドラマだ。 今回はヒロインがAR(拡張現実)で、イケメンとの理想の恋を体験!? 些細な事でバイトをクビになり、彼氏にもふられ、最悪の気分の姜可楽(ジアン・カーラー)は、父親から人気の恋愛ゲーム「ラブ・ボーイズ」をプレゼントされ、やけ気味にARグラスを装着。4人の男性キャラクターの一人、陸嘯(ルー・シャオ)をセレクトしゲームを始めると、甘い笑顔で自分の願い事を何でもきいてくれる陸嘯にうっとり、すっかりハマってしまう。しかしある日、地下鉄でぶつかった男性とはずみでキス!その男は陸嘯にそっくりで……。 自分の部屋にステキなイケメンが現れて、愚痴をきいてくれたり励ましてくれたりとまるで某化粧水のCMのようなゲームの世界(でも超リアル)。でもはたからみると、一人でニヤニヤしたり、誰もいないところにアイスクリームを食べさせていたり。このシュールな姿もきっちり見せる、演出のビターさが秀逸。ヒロインの親友で同居人の関千雅(グアン・チエンヤー)がアンチ「ラブ・ボーイズ」で、このゲームによって若い女性が現実逃避し、本当の恋や愛を知る機会を失ってしまう、という彼女の持論も耳の痛いところ。 ところが、実はこのゲームのキャラクター4人は実在し、彼らはゲームのデータを集めるために隔離され、共同生活をしていることが判明。その姿はまるでアイドル練習生のよう!不思議なおばさんの紹介で彼らの住居の清掃人となった姜可楽は、外の世界を知らない彼らにいろいろなことを教え……と話が転がり始めます。 “理想の彼”が実在した!? でも性格はかなり違うよう ゲームのなかの“理想の彼”と違って、生身の4人は結構残念な感じ。リーダーの許念(シュー・ニエン)は真面目で穏やかですが、洛可(ルオ・カー)は子供っぽくて食いしん坊、蘇烈(スー・リエ)は人見知り、そして姜可楽の愛する陸嘯は不愛想で攻撃的。ゲームの時とは全然違う冷たい彼にがっかりしながらも、姜可楽は彼らが食べさせてもらえないジャンクフードやケーキ、ビールなどをこっそり持ち込んで気を引き、少しずつ距離を縮めていきます。 一方、マッチング会社のCEOである関千雅は、「ラブ・ボーイズ」に若い女性がハマったために自身の会社の女性登録者が激減したことに対し、「ラブ・ボーイズ」は社会悪だと糾弾。「ラブ・ボーイズ」の生みの親で4人の父親的存在として君臨する徐広寒(シュー・グアンハン)は、秘密裏に許念を関千雅に接近させ、彼女を罠にハメようと画策。また、誰にも心を開こうとしない陸嘯のキャクラターとしての感情面を成長させようと、姜可楽の観察日記をつけるよう命令。これによって、許念と関千雅は想い合う仲に、陸嘯は姜可楽を「働き者だがどんくさい」などと記録しつつ、彼女が気になるように。 こうして思いがけず、ゲーム外でできあがった二組のカップル。大人でロマンチックな雰囲気の許念&関千雅、ラブラブでキュートな陸嘯&姜可楽はそれぞれ楽しい時間を過ごしますが、外の世界から隔離されて育ち、徐広寒の支配下にある彼らをどう解き放つのか、ここからがドラマの見どころ。 明るく強いヒロインが頑張る痛快ラブコメディ https://youtu.be/UGRNA3Iz58U とっぴょうしのない話にも思えますが、コロナ禍にARで疑似旅行を楽しんだり、アイドルや恋愛ゲームに沼落ちしちゃったりなどは、心当たりのある方もいるはず。意外に身近なネタから発展させたこの物語を、お調子者で猪突猛進、抜群の包容力と一途に人を信じることで前進していくヒロインの姜可楽が、ラブコメディとして牽引していきます。原付の後ろに陸嘯や関千雅を乗せて、突っ走る彼女の無敵感が痛快。悲しい過去を抱えていた陸嘯に注ぐ愛情は深く、関千雅との友情は熱い! 関千雅と大量のビールを飲みまくる女子会は本当に楽しそう。 そして彼らをとりまくキャラクターも、とぼけた雰囲気で笑いを誘います。4人のイケメンたちを利用し支配する悪の権化のはずが、どこかぬけた所のある徐広寒。自信家のくせにすぐ不安になり、謎のおばさんこと福順には頭があがらず、彼女の前だと子供のようになってしまいます。徐広寒に仕える雷娜(レイ・ナー)も美人のバリキャリ風なのに、「姜可楽と許念と陸嘯は三角関係? いや、許念と陸嘯が……?」など一人盛り上がってミーハーぶりを発揮したり、関千雅の部下の崔(ツイ)部長も、「ラブ・ボーイズ」にハマってしまった奥さんや、ワンマン社長の関千雅に思いっきりふりまわされる、情けないキャラで楽しませてくれます。 そして物語のキーパーソンともいえる謎のおばさん、福順。革ジャン革パンで大型バイクを乗り回し、すてきな家で豪華な朝食を楽しんだりと、自由奔放な中年女性の星!? 徐広寒と「ラブ・ボーイズ」のすべてを知る彼女の正体とは? 4人のイケメンたちは、ゲームの世界を出て、現実の世界で新しい生活を始めることができるのか? さらに、出生の秘密が明かされちゃったり!? 裏切り!?があったり、息をのむ逃走劇とガッツリ見せてくれるアクションシーン(なんと、関千雅もめちゃくちゃ強い!)、逆境に深まるラブ、やってやられての逆転劇と、怒涛の展開が待ち受けています! 結末まで本当に目が離せません。 制作=キネマ旬報社 『ラブ・クロスド~魔法が解けた王子様~』 ●デジタル配信:全36話好評配信中 ●レンタルDVD:全18巻好評レンタル中 ●セルDVD:全3BOX好評発売中(各13,200円) デジタル配信・DVD・特典などの詳細情報はこちら ●発売・販売元:ポニーキャニオン © Shanghai Youhug Media Co.,Ltd
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こんな親切な泥棒、本当にいたの!? 驚きの実話『ゴヤの名画と優しい泥棒』
2022年8月3日こんな親切な泥棒、本当にいたの!? 驚きの実話『ゴヤの名画と優しい泥棒』 1961年、世界屈指の“美の殿堂”として知られるロンドン・ナショナル・ギャラリーで起きた、フランシスコ・デ・ゴヤの名画盗難事件の驚くべき顛末を描いた映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』が、8月3日(水)よりDVDでリリースされる。 イギリス中を騒然とさせた、前代未聞の名画盗難事件 館内の厳重な警備をくぐり抜け、何者かが歴史的な名画「ウェリントン公爵」を盗み出して忽然と姿を消したこの事件。ショーン・コネリー主演の1962年公開「007」シリーズの第1作目『ドクター・ノオ』の劇中でも語られるほど、当時のイギリス国内を騒然とさせた。 犯行には国際的な犯罪組織が関与しているのでは?…などの憶測を呼ぶ中、犯人は絵画返還の条件として、政府に貧しい地域で暮らす高齢者のTV公共放送(BBC)受信料支払いの肩代わりを要求。その奇妙な「身代金」の提示に関係者も戸惑うが、ある日盗まれた絵画を携えて自首してきたのは…労働者階級の地域でつつましく暮らす、初老の男性だった。事件は全て、彼の「単独犯行」だったのだ! 個人の私利私欲とは全く無縁な、あくまでも「政府に物申す」ことが目的だったという、あまりに破天荒な善人(!?)が引き起こしたこの騒動。もちろん全てが「実話」だ。 イギリス映画界を代表する名監督&名優陣が醸す極上のユーモア 本作の監督を務めたのは、ロマンティックコメディの名作『ノッティングヒルの恋人』を始め、多くの娯楽作を手掛けてきた名手、ロジャー・ミッシェル。彼の「イギリス魂」が全編に込められた、愛すべきユーモアとペーソスに溢れた展開が絶賛を集めたが、残念なことにミッシェル監督は2021年9月に逝去。本作が長編映画の遺作となった。 名画の盗難という大事件を巻き起こした型破りな男、ケンプトン・バントンを飄々とした個性で演じたのは、2001年公開の『アイリス』でアカデミー賞®助演男優賞を受賞した名優、ジム・ブロードベント。そして夫の無軌道な行動に呆れ果てながらも、彼を見捨てることなく添い続ける妻を演じたのは、2006年『クィーン』でエリザベス女王を演じ、アカデミー賞®主演女優賞を受賞したヘレン・ミレン。共にイギリス映画界を代表する名優ふたりが、貧しい境遇でも庶民の誇りを忘れず生きていく老夫婦を、絶妙な掛け合いで演じているのも大きな見どころだ。 権力に媚びない「反骨オヤジ」の心優しき犯行動機とは それにしても、こんな突拍子もない「事件」を起こした容疑者であるケンプトン・バントンという人物は、一体何者だったのか? バントン氏は低賃金の労働者や移民が多く暮らすイギリス北部の町・ニューカッスルでタクシー運転手などの職を転々としながら、劇作家を目指して戯曲を書くことを生き甲斐とする、ごく平凡な庶民だった(ちなみに書き続けた作品は、いずれも世間に認められることは一度も無かった)。一方で彼は、社会の不正や差別などへの抗議運動にも積極的に声を上げ、政府が強要するBBC受信料支払いについても一貫して拒否したため、刑務所に短期間ながら収監されたことがあるという、筋金入りの「反骨オヤジ」だった。 DVDの特典映像に収められたミッシェル監督やキャスト陣のインタビューでも語られているが、バントン氏は陽気で家族想いの優しい人柄ではあったものの、決して「聖人」でもなければ「英雄」でもなかった。むしろ金銭的にはかなりセコい一面があったり、短絡的な行動で周囲を混乱させたりもする、良い歳をした「悪戯っ子」のような性格だったようだ。 https://youtu.be/uSVrxWaEjK0 そんな彼が何故はるばるロンドンまでやって来て、絵画を盗難する犯行に及んだのかという、その意外な「理由」については本編を観てのお楽しみだが、バントン氏が裁判の中で過酷だった自身の半生を振り返りつつ、これまでの窮地を救ってくれたのは「神」ではなく「周囲の人々」だった、と語る場面が印象深い。孤独で貧しい暮らしを営む老人にとってのかけがえのない娯楽であるはずの「テレビ」が、受信料を支払わなくては楽しむことが許されなかったという、当時の理不尽な制度に彼が憤りを覚えたのも、そんな厳しい境遇を互いに助け合いながら生きてきたという過去を踏まえると、とても切実な想いとして理解できる。 60年代「変革」前夜に現れた、現代の「ドン・キホーテ」 バントン氏の決して「権力」に媚びない姿勢は、やがて「長い物には巻かれろ」的な風潮に甘んじてきた多くの庶民にとっても、自ら「声」を上げる勇気を持つきっかけとして、全国に広まっていった。その姿は今もイギリス労働者階級の代弁者として、数々の傑作を撮り続けている巨匠ケン・ローチ監督の映画とも通じるものを感じる人も多いだろう。 本作の作り手たちは、そんな破天荒な父に良くも悪くも翻弄された妻と息子たちの眼差しを通して、不平等な世の中へ「NO」を突き付けた彼の現代版「ドン・キホーテ」的な蛮勇に、時を超えた優しいエールを送っている。そして事件の「真相」が紐解かれていくうちに、バントン氏が本当に守りたかったものが明らかになっていくクライマックスでは、誰もが心の中に暖かい「灯」をともされるのを感じずにはいられないはずだ。 ちなみに事件が起こった61年当時のロンドンと言えば、ちょうどビートルズが世界を席巻する寸前の、若者たちが古い価値観を壊して新たなムーブメントを起こし始める、言わば「変革」の前夜とも言える時期。そんな時代に、思いもよらない方法で一躍「時の人」となった、この最高に愉快な「優しい泥棒」の生き様を、とくとご覧あれ。 文=Takeman 制作=キネマ旬報社 『ゴヤの名画と優しい泥棒』 ●8月3日(水)DVDリリース(同日レンタル開始) DVDの詳細情報はこちら ●DVD:4,290円(税込) ●映像特典(セルのみ) ・公開時ミニメイキング ・公開時インタビュー映像集 (ロジャー・ミッシェル監督、ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、マシュー・グード) ・予告集 ●2020年/イギリス/本編95分 ●監督:ロジャー・ミッシェル、脚本:リチャード・ビーン、クライヴ・コールマン ●出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード ●発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング ©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020