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ノルウェーの新鋭、テア・ヴィスタンダル監督の”Handling the Undead“(原題:Håndtering av udøde)が邦題「アンデッド/愛しき者の不在」として2025年1月17日(金)に日本公開することが決定。場面写真が解禁された。 テア・ヴィスタンダル監督の長編デビュー作で、脚本を共同で手掛けたのは、「ぼくのエリ 200歳の少女」(08)、「ボーダー 二つの世界」(18)で知られるスウェーデンのヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。気鋭の作家が、本作ではアンデッド(生ける屍)を登場させ、愛の所在を問いかける。 主演は「わたしは最悪。」(21)で第74回カンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得したレナーテ・レインスヴェ。また同作でレナーテと共演した、アンデルシュ・ダニエルセン・リーやベテラン勢が脇を固め、生と死の境目を濃密に感じさせる重厚な雰囲気を作り出している。 Story 現代のオスロ。息子を亡くしたばかりのアナ(レナーテ・レインスヴェ)とその父マーラー(ビヨーン・スンクェスト)は悲しみに暮れていた。墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰る。鬱状態だったアナは生気を取り戻し、人目につかない山荘に親子で隠れ住む。しかし還ってきた最愛の息子は、瞬きや呼吸はするものの、全く言葉を発しない。そんなとき、招かれざる訪問者が山荘に現れる。そして同じ頃、別の家族のもとでも、悲劇と歓喜が訪れていた…。 「アンデッド/愛しき者の不在」 原作・共同脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 監督・共同脚本:テア・ヴィスタンダル 出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ビヨーン・スンクェスト、ベンテ・ボシュン、バハール・パルス 2024年/ノルウェー・スウェーデン・ギリシャ/カラー/シネスコ/DCP上映/ノルウェー語・スウェーデン語・フランス語・ペルシャ語/98min 提供:東北新社 配給:東京テアトル ©MortenBrun © 2024 Einar Film, Film i Väst, Zentropa Sweden, Filmiki Athens, E.R.T. S.A.
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悪魔憑き少女リリーのルーツとは?「悪魔と夜ふかし」衝撃映像解禁
2024年10月4日ハロウィンの夜にテレビの生放送番組で起きた怪異を“ファウンド・フッテージ”スタイルで描いたホラー「悪魔と夜ふかし」が、10月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で順次公開される。番組に登場する《悪魔憑き少女リリー》のルーツを明かす映像が到着した。 https://www.youtube.com/watch?v=zpXKmLokAhM 悪魔崇拝者の率いるカルト教団が、FBIに包囲され、家を燃やして集団自決する。その焼け跡から救出されたのがリリーだった。カウンセリングを任されたジューン博士との対話を収めたテープからは、悪魔の憑依を窺わせるリリーの呻き声が……。 この紹介映像に続いてリリーがスタジオに呼び込まれ、番組はいよいよテレビ史上初の《悪魔の生出演》に突き進む。目が離せない。 Story 1977年、ハロウィンの夜。低迷するテレビ番組『ナイト・オウルズ』の司会者ジャック・デルロイは、オカルト・ライブショーで人気回復を図る。スタジオでは霊聴、ポルターガイスト、悪魔祓いなどが次々と披露され、視聴率は過去最高に。だがクライマックスを迎えた時、思わぬ惨劇が起きる……。 ©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED 配給:ギャガ ▶︎ ハロウィンの夜、テレビ番組に悪魔が“生出演”──「悪魔と夜ふかし」 -
講談社シネマクリエイターズラボ×ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 昨年、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2023で第1期受賞者が発表された「講談社シネマクリエイターズラボ」。1年間を経て完成した5作品がついに6月の映画祭でお披露目となった。さらに、アワードセレモニーでは第2期受賞者を発表。現在、絶賛制作中の3作品は2024年末までの完成を目指し、2025年から国内外の映画祭への出品を開始する。最終目標は米アカデミー賞短篇映画部門、短篇アニメーション部門の受賞。世界中に届く映像作品にするべく、講談社は各クリエイターに伴走し、制作を進めていく。 世界を、誰かの心をInspire する、Impossible(=ありえない!)な想像を超えたStories(物語)を一緒につくりたい――と、出版業界最大手の講談社がSSFF & ASIAの全面協力を得て2022年に開始した、世界の映像クリエイター支援プロジェクト「講談社シネマクリエイターズラボ」も今年で3年目を迎える。同コンテストではショートフィルム企画を世界公募し、受賞者に1000万円の予算を講談社が提供。受賞者には担当編集者がつき伴走、映像を制作し完成させ、国内外の映画祭での受賞を目指す。 第1期の応募数は1103件(うち海外200件)にも上り、優秀賞4企画、特別賞1企画の計5作品が受賞した。第2回はその数を上回る1126件(うち海外241件)の応募企画が集まり、3人のクリエイターが受賞を果たしている。そして、6月4日~17日(オンラインは4月25日~6月30日)に開催されたSSFF & ASIA2024の会場、表参道ヒルズ スペース オーにて記念すべき第1期受賞5作品が上映。それに先立ち、初日に開催されたSSFF & ASIA2024クリエイターズパーティにて、完成発表が行われた。100名を超える映像クリエイターに囲まれながら、壇上にあがった5人の監督はそれぞれ制作を終えた感想や作品に込めた思いを語った。 また、クリエイターズラボの神保純子プロデューサーは「ほぼ企画書だけで応募できる夢のようなプロジェクト」であり、「講談社が全力をあげてサポートする」と改めて説明。ついで7月1日には、講談社の「物語」を世界に伝える新ブランデッドフィルムの企画・制作を全世界から募集する新たなプロジェクトも発表となった。最優秀企画には賞金300万円、制作費最大3000万円が用意される。ますますの盛り上がりが期待できそうだ。 第1期受賞5作品 制作発表&作品紹介 [caption id="attachment_42548" align="alignnone" width="1024"] (左から)LiLiCoフェスティバルアンバサダー、崎村宙央監督、マックス・ブラスティン監督、瀬名亮監督、喜安浩平監督、マウリシオ・オサキ監督、別所哲也SSFF & ASIA代表[/caption] 選考から作品完成までを振り返って―:(シネマクリエイターズラボ 永盛拓也) 2022年6月に産声を上げた講談社シネマクリエイターズラボ。「プリプロダクション」の意味も分からないところから「映像の担当編集者」の歩みがはじまりました。 国内の実写2作品は、3月に脚本開発をスタートし、8月にオーディション。美術や衣裳の打ち合わせを経て、10月に撮了。海外の実写2作品もオンラインで幾度も打ち合わせ。特別賞のアニメーション作品は、締め切りギリギリまで絵コンテの修正を重ね、いずれもクリエイター・担当編集者ともども大満足の作品に仕上げることができました。 作品をよりよくするため、制作チーム一丸で最後まで一緒に悩み抜きました。互いに全力を出し合ったクリエイターさんには尊敬の念と感謝しかありません。映像制作の現場感はまだ勉強中。ただ、長年にわたり作家と向き合ってきた講談社の経験は、物語を紡ぐ脚本開発にも画作りにも生きてくるという手応えを得られた1年間でした。積み重ねた知見を生かして、さらにクリエイターのお力になれるようこれからも全力を尽くします。 「Warmth in a Puddle」崎村宙央監督(特別賞) 音響制作:株式会社bpm 出演:橘内良平 上映時間:10分 2001年生まれ。映像作家、アニメーション作家。手描きアニメーション・3DCG・実写を融合させた唯一無二のヴィジュアルスタイルを持つ。 「自身から見える世界の生きづらさを幻想的なアニメーションで表現。自分の頭の中にあるものを引っこ抜いて鏡に映したみたいな作品で、かみ砕いたり理解したりするのではなく体感してもらいたい。水溜まりに落ちるところから物語は違う展開に。水溜まりは現実世界と自身の内面世界をつなぐ穴みたいなものとしてイメージした。最初は実写で作りたいと思っていたが、自分で演技した動画の上にアニメーションの線を乗せたとき、頭の中に浮かんでいた作りたい作品のイメージと合致。なるべくしてこの形になったと感じている」 「美食家あさちゃん」瀬名亮監督 制作:AOI Pro. 出演:池田朱那、菅田愛貴 上映時間:15分 受賞監督は、選考時には19歳の大学生。2022年「Hulu U35クリエイターズチャレンジ」にて制作した処女作『はじめてのよあそび』がグランプリを獲得した。 「かわいいものが大好きで、かわいくなりたいと願う気持ちはすごく素敵なものだと感じているので、それを物語という形で取り出してみたかった。できてみるとすごくかわいいけれど、ホラー映画のような怖さも。もともと小説家志望だったので講談社は憧れの存在。担当編集者、スタッフの方々が親身になって私の意見を尊重してくれたのもありがたく、いろんな方と話しながら撮れた。特に主人公の女子高生と同世代だったこともあり、感情の表現がしやすい現場だった。何よりもこの作品を作れたことが自分にとってプラスとなった」 「SAGE /賢人」マックス・ブラスティン監督 制作:ニュー・プラネット・フィルム&メディア(ロンドン) 出演:レスリー・ジョセフ、レア・コーハン、ポール・サンガン 上映時間:5分 ロンドンの映像制作会社「ニュー・プラネット・フィルム&メディア」のオーナー兼創設者。学生時代に制作した「Before Midnight」が英国全国学生映画祭で最優秀フィクション映画賞を受賞。本作は出品開始直後からイギリス、ドイツ、アメリカなどの映画祭にノミネートされた。 「敵意と憎悪を克服する“ 言葉が持つちから”をテーマとした短篇映画。『愛している』と口にするだけで、身体に化学的な変化が起きる。このアイデアを困難な状況に対する精妙な魔法のように描いた。1テイク、ノーカットに挑戦し、25回目でやっと納得するテイクが撮れた。チームとして努力しないと1テイク作品はなかなか完成できない、時間にも限りがある。そういう意味では講談社のサポートもあり、最高の経験ができた」 「A Dream for My Daughter /父と娘が見た夢」マウリシオ・オサキ監督 制作:LUPI FILMS 出演:Mony Ros、Sopheanith Thong、Socheata Svay 上映時間:24分 日系ブラジル人三世の映画監督。ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部で映画製作のMFAを取得。大学院在学中に監督した「MyFather's Truck」は第63回ベルリン国際映画祭を含む100以上の映画祭で上映され米アカデミー賞のショートリストにも選出された。 「小さいときから映画が大好きで溝口健二監督、黒澤明監督の映画を見て育ち、多大な影響を受けた。それらの作品にインスパイアされてこの脚本を書いた。モデルはヴェトナムの友人。不正規移民のアジア系の人たちがイギリスに入国するために荷物用のコンテナに積み込まれて移動、コンテナの中に閉じ込められて亡くなった事件に着想を得た。この映画を通して、密航の犠牲となった若い魂に敬意を払い、心から冥福を祈りたい」 「私を描いて」喜安浩平監督 制作:ROBOT 出演:小林桃子、滝澤エリカ 上映時間:19分 1997年、広島大学教育学部美術科卒。98年より「ナイロン100℃」の劇団員として活動し、2000年に自身が作・演出を手掛けるユニット「ブルドッキングヘッドロック」を旗揚げした。13年「桐島、部活やめるってよ」で日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞。 「脚本家として俳優として長らく映画には携わっているが、本格的に映画を撮ったのは初。頭からつま先まで、映画を作る喜びを全身で味わうことができた。本作は芸術や表現の暴力性にまつわる話。自身が発信するものは誰かを傷つけてしまう可能性があると、登場人物は怯える。だが、そのリスクを負って何かを破壊しないとその先の自由が手に入らないと言い聞かせながら作っている。それを若い女子高生たちに託して表現した」 第2期「講談社シネマクリエイターズラボ」受賞結果発表 第2期は2023年8月1日から11月30日まで募集。応募数全1126企画(日本885、海外241)のなかから受賞3企画(日本2、海外1)を決定した。受賞クリエイターには講談社の編集者が担当につき、年内の完成を目指してショートフィルムの制作をスタートする。 「Little Pains」Milda Baginskaitė監督(実写/イギリス) 11歳の少女ソフィーは母親を亡くしたが、現実を受け入れることができず、葬儀当日、おもちゃのピストルを持って墓地に向かう……幼くして喪失の痛みに向き合うこと、悲しみは乗り越えることができること、を描く。監督・脚本のMilda Baginskaitė 氏はイギリス在住のリトアニア人。2019年、New York International Children's FilmFestivalにて短篇が上映、バルセロナ短篇映画祭2019にて最優秀新進監督賞を受賞。 「エンパシーの岸辺」石川泰地監督(実写/日本) 結婚を約束した相手に浮気をされた女が、浮気相手(ルームメイト)を衝動的に殺害。死体をキャリーケースに詰め込んで海へ捨てに行こうと車に乗り込むと、死んだはずの彼女が話しかけてきて――。死んだのはいったい誰だったのか、そもそも悪かったのは誰だったのか。今年、テアトル新宿で特集上映が組まれた期待の若手監督・石川泰地が、映画ならではの画づくりにこだわったロードムービー。叙述トリックにきっとあなたも騙される。 「朝のとき」古山俊輔監督(アニメーション/日本) 少年テトの空想と、現実を生きる人々の空想が織りなす文学的ファンタジーアニメーション。光と生きることをテーマとする。ベッドに乗って学校に行くテト、カモメにモーニングを頼む灯台守、夜空に機関車を走らせる引退した鉄道員、怪物に乗ってやってくるレグルスの王、三日月の夜だけクロワッサンの店を出すパン職人、親友を亡くした登山家が山で見たものとは……。これまで多くの企業広告を手掛けたアニメーション・ディレクター古山俊輔が本当に作りたかったアニメーション。 選考総評:シネマクリエイターズラボ 神保純子 第1期1103件を上回る1126件の企画が世界53カ国、14 ~76歳のクリエイターから寄せられました。すべてではありませんが、日本発の企画には「短篇ならでは」の発想と内容の作品が多く、海外発の企画には大きなテーマのどこをどうやって切り取るのか、短尺で表現するのか、に挑戦した作品が多かった印象を受けました。 講談社のパーパスである「Inspire Impossible Stories」を体現するための「誰もみたことがない物語」であることはもちろん、映画祭受賞を目指す、というミッションに照らし合わせると一点突破ではむずかしいことは明らかなため、「新しい映像表現」「メッセージ性」「ドラマ性」を兼ね備えた3企画が選ばれたのは必然といえます。 募集中の第3期においても、映像クリエイターの皆さんの「挑戦」と「飛躍」を支援していきたいと思っておりますので、思いのこもった企画のご応募をお待ちしております。 (「キネマ旬報」2024年10月号より転載) 第3期「講談社シネマクリエイターズラボ」受付中 “企画コンテスト”なので、応募は企画書・経歴書のみでOK。応募条件は25分以内を想定した映像作品であること。25分以内ならば3分でもあり。アニメ、CG、実写問わず、ジャンルは⾃由。ミックスも歓迎。 ※シネマクリエイターズラボ最大の特徴は、受賞1 企画ごとに講談社の担当編集者がつくこと。漫画・小説・エンタメ系コンテンツの担当・映像化経験が豊富な担当編集者が、脚本の打ち合わせから制作会社のセレクト、撮影立ち会い、映画祭の出品、その後のキャリア展開に至るまで、クリエイターに全力で寄り添って伴走する。 応募締切 11月30日(土) 詳細は、講談社シネマクリエイターズラボ公式サイトをご覧ください。 ▶公式サイトはこちら
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新垣結衣と早瀬憩が体現する“理解を前提にしない”生き方に救われる ――「違国日記」
2024年10月3日累計発行部数180万部を突破したヤマシタトモコの人気コミックを、瀬田なつき監督が新垣結衣と早瀬憩を主演に迎えて映画化した「違国日記」のBlu-rayとDVDが、10月2日(水)に発売された。 「愛せるかどうかはわからない。でもわたしは、決してあなたを踏みにじらない」 ある日、目の前で両親を交通事故で亡くしてしまった15歳の朝(早瀬憩)。あまりに突然すぎて涙さえ流れず、呆然としたまま葬式に参列する朝に、「可哀そうに……」「あの子、たらい回しにされるんじゃないかしら?」と、親戚縁者たちの心ない言葉が突き刺さる。 そんな時、「あなたを愛せるかどうかはわからない。でもわたしは、決してあなたを踏みにじらない。たらい回しは無しだ!」と、朝からまっすぐ目をそらさず、言い放った女性がいた。朝の亡くなった母親・実里(中村優子)の妹にあたる叔母・槙生(新垣結衣)だ。 実は、槙生は昔から実里と折り合いが悪く、姉妹でありながら近年は全く交流がなかった。だが、誰も引き取ろうとしない朝と同居することを、その場で決めたのだ。こうして、ほぼ初対面のふたりにとって“エポック”となる、ぎこちない共同生活がはじまった。 人見知りなのに、咄嗟の判断で多感な年ごろの姪を引き取ってしまった35歳の小説家と、厳格だった母とはタイプの異なる風変わりな大人である叔母に、興味津々な15歳の少女。年齢も性格も生きてきた環境も全く違うふたりが、互いを理解できない寂しさを抱えながらも、まっすぐに向き合い日々を重ねるうちに、徐々に歩み寄り、家族とも友人とも異なる「槙生と朝でしかない」かけがえのない関係性を、ゆっくりと築いていく――。 新垣結衣×新星・早瀬憩×瀬田なつきが「原作コミックという違う国」を実写化 主人公・槙生を演じるのは、近作「正欲」(23)でこれまでのイメージを鮮やかに覆した、新垣結衣。ぶっきらぼうで片付けが大の苦手だが、人知れず心の中に激情を隠し持ち、不器用なまでに誠実に、実直に生きる槙生をチャーミングに、時に凛々しく演じる。 朝を演じるのは、オーディションで抜擢された新星・早瀬憩。“大人らしからぬ大人たち”に戸惑いながらも、持ち前の天真爛漫さで周囲の懐にスルッと入り込める一方で、悩み多き思春期で日々揺れ動く朝の繊細な心情を、撮影当時15歳の早瀬が瑞々しく体現する。 さらに、ふたりの暮らしを見守る槙生の頼もしい親友・醍醐役に夏帆。別れてもなお槙生を優しく支え続ける元恋人・笠町役に瀬戸康史。槙生の母・京子役に銀粉蝶が扮しているほか、槙生の姉で朝の母である実里役を中村優子、槙生と朝の生活を見届ける弁護士・塔野役を瀬田組常連の染谷将太が務め、早瀬らフレッシュな面々の脇をガッチリと固める。 監督と脚本を務めるのは、「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」(11)で商業映画デビューを果たし、「PARKS パークス」(17)、「ジオラマボーイ・パノラマガール」(20)のほか、近年はドラマも多く手掛けている瀬田なつき。脚本執筆時には原作コミックが完結していなかったこともあり、実写化する上では、原作者から委ねられた部分も大きかったそう。 インタビューによれば、瀬田は、“誰か”の視点にはならないように、原作コミックには頻出するキャラクターたちのモノローグを極力廃し、「槙生と朝の関係を軸に、ふたりをつなぐ存在の実里が“不在”の日常の暮らしを現在進行形でスケッチするように描くことで、そこにある想いや人間関係がいろんな形で浮かび上がっていくことを目指した」という。 そうして紡がれた脚本をベースに、それをセリフや動きで体現する俳優陣はもちろんのこと、撮影、照明、美術、衣裳、音楽など、本作に携わるあらゆる部署のスタッフたちがそれぞれの視点で原作の世界観を汲み取り、監督とコミュニケーションを交わしながら再構築した結果、必ずしもすべてが忠実というわけではないにも関わらず、見事な実写映画として立ち上がった。ある意味では、「違う国のことを知る」こととも重なるのではないか。 特筆すべきは、劇中、多くの登場人物たちが入れ替わり立ち替わり訪れる、槙生と朝がふたりで暮らすマンションの絶妙な間取りと、槙生の“追い詰められ度”やふたりの距離感とも連動する、室内の乱雑さ。中でもリビングと槙生の仕事部屋を間仕切る引き戸の使い方が非常に効果的で、締めたくてもなかなか上手く締められない“ユルさ”が、笑いを誘う。 インタビューに加え「あさのうた」や「包団(パオダン)」メイキングなど充実の特典映像 Blu-rayのみに収録される映像特典には、約39分のメイキング&インタビューをはじめ、イベント集(完成披露上映会・公開直前イベント・公開記念舞台挨拶・大ヒット御礼舞台挨拶)や、高校の軽音部でボーカルを務める朝が披露する「あさのうた」の特別映像に加え、醍醐と槙生と朝の3人が「包団(パオダン)」を結成して餃子づくりに挑戦する場面のメイキングも収録されるというから期待が高まる。 メイキング&インタビューでは、撮影の舞台裏に密着した映像に併せ、「もともと原作のファンだった」という新垣が、槙生役に「覚悟を決めて」挑んだ様子や、初めてとは思えぬほど現場を満喫する早瀬の“素顔”も映し出される。中でも、原作に散りばめられた示唆に富んだフレーズの数々を、生身の人間としていかに自然かつ印象的に表現できるかを探りながら、「現場でちょこちょこ原作を読み返しては、『ヨーイ!』の声が掛かる直前に原作の槙生の顔を必ず思い浮かべるようにしていた」という新垣の言葉に、胸を打たれた。 「あなたと私は別の人間であって、あなたの感情も、私の感情も自分だけのものだから、わかちあうことはできない」という前提の上で、「それでも一緒に居たい」と思える相手と、互いに歩み寄り、共に暮らす姿が生きづらさを抱える人たちの心の灯となれば――。本編を観返すたび、制作陣のそんな思いが伝わってくる。 文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=miYfKfuMX7M 『違国日記』 ●10月2日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同時) ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray 価格:7,480円(税込) 【ディスク】<2枚> ★封入特典★ ・ポストカード5枚セット ★映像特典★ ・メイキング&インタビュー ・イベント集(完成披露上映会、公開直前イベント、公開記念舞台挨拶、大ヒット御礼舞台挨拶) ・あさのうた特別映像 ・パオダンメイキング ●DVD 価格:4,180円(税込) 【ディスク】<1枚> ●2024年/日本/本編139分 ●監督・脚本・編集:瀬田なつき ●原作:ヤマシタトモコ「違国日記」(祥伝社 FEEL COMICS) ●音楽:高木正勝 ●劇中歌:「あさのうた」(作詞・作曲:橋本絵莉子) ●出演:新垣結衣、早瀬憩 夏帆、小宮山莉渚、中村優子、伊礼姫奈、滝澤エリカ、染谷将太、銀粉蝶、瀬戸康史 ●発売元:「違国日記」製作委員会 販売元:VAP ©2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会 -
B.B.キング生誕100周年に日本劇場初公開。演奏&ドラマで紡ぐ「ブルースの魂」
2024年10月3日B.B.キングをはじめとする伝説的なブルース・ミュージシャンたちのパフォーマンスとともに、若いカップルの愛と苦闘を描いた「ブルースの魂」(1973)が、B.B.キングの生誕100周年に合わせ、2Kレストア版となって12月28日(土)より新宿K’s cinema、UPLINK吉祥寺ほか全国で順次公開される。ポスタービジュアルが到着した。 デルタ・ブルースへの関心が再燃した1970年代初頭、本作の監督である音楽ドキュメンタリー作家のロバート・マンスーリスは、ミシシッピ・デルタを旅してB.B.キングら伝説的ミュージシャンのインタビューと演奏を撮影する。その目的は、ブルースをこれほど表情豊かで心揺さぶる音楽形式にしている文化的・政治的要因を探ることだった。並行して、ハーレムに暮らすカップルの波乱含みの物語を描き、ドキュメンタリーとフィクションの境界を曖昧にして観る者をブルースの核心へ誘うことに成功した。 登場ミュージシャンは、“キング・オブ・ブルース”のB.B.キング、シカゴ・ブルースの第一人者バディ・ガイ、ファンク・ブルースの雄ジュニア・ウェルズ、ブギウギのルーズヴェルト・サイクス、ボブ・ディランやニール・ヤングに影響を与えたロバート・ピート・ウィリアムズ、ディランに再発見およびカバーされたブッカ・ホワイト、盲目のハーモニカ奏者ソニー・テリー、飄々とした歌声のマンス・リプスカム、スクリーンに現れた最初のロックミュージシャンであるジミー・ストリーターなど。独創的なブルース映画、待望の日本初上陸となる。 Story 子どもの頃に母に連れられ、ノースカロライナ州からニューヨークに出てきたフレディ(ローランド・サンチェス)。強盗を働いて5年間服役し、出所後は結婚したハティ(オニケ・リー)と共に母の家に居候している。 刑務所の病院で働いた経験から看護助手の職を探すフレディだが、うまくいかない。ハティに無心してはビリヤード場に出入りし、鬱々と過ごしている。そんなフレディに嫌気が差したハティは、なじみのバーでブルースを歌う男と駆け落ちを図るが……。 「ブルースの魂」 監督:ロバート・マンスーリス 出演ミュージシャン:B.B.キング、バディ・ガイ、ジュニア・ウェルズ、ルーズヴェルト・サイクス、ロバート・ピート・ウィリアムズ、マンス・リプスカム、ブッカ・ホワイト、ソニー・テリー、ブラウニー・マギー、ファリー・ルイス、ジミー・ストリーター 出演俳優:ローランド・サンチェス、オニケ・リー、アメリア・コルテス、ウィリアム・L・エヴァンス 1973年(2022年2K修復版)/フランス/英語/88分/1:1.33/字幕:福永詩乃 英題:THE BLUES UNDER THE SKIN 原題:LE BLUES ENTRE LES DENTS 配給:オンリー・ハーツ 協力:ブルース&ソウル・レコーズ ©1973-2022 NEYRAC FILMS