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角川春樹、“最後”の監督作「みをつくし料理帖」を語る 1970~80年代を中心に日本映画界の風雲児として数々のヒット作を世に送り出してきた角川春樹氏。業界にさまざまな伝説を刻んだ敏腕プロデューサーとしてのみならず、「汚れた英雄」(82)を皮切りに映画監督としても長いキャリアをもつ。そして監督作としては前作「笑う警官」(09)から約10年ぶり、通算8本目となる監督作「みをつくし料理帖」がついに我々の前に届けられた。これで監督業を引退すると宣言している本作には、かつての〈角川映画〉を彩った俳優たちも集結。御年78歳、監督・角川春樹は今、何を思うのか。 沈黙の十年を越えて ――角川さんはもう映画を作られないと思っていました。“現代の若い観客は、TVドラマの延長で映画を観て、「壮大なスケール」や「重厚なテーマ」を求めなくなり、観客の質が落ちた”(『日経エンタテイメント』07年8月号)と映画に絶望なさったからです。 角川:「笑う警官」(09)の(制作費の)回収がつかなかったときは、もう映画はやめようと思いましたね。自分と時代の距離感を感じたからです。 それから10年、私は編集者に戻って、角川春樹事務所で二つの路線を作りました。一つは今野敏さん、佐々木譲さんなどの警察小説。もう一つは女性をターゲットにした時代小説です。私は他社に先がけて、97年に「時代小説文庫」を始めたんですが、佐伯泰英さんなどの小説で60~70代の男性読者を獲得したあと、次に女性読者に読んでもらえる時代小説とは何か、を模索していました。そんなときに企画会議で髙田郁(たかだかおる)さんの『出世花』(08年、祥伝社、のちにハルキ文庫)を読んだんです。この本は初版が1万5000部で実売が500部の売れない本でしたが、“この人は男性ターゲットの捕物帖やチャンバラじゃない、新しい時代小説が書ける”と確信して、編集者を髙田さんの住む関西に行かせました。著者と次回作の話をするなかで、テーマを「食」に決め、髙田さんに『みをつくし料理帖』(全10巻、角川春樹事務所)を書いていただきました。 「みをつくし料理帖」の原作は、作家・高田郁によるベストセラー時代小説シリーズ(角川春樹事務所より刊行) ――「食」とともに、『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』(02年、嶽本野ばら著)や『NANA』(06~07年、矢沢あい著)のような女性二人の友情ものであることと、「女性が女性を身請けする」という誰も考えなかった結末が『みをつくし料理帖』をミリオンセラーにしたように思います。 角川:髙田さんの慧眼ですよ。 ――髙田郁さんは、角川さんが『みをつくし』の発売前にゲラ(校正刷り)を持って全国の書店を回った、と書いています。 角川:回りました。各書店の文庫担当者の方に、“こういう素晴らしい女性の作家がいる”とお知らせして、当時あった「時代小説は男性作家のもの」という固定観念を覆したかったんです。 ――“作家を見つけ、原作を丹精込めて育て、それを映画にする――それが編集者の愛ですよ”(『サンデー毎日』20年3月8日号)という「角川映画」の原点に返ったんですね。 角川:その通りです。この10年、私はハルキ文庫の原作を絶えずTV局や映画会社に売りこんできました。『紙の月』(12年、角田光代著、角川春樹事務所)は14年にTV化(NHK)、同じ年に映画化(吉田大八監督)されたんです。しかし、『みをつくし料理帖』は09年の初版(ハルキ文庫)から10年が経ち、累計販売数が400万部を超えても、NHKとテレビ朝日でドラマ化はされましたが、映画化の企画は、まとまりかけては壊れ、壊れてはまた生まれてを繰り返し、なぜだか実現しないんですよ。東映にも頼みに行ったんですが、東映には「食べ物の映画は当たらない」というジンクスがあるんです。 ――「流れ板七人」(97年、和泉誠治監督)が当たらなかったからですね。 角川:そうです。いたずらに時間が過ぎるうち、“あなたが自分で撮るべきだ”と女房に背中を押され、遠藤茂行さん(本作の制作統括)に相談したんです。彼が骨を折って、配給を東映が引き受けてくれることになり、18年に私の最後の監督作品として企画がようやく動き出しました。 ダブル・クライマックスの妙味 ――角川さんは、「REX 恐竜物語」(93)を三幕劇として構成し、「汚れた英雄」(82)のクライマックスの二輪レースの長さを「ロッキー」(76、ジョン・G・アヴィルドセン監督)のラストファイトと同じ長さにしたように、監督作品をつねに厳密に構成します。 角川:それはプロデューサーも兼ねているからでしょう。「REX」は夏休みのファミリー映画ですから、10歳の子供が飽きないぎりぎりの時間は1時間50分だと考え、子供が退屈しない山あり谷ありの構成を考えたんですよ。 ――今回も、大坂をプロローグにして、「野江(奈緒)が澪(松本穂香)の境遇を知る」までが第一幕、「澪が野江の現在を知る」までが二幕、「澪と野江が離れたまま出会う」までが三幕。それに、「澪と野江が実際に会う」エピローグが付けられています。澪と野江が最後に二度会う、ダブル・クライマックスにしたところが脚本の巧さですね。 角川:それは、江良至さん、松井香奈さんとハコ書きを作りながら考えました。ハコの段階で撮影の北信康さんを呼んで、ここは円形移動でいこうか、白狐の面をかぶった野江はすべてハイスピードで撮ろうかなどと、撮り方も決めていったんです。 ――角川監督作品は、他の角川映画にくらべ極端に台詞が少ないですね。 角川:それは私が俳人だからでしょう。俳句は「五・七・五」しかなく、行間を読み手の想像力に委ねるわけです。「汚れた英雄」を初めて撮るとき、それまでの日本映画はしゃべり過ぎだし、目を剥いて怒鳴り過ぎると感じて、脚本から説明と台詞を削ぎ落としたんです。『みをつくし料理帖』でもNHK版(17年)は、澪(黒木華)と小松原(森山未來)の別れを75分かけて、しゃべりっぱなしでやっています。映画では、澪と小松原の別れを5分、台詞三つだけで描きました。 テレビやシネコンの映画は、目を瞑っていても筋がわかり、観客に考える余地を与えませんが、映画は行間を読むこと、読ませることが楽しみなんです。 ――吉本隆明さんは角川監督作品を「純映像映画」と評価しましたが(『産経新聞』93年9月5日夕刊)、マックス・テシネを始めとする多くの批評家は、「汚れた英雄」や「天と地と」(90)を「ドラマが弱い」と評しました。この評価をどう思われましたか? 角川:私は最初(はな)から「人間ドラマ」なんてやる気はない。「汚れた英雄」では二輪レースのスリルと主人公の虛無と頽廃を、「天と地と」では絢爛たる合戦絵巻と謙信の孤愁を描きたかったんです。観客はくだくだした人間ドラマより、荘重なスペクタクルと美しいヴィジョンを観たいと思っているんです。 ハルキ・ブルーからハルキ・レッドへ ――角川監督作品にはつねに基本の色調があります。「汚れた英雄」はブルー、「愛情物語」(84)は赤、「キャバレー」(86)はセピア、「天と地と」は赤と黒。 角川:私は日本刀を眺めるのが好きで、日本刀は青い光を放つんです。「汚れた英雄」は、私の好きな青を基本色調にしました。(撮影監督を務めた)仙元誠三さんもブルーが好きなカメラマンでしたし。「汚れた英雄」の撮影チーフだった柳島克己さんと北野武監督が考えた「キタノ・ブルー」はいまや世界的になりましたが、本当は「ハルキ・ブルー」のほうが早い(笑)。「みをつくし料理帖」は暖色をベースにしたいとスタッフに言ったんです。 ――暖色を基調にしながら、画面のどこかに「赤」が「差し色」として入っています。 角川:それは撮影の北さんや照明の渡部嘉さん、美術の清水剛さんがおたがい相談しながら入れたんでしょう。 私はいままで73本の映画を製作してきましたが、正直、「スタッフ、キャストが一体になった」現場なんてほとんどありませんでした。どこかしらに問題があり、それは完成作品を観ればわかりました。でも、今回の現場に薬師丸(ひろ子)さんが来たとき、“全員が監督を見て、監督が何を望んでいるかをキャッチしようとしている珍しい撮影現場ですね”と言ったんですよ。彼女が指摘した通り、こんなにスタッフ、キャストに恵まれた現場は、73本のうちで初めてでした。最後の監督作品で初めてそういう現場に立てた。小道具の大矢(誠)クンなんか張り切って、“ここはシャボン玉を飛ばしましょう”とどんどん意見を出してくれて、“おう、やってくれ”と(笑)。 ――コンビを組んでいた仙元誠三さんがフィルムにこだわったこともあり、いままでの作品はフィルム撮りでしたが、今回は初めてのデジタル撮影。デジタルに変わって角川さんの映画が軽やかになった気がします。 角川:それはそうかもしれない。プロデューサーとして、フィルム代は高いけれど、デジタルだと安いからいくらでも回せるのがありがたかった(笑)。 神は細部に宿る ――「みをつくし料理帖」の音響には驚きました。さながら音による「江戸歳時記」の趣があります。料理も高級なものではなく、庶民的なところが良いですね。 角川:音響効果の柴崎憲治さんとは何回かやっていますが、今回が最高でした。料理の担当は日本を代表する料理学校の理事長、服部幸應さんと東京神楽坂の蕎麦の名店「たかさご」の宮澤佳穂さんに現場で誂えてもらいました。 ――吉原の廓言葉の指導を、威勢のいい江戸弁と芝居噺で知られる春風亭一朝さんに依頼しているのも行き届いていますね。 角川:上方と江戸の言葉が入り交じる話ですから、船場言葉と廓言葉には気をつけました。私はお客さんに「みをつくし料理帖」を2回も3回も観てもらいたい。それには、見えない部分が豊かでなければならないんです。 ――監督作品8本のなかでもっとも映画の無意識が豊かな映画になっていると思います。また、いままでの角川アイドル映画では、薬師丸ひろ子さんや原田知世さんを年上の渡瀬恒彦さんが見守っていましたが、今回は松本穂香さんをかつての角川映画に出た俳優たちが総勢で支え、映画に幸福感が漂います。 角川:俳優さんたちとは4回脚本(ホン)読みをやりました。始める前に若村麻由美さんが来て、“監督、船場言葉でいいですね?”と訊いたんです。脚本に指定がないのに、彼女は脚本を読みこんだんですね。俳優にとっていちばん大切なことは脚本の読解力だと思います。松本穂香さんも奈緒さんも読解力に優れた役者でした。薬師丸さんは一日だけの特別出演でしたが、出番が終わったとたん号泣したんですよ。その瞬間、彼女は13歳のひろ子に、私はひろ子と出会った35歳の私に戻ったんですね。 ――それから、「白狐」のイメージが心に残ります。白狐が出てくる映画、「恋や恋なすな恋」(62、内田吐夢監督)や、その原作である人形浄瑠璃の『芦屋道満大内鑑』や清元の『保名』などの古典芸能を参考になさったのでしょうか? 角川:白狐の舞いを撮るときに参考にしたのは、「時をかける少女」(97、角川春樹監督)のロケ地である飛騨古川で毎秋行なわれている「狐火まつり」でした。 ――「白狐の面をずらす」と書かれていた原作に対し、映画ではラストで奈緒さんがお面を取ります。今回はここまでやるのか、と驚きました。これまでの監督作で、角川さんがこれほど観客の心を摑み、揺り動かしたことはありませんでした。 角川:お面を取らない選択肢ももちろんあり得ました。スタッフのほとんどが取らないほうがいいと私に意見し、奈緒さんも撮影前日、取らない芝居をしたいと言ってきました。しかし、観客が望むのはお面をとって、二人が素顔で見つめ合うことだと思い、それがエンタテインメントの王道だと決断しました。 ――「時をかける少女」のラスト、大林版とは逆に、15年後の芳山和子と深町一夫がお互いに気付くハッピーエンドを思い起こしました。 角川:それはうれしい指摘ですね。「時をかける少女」と「みをつくし料理帖」は姉妹篇だと思ってるんですよ。 震災の記憶と、これからのこと ――「みをつくし料理帖」はまぎれもなく、東日本大震災から新型コロナにいたる「災禍の時代」に向けて撮られた「現代劇」ですね。第二次大戦の戦火と江戸の大火を重ね合わせた山本周五郎の『ちいさこべ』を思い出しました。 角川:東日本大震災のときに、『ボクチン』というフリーペーパーで被災地のティーンのインタビューをしたんですよ。生き残った子供たちに話を聞くと、その子を生き残らせるために、たくさんの両親や兄弟が身代わりになって亡くなっているんですね。地震や津波のさなかに、自分の命より他人の命を選んだ人たちがこれほど多かったのかと切なかったんです。明らかに、『ボクチン』の体験が「みをつくし料理帖」に残響しています。大坂の大洪水で家族を亡くした澪も野江も、死者を背負って生きているんです。 ――「みをつくし」にはこれまでお話してきたように、角川さんの新境地があります。もうお撮りにならないんですか? 角川:これが最後の監督作品だと思って、製作も監督もやると決めました。撮影中は、まさに”身を尽くし”、健康が不安になるほど命を削りました。今後はどうするかな(笑)。年齢的なこともあるが、まだまだ生涯不良の現役ですから。 取材・構成=伊藤彰彦 映画「みをつくし料理帖」 製作・監督:角川春樹 脚本:江良至、松井香奈、角川春樹 制作統括:遠藤茂行 料理監修:服部幸應 音楽:松任谷正隆 撮影:北信康 照明:渡部嘉 美術:清水剛 出演:松本穂香、奈緒、若村麻由美、浅野温子、窪塚洋介、小関裕太、藤井隆、野村宏伸、衛藤美彩、渡辺典子、村上淳、永島敏行、松山ケンイチ、反町隆史、榎木孝明、鹿賀丈史、薬師丸ひろ子、石坂浩二(特別出演)、中村獅童 配給:東映 ◎10月16日(金)より丸の内TOEIほか全国にて (C)2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会 角川春樹(かどかわ・はるき) 1942年生まれ、富山県出身。角川書店の編集者として角川翻訳文庫などを手掛けたのち、75年に父・源義の後を継ぎ社長就任。映像と出版のメディアミックス戦略の先駆者として映画をプロデュース、「犬神家の一族」(76)、「野性の証明」(78)、「セーラー服と機関銃」(81)、「蒲田行進曲」(82)など次々ヒットを飛ばし、日本映画界に〈角川映画〉旋風を巻き起こす。93年に角川書店を離れるも、95年、角川春樹事務所を設立し出版業に復帰。さらに2005年には「男たちの大和/YAMATO」で映画製作にも復帰を果たした。プロデュースの傍ら、「汚れた英雄」(82)以来、監督業にも進出。「みをつくし料理帖」は通算8本目の監督作品となる。 「汚れた英雄」(82)「愛情物語」(84)「キャバレー」(86)「天と地と」(90)「REX 恐竜物語」(93)「時をかける少女」(97)「笑う警官」(09)
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「キネマ旬報」表紙で振り返る映画女優展
2020年10月5日2020年10月16日(金)〜11月8日(日)に開催される「日比谷シネマフェスティバル2020」の会場となる日比谷ミッドタウン、日比谷シャンテ内に、1950〜1960年代を彩った映画女優たちの「キネマ旬報」表紙パネル、約30点が展示されます。開期中は、「トロント日本映画祭」や「東京国際映画祭」とも連携した多彩な上映プログラム等も同時開催されております。 ぜひこの機会に、足を運んでご覧ください。 詳しくは、日比谷シネマフェスティバル公式HPにて。 -
この秋見るべき最旬『韓国時代劇ドラマ』5選〜王宮サバイバルから胸 キュンラブコメまで!
2020年10月2日この秋見るべき最旬『韓国時代劇ドラマ』5選〜王宮サバイバルから胸 キュンラブコメまで! (C) 2019-20 TV Chosun 韓ドラファンの皆さま、お待たせいたしました! この秋、ファン必見の新作韓国時代劇がリリースされます。 朝鮮王朝の女たちの戦いを描いた「カンテク~運命の愛~」と、麗しき女装男子とのドキドキの恋が展開する「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」の発売に合わせて、2作品の見どころはもちろん、1話見たらドハマり間違いなしの最旬韓国時代劇を厳選してご紹介します! 1.妃に選ばれるのは誰? 王宮サバイバル物語「カンテク~運命の愛~」 大ヒット時代劇「オクニョ 運命の女(ひと)」「不滅の恋人」のチン・セヨンと、「パフューム」などで人気上昇中の俳優キム・ミンギュ共演で贈る大型時代劇。19世紀の朝鮮王朝で“揀択(カンテク)”と呼ばれる王や王子の配偶者を選ぶ儀式をテーマに、双子の姉を殺した犯人を見つけるために王妃を目指すヒロインと、予知夢を通してその女性を見る王との愛や、王妃を狙う女たちの戦いを描く。ヒロインのチン・セヨンが1人2役を演じているのも注目です! (C) 2019-20 TV Chosun 発販:「カンテク~運命の愛~」日本版製作委員会/TCエンタテインメントより10/2リリース 2.麗しき女装男子にうっとり! 話題の宮廷ラブコメ「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」 「雲が描いた月明り」の脚本家×最旬イケメンスターのチャン・ドンユンと“時代劇の女神” キム・ソヒョンのドリームカップルで贈る話題のラブコメ時代劇。謎に包まれた男子禁制の“未亡人村”に潜入した女装男子のチョン・ノクドゥと家族の仇を取るため密かに王様への復讐を準備する妓生見習いの女性トン・ドンジュ。訳アリのふたりが繰り広げるドキドキの同居生活と、チャン・ドンユンの美しすぎる女装姿に釘付け! Licensed by KBS Media Ltd. (C) 2019 KBS. All rights reserved 発販:NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社より10/2リリース 3.次世代イケメン俳優総出演のシンデレララブストーリー「コッパダン~恋する仲人~」 次世代イケメン俳優総出演で贈る、美男だらけの仲人集団“コッパダン”を舞台に繰り広げられる胸キュン時代劇。ある日突然王になってしまった想い人(ソ・ジフン)を追って、じゃじゃ馬ヒロインがコッパダンの手によって美しく変身していくシンデレララブストーリー。キム・ミンジェ、ピョン・ウソク、パク・ジフンらイケメンがいっぱいで目移り必至! (C)Jcontentree corp. all rights reserved発販:「コッパダン~恋する仲人~」製作委員会/ポニーキャニオンよりリリース中 4.若手人気俳優とスター競演の壮大なアクション史劇「私の国」 ヤン・セジョン、ウ・ドファン、ソリョンの若手人気俳優とスター俳優チャン・ヒョクが豪華競演し、製作費200億ウォン、撮影に9ヵ月を費やし圧倒的映像美と壮大なアクションを交えて描く韓国時代劇。高麗末期から朝鮮建国の激動の時代を生きる3人の若者たちにスポットを当て、理想の“私の国”を目指して信念を貫く者たちの奮闘と友情、愛の物語が展開する。 (C)My country the new age SPC. all right reserved発販:ポニーキャニオンよりリリース中 5.スター俳優集結!王位とひとりの女性をめぐる名品時代劇「不滅の恋人」 ユン・シユン、チン・セヨン、チュ・サンウクのスター俳優が競演し、王位とひとりの女性をめぐる兄弟の激しい争いと切ない愛を描いた“名品時代劇”。心優しいイ・フィと、欲しいものは力づくで手に入れるイ・ガンのふたりの大君に愛される純粋で芯の強いヒロインを、「オクニョ 運命の女(ひと)」のチン・セヨンが熱演。 (C) 2018 TV Chosun発販:NHKエンタープライズ/ポニーキャニオンよりリリース中 気になるドラマはありましたか? 時代劇初心者でも胸キュン間違いなしの新作はもちろんのこと、珠玉の名作たちにも手を伸ばして、秋の夜長に韓国時代劇ドラマにハマってみてはいかがでしょうか。 制作=キネマ旬報社 -
一晩で全てが見える。夫婦のことも見えるし、彼女の人生も見えてくる 原作の映画化について「小説は完璧なもの、完結したものですからあえて映画にするならば、自分が読んだ時に心に残るエッセンスを大事にしたいと考えています。そこから膨らむイメージを描きたい」と語る三島有紀子監督。島本理生原作の「Red」は8本目の長篇劇映画だ。 大阪に生まれ、神戸女学院大学時代から8ミリ映画を撮り、NHKに入社してドキュメンタリーを手がけるが、劇映画を作りたいと独立。オリジナル脚本で「しあわせのパン」(12)を発表。重松清原作の「幼な子われらに生まれ」(17)ではモントリオール世界映画祭審査員特別大賞、報知映画賞監督賞を受賞するなど、高い評価を受ける。 「Red」では原作と映画の関係がスリリングだ。「真夏の熟した日差しが降り注ぐ」結婚披露宴から始まる小説。映画は雪上を走るトラックの車輪と、後部につけられた赤い布、そして雪のなかの電話ボックスの塔子(夏帆)の顔のクロースアップと少し離れて彼女を見守る鞍田(妻夫木聡)から始まる。 三島:原作を読んだ時、非常に映像的なくだりだと思ったんですね。金沢から東京までの一夜の雪のドライブが。そこを撮りたいなと思ったのと人間の真の独立を描いた現代版『人形の家』(イプセン)になるのではないかと思ったのが、この映画を撮った一番大きな理由です。 夫の真(間宮祥太朗)と幼い娘、姑と時々出張から戻る舅と共に邸宅に暮らす塔子は、かつて関係のあった建築家の鞍田と再会し、彼のいる会社に勤めはじめ、関係が復活する。塔子は出張した新潟で雪のため帰宅困難となるが、夫の真は激しく彼女を責め、塔子はあてもなく雪の中を歩き始める。と、病院から抜け出した鞍田が車で塔子を迎えに来る。2人が車で移動し続ける時間のなかに過去のさまざまなエピソードが入ってくる。 三島:2人がどこかに向かう一晩の中で、夜明けまでに塔子が自分の人生を選択する話にしたいと思いました。一晩で大きく人生を変える物語を映画でつくりたいという企画が自分の中にもともと強くあったからかもしれません。ママ友の娘を殺した事件-音羽幼児殺害事件を調べていた時に、奥さんが自首をする前に一晩、皇居の周りを夫(僧侶)と何周も何周もしながら会話をしたそうなんですね。そして夜明けが来た時に彼女が警視庁に向かって行って、夫が送り出した。事実なんです。それをいつかやりたいと思っていますしね。一晩で全てが見える。夫婦のことも見えるし、彼女の人生も見えてくる、という。 興味を持ったきっかけは、事件の性質です。周りの空気を読まなければいけない者同士の息苦しさが非常に日本的。まずは他人の意見を見聞きしたり、それによって自分の意見も左右されてしまうというように、物事を考える上での尺度が外にある人たちが多いように感じていました。塔子もそうだと思うんです。もしかしたら、もしかしたらですが、塔子は鞍田と出会っていなかったら、息苦しくなってこんな事件を起こしていたのかもしれません。小説で塔子は夫の電話に出なかったことがない、という地の文がありますが、それは、いつも夫につながれていて自分の主体的な時間がないってことじゃないかなと。言いたいことを言えない。まわりの反応を見ながら自分が我慢すればうまくいくと思い込んできた。自分のなかに尺度を押し込んでいる人が、自分で尺度を持てるところまで行動できるプロセスが映画でできたら、今、皆さんに発信する意味があると思いました。 世間が正しくないと思っていても、愛に走っていく高揚感、純潔さ、愚かという徳 車の2人は文楽(人形浄瑠璃)や歌舞伎の心中に向かう男女のよう。 〽此の世のなごり。夜もなごり。死にに行く身をたとふれば、あだちが原の道の霜。 三島:私が生まれたのは曽根崎新地というところで『曾根崎心中』の舞台となった場所から近く、お初天神という神社でお習字を習っていたくらいですから、おそらく(近松門左衛門の)なんらかの影響は受けていると思います。世間が正しくないと思っていても、愛に走っていく高揚感や、ある種の純潔さ、愚かという徳については、小さいころから聞かされていましたね。小・中・高では、3カ月に1度、文楽や歌舞伎、映画や演劇の授業もあって、果たしてそんな相手に出会うのか? と皆で話していたのを覚えています。 鞍田と塔子が向かうのは曾根崎の森ではなく東京である。病に侵された鞍田に代わり、いつしか塔子が車のハンドルを握る。塔子は会社の同僚、小鷹(柄本佑)と宴会を抜け出た夜、デートまがいの戯れで、自転車に2人乗りしてはしゃぐ場面があるが、この時も塔子がハンドルを握っている。助走は始まっていたのかもしれない。 雪のシーンについてはどうだろう。 三島:雪はすべてを覆い隠しています。自分だけしかいない。相手が現れた時、この人と向き合うしかない。受け入れるか拒否するか。そのことが視覚的に見えてくる。本人たちには雪は寒くて厳しいけれど、見ている側からは夢のような美しさ。それはとても面白いな、と。鞍田は病状からして、もう死んでいるかもしれないわけです。妻夫木さんには、鞍田は亡霊かもしれない、そこにいるのは魂だけかもしれない、という感じでやってもらえますかとお願いしました。そして、雪がすべてとけた春、鞍田もいなくなって、夢のような世界から現実の世界になったとき、塔子は何を選択するのか? 決断のシーンは雪で全てが覆い隠されていたところからすべてがあらわになった現実の世界である必要があったんです。 撮影中も黒い服を着ていることが多いイメージで、インタビューにも黒い服で現れた三島有紀子監督。理由を聞くと、「裏方だから」とのこと。 文=田中千世子[映画評論家・映画監督]撮影=朝岡英輔/制作:キネマ旬報社(キネマ旬報10月上旬号より転載) 三島有紀子(みしま・ゆきこ)/1969年生まれ、大阪府出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後、NHKに入局。『NHKスペシャル』『トップランナー』など市井の人々を追う人間ドキュメンタリーを数多く企画・監督。03年に劇映画を撮るために独立。フリーの助監督として活動後、「刺青 匂ひ月のごとく」(09)で映画監督デビュー。「幼な子われらに生まれ」(17)では第41回モントリオール世界映画祭で最高賞に次ぐ審査員特別大賞に加え、第41回山路ふみ子賞作品賞、第42回報知映画賞監督賞を受賞した。主な監督映画作品に「しあわせのパン」(12年)「ぶどうのなみだ」(14)「繕い裁つ人」(15)「少女」(16)「ビブリア古書堂の事件手帖」(18)など。小説『しあわせのパン』(ポプラ社)『ぶどうのなみだ』(PARCO出版)を上梓。 『Red』 ●10月2日発売 ●BD 5800円+税、DVD 3800円+税 ●2020年・日本・カラー・本篇123分+特典映像 [DVD]①オリジナル(日本語)ドルビーデジタル5.1chサラウンド②オリジナル(日本語)ドルビーデジタル2.0chステレオ③バリアフリー音声ガイド(日本語)ドルビーデジタル2.0chステレオ・16:9シネマスコープ・片面2層/[BD]①オリジナル(日本語)DTS-HD Master Audio5.1chサラウンド②オリジナル(日本語)リニアPCM 2.0chステレオ③バリアフリー音声ガイド(日本語)リニアPCM 2.0chステレオ・1080p High Definition・16:9シネマスコープ・2層 ●監督/三島有紀子 脚本/池田千尋、三島有紀子 原作/島本理生 音楽/田中拓人 ●出演/夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、片岡礼子、酒向芳、山本郁子、浅野和之、余貴美子 ●特典映像(BDのみ) 予告編集(60秒予告/30秒予告/15秒予告)、メイキング映像、イベント映像集(完成披露プレミア上映会/公開直前女性限定試写会/公開記念舞台挨拶) ●封入特典(BDのみ) リーフレット ●発売・販売元:ポニーキャニオン ©2020『Red』製作委員会
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巻頭特集【追悼 映画俳優 渡哲也】のお知らせ
2020年9月25日映画雑誌『キネマ旬報』10月下旬特別号(10月5日発売)の 巻頭特集は、今年8月10日に惜しくも逝去された俳優の渡哲也さんの 「映画俳優」の側面にスポットを当て、映画俳優 渡哲也の残した沢山のものごと、 その色彩と熱へと踏み込み、心からのリスペクトを捧げた追悼特集となります。 ◆特集内容◆ 【甦る、若き渡哲也の肉声】 1976年(34歳当時)に収録されたロングインタビューを掲載。生い立ちから、若 き日々の出来事、映画デビューの頃、弟渡瀬恒彦のこと、映画への想いなど、肉 声が甦る(『みんな不良少年だった ディープ・インタビュー』(77年、白河書院) より転載)。 【貴重フォト満載のグラビア&誌面】 65年、デビュー記者会見写真や、深作欣二監督「仁義の墓場」(75年)の撮 影現場など、貴重な写真が誌面を彩る。 。 【論考とイラストレーションでオマージュ&リスペクト】 作家・詩人・評論家の松浦寿輝、詩人・映画監督の福間健二、気鋭の映画学 者・久保豊などによる多彩な執筆陣の論考に加え、雑誌『POPEYE』などで活躍 する気鋭のイラストレーター岡田成生、渡辺一美が描く渡哲也像を掲載。 【亡くなる数日前の電話で渡哲也が語ったこととは?】 長きにわたって交友のあった東映京都撮影所の殺陣師、菅原俊夫を映画史家の 伊藤彰彦が取材。深作欣二監督「やくざの墓場 くちなしの花」(76年)に始ま る長き交流を伺っています。そして、渡が亡くなる数日前に、菅原と交わした電話 で発した言葉とは? ご予約はこちらより承っております。 渡哲也 (わたり・てつや/俳優) 1941年12月28日生まれ、島根県安来市出身。弟は俳優の渡瀬恒彦。65年「あばれ騎士道」でデビュー。日活で 「紅の流れ星」(67年)、「無頼より 大幹部」(68年)などに主演。71年、石原プロモーション入社。「日本俠花伝」「 ゴキブリ刑事」(73年)「仁義の墓場」(75年)などに主演。以後、活動の主舞台をテレビに移す。87年、石原プロモ ーション社長に就任。96年には「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」(大森一樹監督)でキネマ旬報ベスト・テン助演 男優賞他を受賞。05年、「男たちの大和 YAMATO」(佐藤純彌監督)が最後の映画となった。05年、紫綬褒章受 章。2020年8月10日、肺炎のため死去。78歳。