カンヌで14分間のスタンディングオベーション!細田守監督インタビュー

カンヌで14分間のスタンディングオベーション!細田守監督インタビュー

10年の積み重ねがあったからこその新作
そして次の10年に向けた手応え


「時をかける少女」(06)「サマーウォーズ 」(09)「おおかみこどもの雨と雪 (12)「バケモノの子」(15) 「未来のミライ」( 1 8 ) と 、 これまでのスタジオ地図作品すべてが日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞。「未来のミライ」ではカンヌ国際映画祭「監督週間」で上映。さらにはアニー賞受賞、ゴールデン・グローブ賞、米国アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートするなど、細田監督作品は国内外で注目され続けてきた。 そして、早くも完成したばかりの新作「竜とそばかすの姫」がカンヌ国際映画祭において、全世界より2000作品以上の応募があったオフィシャル・セレクションに新設された 「カンヌ・ プルミエール部門」に選出。まさに歴史的快挙であり、監督自身 「これから変化していく新しい映画の価値を観客に指し示す兆し」と語る。 その細田守監督に、今回の新たな挑戦について語っていただいた。

コロナ禍における映画の使命

 

――「竜とそばかすの姫」は世界がコロナ禍に見舞われている中で制作が進められたと思います。そのことが作品に与えた影響はありましたか?

細田守監督(以下、細田):すごくありましたね。単純な問題として、打ち合わせはリモートが 中心となり、制作スタイルも従来のままでは対応できなくなったとい う変化は当然あります。またこの作品はもともと2021年夏の公開予定で進めていて、当時は「五輪の時期に公開になる2020年夏の映画は大変そうだし、僕らは2021年でよかったね」なんて言っていたのに、東京オリンピックのほうがこちら側へズレてきてしまった(笑)。でもむしろ、そんな困難な状況だからこそ、3年に1作という自分たちのペースは崩さないようにしようと、延期という選択肢は一度も考えませんでしたね。

 

 今、映画界はすごく危機的な状況にあります。去年よりも今年になってさらに辛いことが多いようにすら感じます。しかしそうした困難な 状況を乗り越えて、なんとか映画を観ることの喜びをみなさんに送り届けたいし、この作品が少しでも苦しんでいる人たちの励ましになっ てくれたらいいなと願っています。決してコロナ禍を念頭に作ったわけではないですが、結果的にそういう映画にできたのではないかと思います。

 

――また今年は、2011年のスタジオ地図設立からちょうど10年に当たります。実際に今作は、ネットという「デジモン」や「サマーウォーズ」の延長線上の題材を描くとともに「美女と野獣」という細田監督の一つの原点となる作品に正面から挑まれたという点でも、集大成的な側面を感じさせます。また他方で、グローバルなスタッフワークなどからも感じられるように、これまでの細田作品の枠を超え出た、次の年を見据えた新しい第一歩であるようにも思います。その両面に関してそれぞれコメントをいただけますでしょうか。

細田:スタジオ設立10周年というのはたまたまであって、映画というのは作品がヒットするかどうかは誰にもわからない、制作費を回収できなければ挽回のチャンスすら失ってしまう、そんな巨大なリスクを抱えながら作られるものです。だからこのスタジオ地図もいつなくなってもおかしくはなかったし、これからだってどうなるかはわからない。でも僕は、面白いアイデアを思いついたら最後、作り出さずにはいられない性質なので、これからも誰も観たことがないような映画に挑んでいきたい。それに作れば作るほど次々と新しいつながりが生まれるんですよね。ジンさんと一緒に映画を作れる日が来るなんて思ってもい なかったですし、これだけの規模の作品に着手できたのも、これまでの10年の積み重ねがあったからこそです。

 だから次の10年という意味では、この「竜とそばかすの姫」によって、今後はこれまで以上に表現の幅を広げられるという手応えを感じています。特に今回は、CGによる人物の感情表現に全力で取り組んでいるんですね。僕の過去作のキャラクター表現は手描きでしたが、今 回〈U〉の世界はすべて3DCGアニメーションなんですよ。これまで手描きにこだわってきた僕から観ても納得のいく、新しい表現の息吹が感じられる仕上がりになっているので、その迫力をぜひ劇場で体験してみてほしいですね。

 

――今回は画面がスコープサイズであるという点も、映像の迫力を後押ししていると思います。

細田:そうなんですよ。僕自身、モニターでチェックしていたときとスクリーンで観たときでは、〈U〉の世界のスケール感が全然違っていて驚きました。また音楽映画でもありますから、音響もこれまでに輪をかけて重厚ですさまじいものになっています。音の広がりには限界までこだわったので、家庭用の環境で観るのはもったいないと思いますよ。 映像と音響がともに劇場に最大限に最適化された映画なので、そこは期待していてほしいですね。特に今回は僕の映画でははじめてのIMAX上映もあるので、欲を言えばそうした一ランク上の上映環境に足を運んでもらえると、より一層堪能してもらえると思います。

 

※本インタビューは『キネマ旬報』2021年8月下旬号掲載より抜粋

取材・文:高瀬康司
写真:デフコンファイブ
制作:キネマ旬報社

 

8月3日発売「細田守とスタジオ地図の10年」

「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」
「バケモノの子」「未来のミライ」そして、最新作「竜とそばかすの姫」
スタジオ地図が10周年を迎える2021年夏――
想像を超えたアニメーション映画“未開の境地へ”

CONTENTS

・グラビアで振り返るスタジオ地図の10年
「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」「未来のミライ」 作品解説=増當竜也
・最新作「竜とそばかすの姫」グラビア
・細田守監督ロングインタビュー 取材・文=高瀬康司
・制作ドキュメント(キャスト編)
中村佳穂/成田凌/染谷将太/玉城ティナ/幾田りら/佐藤健 取材・文=イソガイマサト、岡﨑優子、前田かおり、斉藤博昭
・制作ドキュメント(美術編)
エリック・ウォン/カートゥーン・サルーン/上国料勇/秋屋蜻一/池信孝/上條安里 取材・文=河合宏之
・制作ドキュメント(作画編)
山下高明/青山浩行 取材・文=木俣冬
・制作ドキュメント(音楽編)
常田大希/岩崎太整 取材・文=大谷隆之
・制作ドキュメント(プロデューサー編)
高橋望/川村元気/谷生俊美 取材・文=増當竜也、岡﨑優子、関口裕子
・対談 細田守×樋口尚文(映画評論家、映画監督)
・スタジオ地図 訪問
・齋藤優一郎プロデューサーが語るスタジオ地図の10年
取材・文=関口裕子
・細田守 自作を語る 『キネマ旬報』再録
「アニメ映画に新しい世代がやってきた」/「時をかける少女」/「サマーウォーズ」/「おおかみこどもの雨と雪」/「バケモノの子」/「未来のミライ」
・採録対談 細田守×ポン・ジュノ/細田守×池澤夏樹
・細田守フィルモグラフィー&プロフィール

**************************************************
【書籍名】細田守とスタジオ地図の10年
【著者名】キネマ旬報社・編
【判型・頁数】A5判/ムック
【刊行年月】2021年8月3日
**************************************************

最新映画記事カテゴリの最新記事