第2回「遅れるということの美学」~大好評エッセイ『あたしだけ何も起こらない』エピソード紹介

第2回「遅れるということの美学」~大好評エッセイ『あたしだけ何も起こらない』エピソード紹介

アラサー女性の心をわしづかみにする韓国エッセイ『あたしだけ何も起こらない』

第2回「遅れるということの美学」エピソードまるごと紹介

 

「結婚もせず子供もいない、遅れたからって何よ。これはこれで悪くない」と思いながらも、人より遅いペースで人生を歩んでいく女性の焦燥や不安を、笑って泣けるポジティブな自虐エピソードと共に紡ぐ話題の韓国エッセイ『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書』(ハン・ソルヒ=著、オ・ジヘ=イラスト、藤田麗子=訳/キネマ旬報社刊)。共感必至の全24話の中から、特に心に刺さる3つのエピソードを全3回でご紹介します。【第2回「遅れるということの美学」】

第1回「最近よく聞く言葉、“その年”で」 

第2回「遅れるということの美学」

第3回「人生、その無謀な挑戦」

 

第2回「遅れるということの美学」

 #私の人生にハッシュタグをつけるなら?

 私の人生にハッシュタグをつけるとしたら、最初のキーワードはおそらく #遅刻、あるいは #遅れる あたりになるだろう。ちょっとした遅刻が常態化しているせいだろうか。私は今、人生の軌道を人より遅いペースで走っている気分だ。

 その中でもとりわけ遅れている部分がある。“流行”だ。

私が周りの人々より流行に乗るのが一足遅いということに気づいたきっかけは、ソテジワアイドゥル〔1992年にデビューし、熱狂的な人気を集めた男性ヒップホップグループ〕だった。友達がソテジワアイドゥルに熱狂して『ナン アラヨ(僕は知っている)』〔1stアルバムに収録された大ヒット曲〕を歌っている頃、私はまるで聴きたいと思わなかった。当時は、画一的なブームに乗りたくないという反骨精神のせいだと思っていた。しかし、ちょうど1年後、私は一人で腕組みをして「ナン、アラヨ~ ! 」と歌っていた。

 こうしたことはちょくちょく起こった。すでに放送が終わった『覆面歌王』〔覆面をかぶったスターが歌唱力を競う歌番組。2015年からMBCで放送中〕の“音楽隊長”〔2016年に9 週連続で勝ち抜いた出場者〕の話を持ち出して『Lazenca, Save Us』を聴き、最近はドラマ『シグナル』〔2016年に韓国tvNで放送された刑事ドラマ〕を観て「イ刑事!」と叫びまくり、「どうしてこんなにおもしろいドラマを観ていなかったんだろう!」と大騒ぎして周囲の人々をさんざんわずらわせた。 

 

 運動神経もなく、かけっこはいつもビリで他人の後頭部を見ながら走っていたが、生きるスピードまで遅いとは何事か! だから、周りはみんな結婚したのに、シングルとして寂しく老いていく境遇になったのではないだろうか。身体も心もなぜ一般的な大きな流れに乗れず、一人ぼっちでさまよっているのか。実に奇異なことだ。

 

 私という人間を構成する遺伝子に“遅く行動すること”という命令が彫り込まれているのではないだろうか? だから他の人々が進路について悩んでいた20代に一人でビールを飲み、他の人々が結婚について悩んでいた30代もやはり一人でビールを飲み、人生について深く悩むべき40代になっても一人でビールを飲んでいるのではないだろうか……。

 

 何事にもタイミングがあるはずなのに、こんなふうに他の人々より遅いテンポで歩んでいたら、一人だけ取り残されてしまうのではないかという恐怖に襲われた。これまで取り逃したものに急いで追いつかねばと決心したとたん、思いがけないお見合い話が舞い込んできた。四十路を超えてからの縁談だけに、母は天の助けとばかりに何が何でも会ってみろと私の背中を強く押した。

 

 気持ちが先走りすぎたせいだろうか。男女平等を超えて、女性上位時代といわれる21世紀ではあるが、お見合いの席であるまじき失態を犯した。

 そう、泥酔して記憶を失ってしまったのだ。翌朝、二日酔いで早く目覚めた私は身悶えするほど後悔したが、もはや後の祭り。どうしようもない!  諦めよう。そのとき、意外なことにお見合い相手から電話がかかってきた。「酔い覚ましの食事をしよう」と……。

 

それで、どうなったかって? 私には、まだ見ぬハチミツ壺のような甘いドラマが12話分も残っていて、その男とのデートが待っている。

『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書』より、#11「遅れるということの美学」を転載

 ※無断転載禁止

第3回に続く

 

 

■『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書

女性共感度100%の年齢考察イラストエッセイ。あたしだけ人生何もない? いいえ、スタートが遅いだけです! アラサー女子の飽くなき疑問と焦りにそっと寄り添う、笑って泣ける日常共感書。

ハン・ソルヒ=著、オ・ジヘ=イラスト、藤田麗子=訳

仕様:四六判カラー/232頁/価格:1,595円(税込)/発行:キネマ旬報社

※電子版書籍も発売中

いつからか結婚の話題を出さなくなった両親、いざ結婚へのプレッシャーが消えると沸いてくる焦りと挫折感、ムカつくほど広がっていく毛穴、日に日に低下する記憶力、人生で最も輝いていた瞬間へのノスタルジーetc……。自分だけ置いてきぼりのような人生の中、年齢をまたひとつ重ねていく女性の共感を呼ぶエピソード満載で贈る、笑いと涙の年齢考察イラストエッセイ。

最近よく聞く言葉、“その年”で。“その年”でそれはちょっと……。年を取るって制限がつきもの?
年を取るって失っていくことなの? ミドル世代女子の飽くなき疑問と焦りにそっと寄り添い、
“自分らしく生きる”人生の選択を応援する、日常共感書。

大人気コラムニスト、ジェーン・スー氏がコメントを寄稿!
「あまりにも正直すぎて、気が滅入ったあと声をあげて笑ってしまった。
大丈夫、なんとかなるよ。」―ジェーン・スー氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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