「空と海の間に」のストーリー

ノールウェイの沿岸から最短二日の北氷洋上に一艘の漁船が出漁している。ル・ゲレック船長(アンドレ・ヴァルミー)をはじめとして、乗組員は十二名の漁夫。その一人が突然病気になり、船長は無電で各地に呼びかけたが、無線機が故障していた。アラビヤ人のモハメッドだけを残して後の乗組員は息も絶え絶えになる。最後の手段、アマチュア無電士の船長は、どこかしらのアマチュアに向って呼びかける。船から何千キロも離れたアフリカのトゴの原住民集落で白人のアルベルドが受信した。ジェグウ軍医と連絡し、軍医と船長がアマチュア無線機と話し、病気はハム中毒と判る。肉食をとらない回教徒のモハメッドだけがハムを食べなかったのだ。乗組員は彼を厄病神だと、ののしったりしたのだが、翌朝の八時までに注射しなければ全員助からない。ハム中毒の血清はパリのパスツール研究所だけにしかない。パリの十八歳になるジャン・ルイがその事件を受信する、パスツール研究所で血清を貰ったものの、便がなく、ミュンヘンのアマチュア無線士盲目の紳士カルルがそれを傍受する。カルルはアメリカの病院に勤めている娘の手をかりて、ベルリンのアメリカ空軍に事情を話す。ところがアメリカ側にはハム中毒の血清がない。ソ連側と個人的な話し合いがはじまる。飛行機はソ連にだってあると、血清はコペンハーゲンまで送られ、それからフランス機でオスロへ、オスロからノールウェイ機が現場まで飛ぶ事になった。ノールウェイ機は百米の低空にまで突込み、血清を投下する。その時身も凍る海中に飛び込んだのは、モハメッドだった。人々の連帯責任は無益でない。一週間後、コンカルノオは全港をあげて、リュテス号を歓迎する。ただ一夜の中に、この善意の鎖を結ぶために、手を握り合った世界の人々がいたことを忘れてはならない。