「肉体の門(1948)」のストーリー
ドブ河をはさんで教会と焼ビルの残骸のある街。その焼ビルは夜の女たちのねぐらである。彫留はおせんの腕に「関東小政」と入墨をした。そのころ教会で行われた結婚式を見る群衆の中に、婦人警察官折部みはるに追われたスリの小娘マヤがまぎれ、焼ビルの中に逃げ込んだ。せんと町子はマヤに興味を感じ、彼女の希望するままに仲間に加え「山猫マヤ」と名をつけた。翌日商売から帰ったマヤは、入墨の代金を強要する彫留を見て、その日のかせぎをはたいてせんを救った。せんはマヤがいとしかった。そして金を取らずに男と遊ぶのは彼女らの法度だと教えた。マヤは疑問のままに肯定した。彫留の金をねらった街の不良伊吹新太郎は、逆に深手を負って焼ビルにころがり込み、彼女らの看護をうけた。一人の男をめぐり彼女らの気持ちは複雑だった。いつしかマヤは音楽に魅せられて教会に通い、町子はある男に恋をした。何かにすがりたい--とひたむきな町子の恋もついに裏切者としてせんたちのリンチを受けた。町子を殴ったせんは街にさまよい出て折部に会った。折部はせんの学友であった。しかしせんは折部を突き飛ばして逃げた。折部は教会に雨をさけ牧師の神山に会い、焼ビルの女たちを救おうと誓い合った。間もなく全快した伊吹を囲んで彼女らは牛を殺し盛大な送別の宴を張った。その夜マヤと伊吹は新しい出発を誓った。伊吹は残った肉をさばきに出たが危険を感じ教会に逃げ、神山の激励をうしろに捕らわれてゆく。伊吹を得てマヤもまたグループを去った。せんは新しい裏切者マヤにむちを加えたものの、なぜか心はさみしかった。間もなくせんもどろ沼から足を洗った。幸福になったみんなの前にバラ色の太陽が上った。