「旅する映写機」のストーリー

前作「小さな町の小さな映画館」の撮影中、北海道の小さな港町で90年以上も続いている映画館・大黒座の映写機が、札幌の映画館から譲り受けたものだと知った森田惠子監督が、全国の映画館や映写機のもとを旅してまわる。大黒座の映写機は、札幌のジャブ70ホールという、映画ファンにはよく知られた映画館のものだった。20年前、そこが閉館するとき、ちょうど建て替えの時期を迎えていた大黒座に紹介されてきた。映写機は動き続けて、58年目を迎えている。急速な勢いで映像データのデジタル配信化が進むなか、映画館の閉館が相次ぎ、同時に映写機も姿を消している。現役の古い映写機を中心に記録しようと始まった旅だったが、映写機のない映画館を訪ねたり、映写機修理の様子を見学したり、東日本大震災の被災地で続けられているDVDプロジェクターでの巡回上映や、国立ハンセン病資料館に展示されている映写機も取材した。50年位前までは一般的だったカーボン映写機も、現役で動いているものを探し当てた。幻の上映方法と言われている“流し込み”も撮影した。映画館主で映写技師だった父親を見て覚えた技だという。映写機を訪ねる旅は、映画館、あるいは映画館のある町を訪ねる旅になり、その町の暮らしに触れる旅になった。どこの町にも、どこの映画館にも、懸命になって映画を見せようとがんばっている人たちがいて、人に映画を見せることを楽しんで、幸せを感じている人たちとの出会いがあった。

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