解説
急激な経済成長を遂げた都市・台北を舞台に、豊かさのなかで心の拠り所を失い人生の意味を見失った人々の虚ろな生態をバーレスクに映し出した一編。監督・脚本は「恐怖分子」「エドワード・ヤンの恋愛時代」のエドワード・ヤン。製作のユーウェイエン(美術も)、エグゼクティヴ・プロデューサーの香港の製作者デイヴィッド・サンは「恋愛時代」に続いての参加。撮影はリー・ユーと「恋愛時代」のリー・ロンユー。録音の杜篤之は「恐怖分子」から、編集の陳博文は「クー嶺街少年殺人事件」から引き続いてのヤン作品への参加となる。出演はヒロインのフランスから来た少女に、「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」のヴィルジニー・ルドワイヤン。台北の少年たちに「クー嶺街少年殺人事件」のチャン・シェン、ワン・チーザン、クー・ユーリンと『暴力の情景』(山形国際ドキュメンタリー映画祭95で上映)のタン・シャンシェン。また日本の監督、林海象が特別出演している。2025年4月18日(金)より4Kレストア版を劇場公開。
映画館で観る
配信で観る
Blu-ray&DVDで観る
TVで観る
ユーザーレビュー
「カップルズ」のストーリー
台北の町である悪徳実業家(張国柱)が失踪した。暗黒街では彼に迫る糸口としてその息子を尾行することにする。その息子、通称“紅魚”(タン・シャンシェン)は“小仏”こと“歯磨き”(ワン・チーザン)、“香港”(チャン・チェン)、ルンルン(クー・ユーリン)の3人とつるみ、インチキ占いなどで大金を稼ぐ新進気鋭のワル。今人気の美容院の主ジェイ(趙徳)も彼らにカモにされている一人だ。ジェイの店をデザインした英国人マーカス(ニック・エリクソン)は、ロンドンで食い詰めて流れてきて、台北で有力者の娘アリソン(アイビー・チェン)と恋仲になることで成功を手にした男。その彼を追って、フランス人の元恋人マルト(ヴィルジニ・ルドワイヤン)が台北のハード・ロック・カフェに現れた。マーカスはマルトを店の外に連れだして激しく叱責する。そのあいだ寂しく取り残されたアリソンに香港が言い寄る。マーカスに振られ、タクシー運転手にカモにされそうになっていたマルトを、紅魚たちが助けてホテルに泊めてやった。そのホテルをマーカスが訪ね、二人は一夜を共にするが、心は離れたままだった。翌朝、四人組のアジトの香港の部屋で目覚めたアリソンは、四人組の掟通り他の3人ともセックスすることを強要される。マルトは台北で生活していく決意をするが、紅魚はそんな彼女をアメリカ女のジンジャー(ダイアナ・デュピュイス)の率いる売春組織に売ってひと儲けを企んでいた。彼の父は悪どい実業家だが、そんな父の冷酷な行き方を手本に思っている。紅魚と小仏はジェイの店で紅魚の父の知人と、その愛人らしいアンジェラに取り入る。アンジェラは実はかつて紅魚の父を破産させた女らしい。紅魚は香港に彼女を誘惑するよう命じ、また小仏にはアンジェラが愛人にもらったマンションは不吉だといわせて、ルンルンに命じて偽装の交通事故を仕掛ける。紅魚は愛人の所に隠れている父と会って、その人間的弱さに触れて幻滅を感じる。紅魚がハード・ロック・カフェでジンジャーと交渉している間に、ルンルンがマルトに想いを告白し、実家にかくまう。アリソンとマーカスのマンションで香港とアリソンが寝ていると、そこにマーカスが帰ってきて真相を知る。香港はアンジェラにいいように弄ばれて自尊心を失墜する。紅魚の父を脅迫するために紅魚を追っていた暗黒街の間抜けなギャング(ワン・ポーセン)は、勘違いでルンルンとマルトを捕らえてしまう。しかもマルトの機転で拳銃を奪われ、逆に仲間をおびき出すオトリにされてしまう始末。自分の父を狙う暗黒街の手先二人を手中にした紅魚は、逆に二人を連れて父の隠れ家に乗り込む。だがアパートで待っていたのは、心中した父とその愛人の死体だった。ギャングたちはうろたえて警察に通報する。警察に保護されたマルトを引き取りにきたのはマーカスだった。紅魚はくだんの父の知人に呼び出され、金は出すからこのマンションが不吉だというのを取り消してくれと頼まれる。実はアンジェラは彼の愛人ではなく、マンションは妾宅ではなく借金の返済の代わりであり、そしてこのアンジェラは紅魚の父を破滅させた女とは別人だった。真相を知った紅魚は狂ったようにこの男に拳銃を討ち込む。マーカスはマルトを車に乗せて台北の街を案内し、これからの世界の中心はここだ、ここからヨーロッパの奴らを見返してやるんだとうそぶく。彼がちょっと車を離れたあいだに、マルトの姿は消えていた。紅魚たちと訣別し、実家に戻ったルンルンに、家の下宿人たちがフランス人の女の子がお前を探しに来ていたぞと教える。夜の街に走り出たルンルンはマルトと再会し、ふたりはしっかりと抱き合う。
「カップルズ」の映像
「カップルズ」の写真
「カップルズ」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
---|
キャスト | 役名 |
---|

「カップルズ」のスペック
基本情報 | |
---|---|
ジャンル | ドラマ |
製作国 | 台湾 |
製作年 | 1990 |
公開年月日 | 1996年12月7日 |
上映時間 | 121分 |
製作会社 | 原子電影作品 |
配給 | シネカノン |
アスペクト比 | アメリカンビスタ(1:1.85) |
カラー/サイズ | カラー/ビスタ |
公式サイト | https://www.bitters.co.jp/edwardyang2025/ |
コピーライト | (C)Kailidoscope Pictures |
関連するキネマ旬報の記事
関連記事一覧 | |
---|---|
2025年4月号 |
試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 4 ボディホラーで死を想え! 「終わりの鳥」「サブスタンス」 作品評 REVIEW 日本映画&外国映画 「山田くんとLv999の恋をする」 FACE×TALK 髙石あかり「ゴーストキラー」 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 2 ポン・ジュノと人体複製/クリーチャー/権力闘争「ミッキー17」 インタビュー ポン・ジュノ[監督] REVIEW 日本映画&外国映画 「ミッキー17」 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 3 すべての許されざる者へ「プロフェッショナル」 作品評 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 3 すべての許されざる者へ「プロフェッショナル」 コラム 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 1 誰がベイビーガールなのか? ニコール・キッドマンたちと考えてみる「ベイビーガール」 座談会 ニコール・キッドマン[出演]×ハリス・ディキンソン[出演]×ハリナ・ライン[監督] REVIEW 日本映画&外国映画 「ベイビーガール」 巻頭特集 映画の坂元裕二 ~「花束みたいな恋をした」から「片思い世界」へ グラビア 「片思い世界」の撮影現場から/坂元裕二の映画(2020年~) 巻頭特集 映画の坂元裕二 ~「花束みたいな恋をした」から「片思い世界」へ ロングインタビュー 坂元さんに映画の話を聞いてみた 巻頭特集 映画の坂元裕二 ~「花束みたいな恋をした」から「片思い世界」へ 語り起こし 僕が見てきた映画と、映画について考えたこと 巻頭特集 映画の坂元裕二 ~「花束みたいな恋をした」から「片思い世界」へ 監督たちが語る脚本家・坂元裕二 土井裕泰/是枝裕和/瀧悠輔/塚原あゆ子 巻頭特集 映画の坂元裕二 ~「花束みたいな恋をした」から「片思い世界」へ エッセイ・評論 映画の坂元裕二論 REVIEW 日本映画&外国映画 「少年と犬」 REVIEW 日本映画&外国映画 「Underground アンダーグラウンド」 REVIEW 日本映画&外国映画 「BAUS 映画から船出した映画館」 REVIEW 日本映画&外国映画 「悪い夏」 REVIEW 日本映画&外国映画 「エミリア・ペレス」 REVIEW 日本映画&外国映画 「逃走」 REVIEW 日本映画&外国映画 「ドマーニ! 愛のことづて」 「ドマーニ! 愛のことづて」特別対談 パオラ・コルテッレージ[監督・脚本・主演]×秦早穂子(映画評論家) REVIEW 日本映画&外国映画 「私たちは天国には行けないけど、愛することはできる」 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 7 ベテラン監督の名人芸にうっとりする「サイレントナイト」 作品評 REVIEW 日本映画&外国映画 「フライト・リスク」 REVIEW 日本映画&外国映画 「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Chapter 5 韓流アクションの頂点を体感しよう「ベテラン 凶悪犯罪捜査班」 座談会 ファン・ジョンミン[出演]×チョン・へイン[出演]×リュ・スンワン[監督] REVIEW 日本映画&外国映画 「Flow」 次世代への映画推薦委員会 今月の推薦作品 「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」 CURRENT TOPICS 文化映画とドキュメンタリー 「104歳、哲代さんのひとり暮らし」 クリエイターズ・アイ 「光る川」 CURRENT TOPICS 文化映画とドキュメンタリー 「LETTERS FROM FUKUSHIMA」「FUKUSHIMA with BELA TARR」 試写で見て「これゼッタイ、公開されたら映画館で見ること決定!」の映画 Extra Chapter また映画館で見たい映画「カップルズ」4Kレストア版 作品評 |
1996年12月下旬号 | 外国映画紹介 カップルズ |
1996年12月上旬号 |
KINEJUN CRITIQUES カップルズ COMING SOON【新作紹介】 カップルズ |
1997年4月下旬号 | 劇場公開映画批評 カップルズ |