「ニューヨーク・ドール」のストーリー
元アルコール依存患者で近年モルモン教に改宗した、物腰の柔らかいL.A.在住のアーサー・ケイン。彼は毎朝バスに乗って職場の図書館まで出勤している。スーツとネクタイをしたシャイな55歳のアーサーが、70年代伝説のロックバンド“ニューヨーク・ドールズ”のベーシスト、アーサー・“キラー”・ケインであるとは、誰もが思わなかった。アーサーは、“ニューヨーク・ドールズ”に1971年に加わる。艶やかなメイクと厚底靴に、ピチピチのパンツのきらびやかな衣裳に身を包んだ性別不明のステージ衣裳と相反する激しい音は、パンクの前兆とされて次世代の多くのミュージシャンに大きな影響を与えた。しかし、ドラッグの使用とメンバーの内輪もめで、1975年に解散。以来、アーサーの暮らしぶりは堕ちていった。ニューヨークからロスに移り、30年近くの間、再び世に知られることなく寂しい人生を送っていた。アルコール依存症と闘い、トラブルだらけの結婚生活。再三、音楽キャリアで復活を果たそうとするが、それもうまくいかなかった。1989年、アーサーはそれまでの堕落した生活に終止符を打ち、モルモン教に改宗。教会で知り合った友人たちにハーモニカでメッセージを吹くようになる。アーサーの生活は一変した。しかし、彼の胸の奥にはどうしても捨てきれない夢があった。それはバンドを再結成し、再びスポットライトを浴びることだった。それから15年後の2004年早春、元“ニューヨーク・ドールズ”ファンクラブの会長であり、ロンドンで開催される音楽フェスティバル、メルトダウン・フェスティバルの責任者であるミュージシャンのモリッシーは、“ニューヨーク・ドールズ”の再結成ライブを提案する。アーサーは、約30年ぶりに元メンバーと再会を果たす。