街のあかり(2006)

まちのあかり
上映日
2007年7月7日

製作国
フィンランド

制作年
2006
上映時間
78分

レーティング
ジャンル
ドラマ

check解説

「浮き雲」では人間賛歌を、「過去のない男」(2002年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演女優賞受賞)では再生のドラマを語ってきたフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ。敗者三部作の最終章で描くのは、人間性の回復。チャップリンの「街の灯」のごとく、人間の誠実さを丁寧に追いかける。主演は「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」「過去のない男」のヤンネ・フーティアイネン。
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この作品のレビュー

ユーザーレビュー

  • ミャーノフ大佐

     私のアキ・カウリスマキ月間の最後がこれか。なんと後味の悪い映画だろう。アキ・カウリスマキの映画でこんな後味の悪い映画はあったろうか。アンハッピーで終わる映画はたくさんあるけど、こんな救いのないのは初めてじゃないかな。確かに初期の「罪と罰」や「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」などは救いがない、と言えばそうかもしれないが、それぞれ大作家の作品であり、主人公内面での葛藤がある。でもこの映画はどうか。主人公にどんな内面があるのか判らない。ラストで自分を騙し利用したギャングのボスを襲おうとするが、逆に男の部下達に袋だたきにされる。彼の意志が出るのが、そのシーンだけだが、それにしてもどういう意志かが判らない。
     主人公コイスティネンは警備会社で夜景として働いている。無口で職場でも浮いている。彼が親しく話せるのは屋台のソーセージ屋のアイラだけだ。アイラは彼に恋心を持っている。そんな彼にミルヤと言う女が近づいてくる。実はミルヤはギャングのボスの女。彼女はボスに言われて近づいてきて、彼が警備している宝石店を襲うため、警備情報を盗もうとしている。そして、宝石店は襲われ、彼女は彼の部屋に盗んだ宝石の一部を置いていき、彼が捕まって刑務所に入る。アイラだけが彼のことを気遣っている。刑務所から出てきてレストランの皿洗いとして働いていると、そのギャングとミルヤが一緒にいるところを見てしまう。ギャングのボスはレストランの支配人に、彼が犯罪者であるといって、彼をクビにしてしまう。
     ギャングのボスは悪党として描かれているので判るが、ミルヤの心情が判らない。ボスの前でコイスティネンのことをかばう様な台詞を言わせながら、どんどん彼を裏切っていく。ラストもレストランでボスといるところをコイスティネンに見られても平然としている。彼に睡眠薬を飲ませたり、彼に濡れ衣を着せるために彼のアパートを訪ねたり。また、コイスティネンも彼女が宝石をソファの下に隠すのを見ていながら、なんで罪を被るのか。そしてなんでアイラの愛情に応えないのか。この辺の登場人物、特にコイスティネンとミルヤの心の動きが判らない。と言うか、判らないのはこの2人か。他の登場人物はそれぞれの人格を表現している。とするとそこにヒントがあるのかな。でも、主要人物の心情がわかんないんじゃ映画に入っていけないよな。
     アキ・カウリスマキの映画で初めて通貨単位でユーロが出てきた。街の様子もずいぶんと近代的だ。主人公がいつもの様に貧しく、それでも生きている人にしてほしかった。
     常連のカティ・オウティネンはスーパーのレジ係として出演していました。

「街のあかり(2006)」のストーリー

ヘルシンキ。警備会社に夜警として勤務するコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)は同僚からも上司からも気に入られず、黙々と仕事をするだけの日々を送っている。影のように、彼はヘルシンキの場末で暮らしている。朝焼けが広がる空の下、コイスティネンは夜勤明けにソーセージ屋に向かう。そこではいつもアイラ(マリア・ヘイスカネン)が彼を迎える。ソーセージを丹念にグリルするアイラ。彼は誰にともなく告白する。「警備会社を起業して、奴らをツブしてやる」と。アイラはうなずく。そんなコイスティネンをパブで偶然見かけ、その性格を見抜き、付け込もうとする危険な男(イルッカ・コイヴラ)がいることを、コイスティネンはまだその頃気づいていなかった。雲がどんよりと立ち込めるある日のカフェ。休憩時間のコイスティネンに美しい女が近づいてきた。いきなり彼の前に座り、「あなたが寂しそうだった」と言う。コイスティネンは生まれて初めて恋に落ちた。ふたりはつつましやかなデートをする。彼の胸に突然ひかりが舞い込んできた。その希望を原動力に、企業のためなけなしの貯金をはたいて職業訓練校で経営を学び、銀行へ融資を受けるために相談に行く。しかし訓練校の卒業証書は何の役にも立たず、銀行員に侮蔑のまなざしを向けられるだけ。それでも、コイスティネンの胸は、ミルヤ(マリア・ヤンヴェンヘルミ)への愛にあふれていた。月明かりの美しいある夜。突然仕事場にミルヤが訪ねてきた。「会いたかったわ」という言葉とともに。「一緒にウィンドウ・ショッピングを」という彼女の誘惑に抗いきれず、彼は夜のショッピングセンターに彼女をいざなう。宝石店の警備に入るとき、コイスティネンが押した暗証番号をミルヤは見逃さなかった。それはコイスティネンの『犬のように従順で、ロマンティックで馬鹿』な性格を利用した悪事の始まりだった。しかしコイスティネンはそれを知らず……。

「街のあかり(2006)」のスタッフ・キャスト

スタッフ
キャスト役名

「街のあかり(2006)」のスペック

基本情報
ジャンル ドラマ
製作国 フィンランド
製作年 2006
公開年月日 2007年7月7日
上映時間 78分
製作会社 スプートニク=パンドラ・フィルム=ピラミッド・プロダクション
配給 ユーロスペース
レイティング
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
カラー/サイズ カラー/ビスタ

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