解説
この作品のレビュー
ユーザーレビュー
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ミャーノフ大佐
私のアキ・カウリスマキ月間の最後がこれか。なんと後味の悪い映画だろう。アキ・カウリスマキの映画でこんな後味の悪い映画はあったろうか。アンハッピーで終わる映画はたくさんあるけど、こんな救いのないのは初めてじゃないかな。確かに初期の「罪と罰」や「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」などは救いがない、と言えばそうかもしれないが、それぞれ大作家の作品であり、主人公内面での葛藤がある。でもこの映画はどうか。主人公にどんな内面があるのか判らない。ラストで自分を騙し利用したギャングのボスを襲おうとするが、逆に男の部下達に袋だたきにされる。彼の意志が出るのが、そのシーンだけだが、それにしてもどういう意志かが判らない。
主人公コイスティネンは警備会社で夜景として働いている。無口で職場でも浮いている。彼が親しく話せるのは屋台のソーセージ屋のアイラだけだ。アイラは彼に恋心を持っている。そんな彼にミルヤと言う女が近づいてくる。実はミルヤはギャングのボスの女。彼女はボスに言われて近づいてきて、彼が警備している宝石店を襲うため、警備情報を盗もうとしている。そして、宝石店は襲われ、彼女は彼の部屋に盗んだ宝石の一部を置いていき、彼が捕まって刑務所に入る。アイラだけが彼のことを気遣っている。刑務所から出てきてレストランの皿洗いとして働いていると、そのギャングとミルヤが一緒にいるところを見てしまう。ギャングのボスはレストランの支配人に、彼が犯罪者であるといって、彼をクビにしてしまう。
ギャングのボスは悪党として描かれているので判るが、ミルヤの心情が判らない。ボスの前でコイスティネンのことをかばう様な台詞を言わせながら、どんどん彼を裏切っていく。ラストもレストランでボスといるところをコイスティネンに見られても平然としている。彼に睡眠薬を飲ませたり、彼に濡れ衣を着せるために彼のアパートを訪ねたり。また、コイスティネンも彼女が宝石をソファの下に隠すのを見ていながら、なんで罪を被るのか。そしてなんでアイラの愛情に応えないのか。この辺の登場人物、特にコイスティネンとミルヤの心の動きが判らない。と言うか、判らないのはこの2人か。他の登場人物はそれぞれの人格を表現している。とするとそこにヒントがあるのかな。でも、主要人物の心情がわかんないんじゃ映画に入っていけないよな。
アキ・カウリスマキの映画で初めて通貨単位でユーロが出てきた。街の様子もずいぶんと近代的だ。主人公がいつもの様に貧しく、それでも生きている人にしてほしかった。
常連のカティ・オウティネンはスーパーのレジ係として出演していました。
「街のあかり(2006)」のストーリー
「街のあかり(2006)」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「街のあかり(2006)」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | ドラマ |
製作国 | フィンランド |
製作年 | 2006 |
公開年月日 | 2007年7月7日 |
上映時間 | 78分 |
製作会社 | スプートニク=パンドラ・フィルム=ピラミッド・プロダクション |
配給 | ユーロスペース |
レイティング | |
アスペクト比 | アメリカンビスタ(1:1.85) |
カラー/サイズ | カラー/ビスタ |
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