「別れのこだま」のストーリー
湖上を疾走するボートから朗らかな声が聞こえてくる。作家ユージン・ストライデン(リチャード・ハリス)と娘のディアドル(ジョディ・フォスター)だ。おどけ、笑い、ふざけ合う2人は、どこから見ても幸せな親子そのもの。しかし、この少女に未来はなかった。9歳の時発病し、以来3年間、世界中の名医、大病院を訪ね歩いたものの、そのすべてに見放された不治の心臓病が、少女にどこか暗い陰をつくっていた。ここアメリカ東海岸の別荘で過ごすことになったのも父親の娘への悲しい愛の発露だった。だが少女は自分の運命を察知していた。そして又、父ユージンと母ルース(ロイス・ネットルトン)が自分の存在によって精神的亀裂を生じていることも知っていた。そんなディアドルの前に、近くに住む9歳のフィリップ(ブラッド・サヴェージ)という少年が現われ、初め、少年の馴れ馴れしい仕草に心の垣を作っていた彼女も、次第に打ちとけていった。だが、家に帰れば家庭教師のセイラ(ジェラルディン・フィッツジェラルド)に反抗的な態度を見せ、自分のカラに閉じこもってしまう。主治医のハムレット医師(ウィリアム・ウィンダム)は出来るだけ思い通りに振るまわせるように両親にアドバイスするのだったが--。ある夜、父はディアドルのうめき声を聞き、そのそばへ駈け寄った。「パパと別れるのはいや!」2人は抱き合った。父は残された日々、この子のために出来るだけのことをしようと決意した。すでにディアドルは激しい運動の出来ない身体になっていた。「年をとりたい、1日だけ25歳になって大人の恋がしてみたい」と口ぐせのようにつぶやいていた大人への願望に一歩一歩近づく日がやって来た。12歳の、そして多分最後のディアドルの誕生日である。ストライデン夫妻は今までの一切のわだかまりを捨て、娘のために楽しい思い出を作ってやろうと決意する。フィリップの呼びかけで町の子供たちも集まって来た。自分のために、精一杯、古代中国の風刺劇を演じる父と母をみて、次第に安らぎを取り戻していくディアドルの魂。いまは素直な心に返った少女を、深まりゆく秋の陽ざしが優しく包んでいた。