お坊さまと鉄砲の映画専門家レビュー一覧

お坊さまと鉄砲

第96回アカデミー賞国際長編映画賞ブータン代表作品でショートリストに選出されたブータン映画。2006年、国王の退位を機に民主化することになったブータンで、模擬選挙が行われることになる。初めての選挙で「変化」を求められて戸惑う人々。その報を聞いた村の高僧は、銃を用意するよう若い僧に指示する。監督は、「ブータン 山の教室」のパオ・チョニン・ドルジ。前作同様、温かい眼差しと飄々としたユーモアで物語を紡ぎながら、本当の幸せとは何かを、観る者に問いかける。
  • 文筆業

    奈々村久生

    牧歌的な風景に、生年月日を「無意味なこと」として知らずに生きてきた人々。近代化の裾がようやく訪れた村のさざ波を描くにしては、驚くほど緻密に計算された画面構成とストーリーテリング。アメリカの銃社会や資本主義経済の理屈がまったく別の価値観に取り込まれていく作劇も見事。単純な二元論で語れる問題ではないところを映画的なダイナミズムで乗り切り、クライマックスではラマ教の法要の儀式という花火を打ち上げる。口当たりのいい佳作の枠に収まらない上質のエンタテインメントだ。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    アメリカ人や日本人、政治で分断が深まってるあらゆる国の国民もれなく全員が観るべき映画。高校の授業で全生徒に観せるべきとも思ったが、観せただけではダメで、観たあと少人数グループに分かれて感想を(議論にはならないよう)語りあうまでが大切。映画にでてきた勃起した男性器も非常に大切、濡れた女性器も同じくらい大切、というのが僕の感想。映画としての欠点は一点だけで、BGM入れすぎ。ラジオやテレビから流れてくる曲とクラブでかかってる曲、あとは祭礼の音楽だけで充分だった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    浅学で知らなかったのだが、ブータンは王朝制が独裁政治になることなく、比較的政策がうまくいっている中で、国王みずから立憲民主制に移行したらしい。鑑賞後に知って、それでこのような内容の映画なのかと理解した。王朝制で国民が不自由を感じていないのに、民主化が図られたため選挙制度に対しキョトンとしていたわけだ。他の国は人民が選挙制を勝ち取ろうと多くの血が流されてきたというのに、さすが人民の幸福度の高い国なだけはある。007が世界共通語なのは微笑ましい。

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