ドマーニ! 愛のことづての映画専門家レビュー一覧

ドマーニ! 愛のことづて

戦後の荒廃したローマで逞しく生きる市民たちと権利を渇望する女性たちの姿を巧みなストーリーとユーモラスな演出で描き、2023年イタリア国内興行収入ランキング1位を記録した、イタリアの国民的コメディエンヌ、パオラ・コルテッレージによる監督デビュー作。愛する娘の将来と夫の暴力に悩む主婦デリアをパオラ・コルテッレージが自ら演じ、「甘き人生」のヴァレリオ・マスタンドレア、「人生、ここにあり!」のジョルジョ・コランジェリ、「トスカーナの幸せレシピ」のヴィニーチオ・マルキオーニが脇を固める。「イタリア映画祭2024」では「まだ明日がある」のタイトルで上映。
  • 映画評論家/番組等の構成・演出

    荻野洋一

    イタリア社会が家父長制とジェンダー的不平等に立脚していたことを告発した点、そして社会性とエンタテインメント性を両立させて国内No.1ヒットを果たした点は、評価に値する。しかし、ここに写っているローマ市民はスタジオに配置されたノスタルジーの書割にとどまる。また、主人公が夫からDVを受けるシーンで音楽に合わせた振付をほどこしてミュージカル仕立てとしたのは致命的な誤りだ。この様式化によってフェミニズムの訴求性が減衰し、エンタメとして消費されてしまった。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    ぜひ多くの女性にもDV男にも観てもらいたい良作なんだが、ラストのオチが今年観るとちょっと複雑。民主主義や参政権が機能してるからこそ世の中が変になってるって驚くべき時代に我々はもう突入しちゃっているからね。なぜ彼女は自分を殴るようになる男を好きになったのか、などと通俗心理学で分析してもフェミニズムは達成できぬ、そんな暇があったら殴られてるのをまず止めたいと僕も思うけど、しかしやはり映画としては「ナミビアの砂漠」のほうが面白いんだよなあ……、映画としてはね。

  • 著述家、プロデューサー

    湯山玲子

    日本でもお馴染みの家父長制男尊女卑社会も、所変わればそのテイストも変わる、 というわけで、戦後間近のイタリア、下流の人々のそれは、キリスト教の影響も相まってハードコア。主人公及び登場人物の女性たちの怒りの解決が、実は社会システムにあり、という点がこの作品の思い切った切り口。トランプ大統領時代になった今、本作の民主主義肯定感は貴重。紋切り型の女同士の連帯モードを使わず、市井の女性の理不尽を生きる現実感を描写したネオリアリズモにイタリアの伝統をみた。

  • 映画評論家/番組等の構成・演出

    荻野洋一

    イタリア社会が家父長制とジェンダー的不平等に立脚していたことを告発した点、そして社会性とエンタテインメント性を両立させて国内No.1ヒットを果たした点は、評価に値する。しかし、ここに写っているローマ市民はスタジオに配置されたノスタルジーの書割にとどまる。また、主人公が夫からDVを受けるシーンで音楽に合わせた振付をほどこしてミュージカル仕立てとしたのは致命的な誤りだ。この様式化によってフェミニズムの訴求性が減衰し、エンタメとして消費されてしまった。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    ぜひ多くの女性にもDV男にも観てもらいたい良作なんだが、ラストのオチが今年観るとちょっと複雑。民主主義や参政権が機能してるからこそ世の中が変になってるって驚くべき時代に我々はもう突入しちゃっているからね。なぜ彼女は自分を殴るようになる男を好きになったのか、などと通俗心理学で分析してもフェミニズムは達成できぬ、そんな暇があったら殴られてるのをまず止めたいと僕も思うけど、しかしやはり映画としては「ナミビアの砂漠」のほうが面白いんだよなあ……、映画としてはね。

  • 著述家、プロデューサー

    湯山玲子

    日本でもお馴染みの家父長制男尊女卑社会も、所変わればそのテイストも変わる、 というわけで、戦後間近のイタリア、下流の人々のそれは、キリスト教の影響も相まってハードコア。主人公及び登場人物の女性たちの怒りの解決が、実は社会システムにあり、という点がこの作品の思い切った切り口。トランプ大統領時代になった今、本作の民主主義肯定感は貴重。紋切り型の女同士の連帯モードを使わず、市井の女性の理不尽を生きる現実感を描写したネオリアリズモにイタリアの伝統をみた。

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