すれ違いのダイアリーズの映画専門家レビュー一覧

すれ違いのダイアリーズ

美しい自然のなかで展開される青年教師の奮闘ドラマ。二ティワット監督は「フェーンチャン ぼくの恋人」(03)の共同監督のひとり。本作について「人は会ったこともない相手と恋に落ちることがあるだろうか?――この問いが私を動かし、この映画を作る原動力になった」と述べている。ソーン役のスクリットは人気歌手で、舞台やテレビでは俳優としても活躍してきたが、本作が映画デビューとなった。2014年10月23日、「先生の日記」のタイトルで第27回東京国際映画祭にて上映。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    同じ時間に別々の場所で起こっていることをカットバックしているのかと思いきや、実は1年の隔たりのある出来事をつなげていたとやがてわかる前半部分の編集は、「気配」や「痕跡」を感じ取りあうことで紡がれるこの恋物語にふさわしいアイディア。二人の恋の成就にとって邪魔となる、女性側の婚約者をストーリーからどう追い払うかについては、ずいぶんわかりやすくベタなことをしたものだと思うが、自然環境を生かした演出や水上学校の生活描写も興味深く、全体に気持ちのよい映画。

  • 映画監督

    内藤誠

    一冊の日記を媒介にして主人公の男女が最後の場面まで顔を合わせないという難しい構成だが、水上学校をめぐるディテールが丁寧に描かれているので、画面に見入ってしまう。粗末な掘っ立て小屋みたいな校舎のなかで、トイレが重要な位置を占めているのも笑える。木下惠介の作品を思わせるヒューマンな味わいが、悪意に満ちた学園ものの多い、最近の日本映画を見てきたものには新鮮だ。とはいえ解散したタイGTH社の知恵をしぼった物語の展開が、ときにあざとすぎて鼻につくのも確か。

  • ライター

    平田裕介

    置き忘れられていたとはいえ、他人の日記。それをむさぼり読み、書いた者に恋い焦がれて捜索までしてしまう。よく考えたら気持ち悪いヤツの話だし、そういう類の手紙や日記って溌剌とした内容でも怖いはずだが、主人公の青年は見た目も性格も憎めないタイプ。そこに舞台となる水上学校の牧歌的風景、純粋無垢な子どもたちといったものが違和感なく乗っかり、うっかりこちらも終始キュンキュンして見入ってしまった。ヒロインを含め、出てくる女性が片っ端から美女なのも素晴らしい。

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