緑はよみがえるの映画専門家レビュー一覧

緑はよみがえる

「ポー川のひかり」のエルマンノ・オルミが手掛けたヒューマンドラマ。劇場公開に先駆け、イタリア映画祭2015にて2015年4月29日、5月3日に上映された。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    イタリア兵たちのドラマが展開される塹壕内が、どういう構造なのかまるでのみこめず困惑するが、時間経過までもが判然としないことからすると、これは意図的なものだろう。ロケ撮影であるにもかかわらず風景が妙に非現実的に見えること、そして言うまでもなくほとんど色を感じさせない画面であることと合わせ、戦場での一夜の物語を客観的・具体的に語るのではなく、兵士たちの記憶を介して描こうとしているのではないかと思う。静寂をつんざく砲撃や銃撃の音がほんとうに恐ろしい。

  • ライター

    平田裕介

    随所に挟み込まれる詩的なセリフ、争いをよそに金色に輝くカラマツの樹、シンガロングされるナポリ民謡。そういうものにグッとくる人はくるのだろうが、反戦的なものににせよ、アクションにせよ、戦争映画はドンパチが決め手と思っている向きには、なんだか退屈で辛気臭く感じるだけ。その辛気臭さが厭戦に結びつくのは確かだが。舞台がほぼ塹壕で常に薄暗く、出てくる連中もオール髭面で誰が誰だかわからず。作品が悪いのではなく、こちらのチューナーがいろいろと感じ取れないだけ。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    1時間16分の映画だが、長篇大作を見たようなずっしり重い手応えを感じる。第一次大戦、アルプスの前線の一日、それもほとんど塹壕の中の兵士たちに密着して描かれる。壮大な戦闘シーンなどはないが、雪の降りしきる戦陣から眺める景色の神々しいまでの美しさ、戦火の合間の静寂が生命の貴重さ、戦争の愚かさを何と雄弁に語りかけるのだろう。最後に生残った若い兵士の手紙「人が人を赦さなければ、人間とは何なのでしょう」がエルマンノ・オルミ監督の思いを伝えている。

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