ヒメアノ~ルの映画専門家レビュー一覧
ヒメアノ~ル
若者の日常と殺人鬼の狂気を並行して語る古谷実の同名コミックを映画化。清掃会社で働く岡田は、同僚の安藤が想いを寄せる女性の働くカフェで、高校の同級生・森田と再会する。森田が彼女をストーキングしていると知った岡田は不穏な気持ちを抱く。出演は、「人間失格」の森田剛、「アヒルと鴨のコインロッカー」の濱田岳、「グラスホッパー」の佐津川愛美、「幕が上がる」のムロツヨシ。監督は、「銀の匙 Silver Spoon」の吉田恵輔。
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評論家
上野昻志
たとえば、清掃の現場で岡田が安藤に声をかけるときの二人の立ち位置だとか、公園でベンチに座ったユカが岡田を指さすときの二人の位置といった、人と人との間の距離の取り方がうまい。つまり、吉田監督は、人の関係を画面空間の位置関係で表すのに優れているのだ。それが意識的にコミカルにしたという前半部で際立つのは、対象に対する距離感が明確だったからかもしれない。後半、森田が中心になるにつれ、それが消えるのは、彼の衝動を?みきれなかったからではないか。
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映画評論家
上島春彦
この監督の分裂的気質が最も的確な方法論で出た作品。最初に注目された「机のなかみ」でも、中盤でぺこっと話を折り返すみたいな感じをやって可笑しかったが、本作でも真ん中でタイトルをやっと出し、これが最上の効果。ここから突然イヤ~な展開となる。凶悪な森田剛のキャラに同情の余地はないんだが、それでも彼を心から憎む観客はいないだろう。正しくはないが、彼はやるべきことをやっていると私は思う。佐津川愛美さんがあまりにエロカワいくて、つい星を足してしまいました。
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映画評論家
モルモット吉田
舞台での噂は聞きつつも、映画では真価を計りかねていた森田の本領を認識。くすんだ男が淡々と殺り始める瞬間に見せる跳躍に瞠目。中盤でタイトルを出す趣向も、これ見よがしになっていない。凄惨な話ながら絶望感が突き抜けきらないのは監督の資質か。森田が警官を殺した後、発覚までに時間がかかりすぎたり、終盤も後手に回りすぎるなど、身内を殺られるとポリが本気を出してくることを思えば、作劇の都合が優先気味にも思える。棒読みで無表情のまま貫き通すムロツヨシが出色。
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