アバウト・レイ 16歳の決断の映画専門家レビュー一覧

アバウト・レイ 16歳の決断

「リトル・ミス・サンシャイン」の製作チームが贈るトランスジェンダーの若者と家族の物語。出演は「ヴィンセントが教えてくれたこと」のナオミ・ワッツ、「マレフィセント」のエル・ファニング、「魔法にかけられて」のスーザン・サランドン。監督は、「チューブ・テイルズ/ローズバッド」のゲイビー・デラル。2015年トロント国際映画祭出品作品。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    こんな顔ぶれでこんな内容の映画をやれるのがアメリカ映画の素晴らしいところだ。性同一性障害の主人公をエル・ファニングが、シングルマザーの母親をナオミ・ワッツが、レズビアンの祖母をスーザン・サランドンが演じている。この種の映画はどうしても「テーマに奉仕する=テーマを美化する作品」になってしまいがちだが、ディテールをしっかりと描き、丁寧な演技で見せることで、地に足の着いた堅実で誠実な仕上がりとなっている。しかし最近のファニングは作品選びが実に良い。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    数年前に公開予定で取り上げたにもかかわらず、いつの間にか公開中止になっていて、記事だけ出ちゃったという個人的に苦い思い出のある一本。本国ではトランスジェンダーの描写をめぐるデリケートな批判が起こったり、いまや悪名高いワインスタインがらみだったりして、すっかり傷がついてしまった。でも若かりし頃のディカプリオみたいな雰囲気をまとったエル・ファニングの、ワイルドかつ繊細な身のこなしやスケボーを操る中性的な姿は、やはり惚れてしまうレベルの演技力だ。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    原題は3 Generations、三世代である。レズビアンの祖母(S・サランドン)、シングルマザーの母親(ナオミ・ワッツ)、孫娘(エル・ファニング)は男性になりたいという強い意志を持っており、そのトランスジェンダーがテーマだ。異様な家族だが、それを興味本位で描くのではなく、また性的少数者を社会派的視点で描くのでもなく、ごく当たり前の人間の属性としてヒューマンで面白いドラマに仕立てたのは見事。三人の女優の競演は終始涙と笑いを誘う。完成度は極めて高い。

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