エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中にの映画専門家レビュー一覧
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター監督が、自身の記憶を色濃く反映させた青春群像劇。1980年の3日間を舞台に、野球推薦で大学に入学することになった主人公ジェイクの日常を見つめながら、大人の扉を開けるひと時の輝きを捉える。出演は、TV『Glee』のブレイク・ジェナー、「ヴァンパイア・アカデミー」のゾーイ・ドゥイッチ、「ロード・トゥ・パーディション」のタイラー・ホークリン、「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」のグレン・パウエル。2016年7月16日、一般公開に先駆け、新宿シネマカリテの特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016』オープニング作品として上映。(上映日:2016年7月16日)。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
いきなり『マイ・シャローナ』が流れ、皆でクルマで合唱(合ラップ)するのは『ラッパーズ・ディライト』。そんな1980年が舞台。テキサスの大学野球部選手たちの話なのになかなか野球のシーンにならない。女の子を口説くこと&酒を呑むこと&遊ぶことしかやってない。ていうか基本、文化系のノリなのが可笑しい。「時間」に取り憑かれた映画作家リンクレイターの絶妙なセンスが、ある時代のすでに失われた雰囲気を見事に再現している。無名俳優たちの賑やかなアンサンブルも眩しい。
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映画系文筆業
奈々村久生
自分にとってリンクレイターはもはやファンタジーの作家。ドキュメンタリー的な要素を取り入れたり、すぐ隣にいそうな人たちを撮りながら、その世界には絶対にたどり着けない。特に本作では「80年代アメリカの大学生活」というフォーマット自体が映画の中でしか観たことのないノスタルジーなので、現実と映画への憧れがメタとなって迫ってくる。男ばかりの野球部の寮、ハメを外したパーティー、色褪せないボーイ・ミーツ・ガール。未体験なのに何もかもが鮮やかすぎる。
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TVプロデューサー
山口剛
自閉型の青春映画が多いので、体育会系の団体生活を送る若者たちの姿は懐かしくかつ新鮮だ。団体の中にいるからこそ個性が光る。リンクレイターの軽快な饒舌スタイルの原点を見るようだ。文句なく楽しく面白い。主人公の年齢順に並べると「6才のボクが…」「バッド・チューニング」から本作を経て「ビフォア三部作」へつながっている。娯楽映画を撮りながらも常に自分自身が作品に投影されている。この主人公は果たしてどんな老境を迎えるのだろう? 是非観てみたい。
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