ミモザの島に消えた母の映画専門家レビュー一覧
ミモザの島に消えた母
「サラの鍵」の原作者として知られるタチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を映画化。幼い頃に母を亡くしたアントワンは今でも喪失感を抱えているが、家族は何かを隠している様子。母が死んだ西仏の島を調べるうちに、彼は思わぬ真実にたどり着く。監督はフランス映画祭2004で上映された「彼女の人生の役割」のフランソワ・ファヴラ。過去と現在を行き来させながら、複雑な思いが絡む家族を描く。母の死の真相を追う男性を「アンタッチャブルズ」のロラン・ラフィットが、彼の妹を「イングロリアス・バスターズ」のメラニー・ロランが演じる。
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翻訳家
篠儀直子
クリスマスの場面以後は地獄絵図というほかなく、主人公はどうすべきだったのかとかいろいろ考えさせられる。でも、この映画を支えているのは主にストーリーの面白さであって、観終わったとき全体の印象が奇妙に薄いのも確か。冒頭の事故が起こる一本道と、重要な場となる海の中道は、物語構造上重なり合っているのだと思うが、たとえば、このフォトジェニックな中道をもっと魅力的に撮ることはできなかったものか。海上を車が突っ走るって、映画として最高にすごい画のはずなのだが。
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映画監督
内藤誠
少年時代の母の謎めいた死がトラウマとなった主人公ローラン・ラフィットが、執拗に謎を解明しようとして家族のあいだに波風を立てるミステリー。妹役のメラニー・ロランをはじめ、登場人物がキメこまかく配置されていてサスペンスフルだ。オートバイをとばし、死体処理を職業とする女性オドレイ・ダナの存在が物語をひきたてる。筆者もテレビの2時間ドラマでルイ・C・トマの『死のミストラル』を脚色したことがあるが、ノワールムーティエ島のロケなど、さすが映画のスケール。
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ライター
平田裕介
家族だからこそ言いたくない、家族だからこそ訊けない、家族だからこそ隠したい。どんな家族にも、こうしたミステリーやタブーが大小かかわらず存在するはず。ゆえに登場する家族のそれぞれに共感できるし、物語にも引き込まれてしまう。語らぬ父を責めながら、自身も同じように娘と接したことに主人公が気づくサブ・ドラマも悪くない。しかし、自分だけが執着していた謎が氷解してスッキリする主人公だが、他の家族はボロボロな様子。画的には晴れやかに〆るが、彼らの今後が心配だ。
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