森のカフェの映画専門家レビュー一覧

森のカフェ

悩める哲学研究者が気晴らしに訪れた近所の森で、無理やりコーヒーを飲ませてくる女と出会い……。ユーモアを交えながら、現代社会への批評的な鑑識も兼ね備えた哲学的コメディ。監督・脚本は、「見えないほどの遠くの空を」の榎本憲男。出演は、「暗闇から手をのばせ」の管勇毅、本作が本格的な映画出演となるミュージカル『レ・ミゼラブル』の若井久美子、「見えないほどの遠くの空を」の橋本一郎、ドラマ『悪霊病棟』の伊波麻央、「赤い文化住宅の初子」の東亜優、劇団青年団の永井秀樹、志賀廣太郎。
  • 評論家

    上野昻志

    榎本監督、これは、エチュードのつもりで作ったのでしょうね? これで小手調べをして、改めて本格的に映画に取り組むと。論文に悩む哲学青年が、森の中でカフェを名乗る女と出会うというシーンが二度繰り返され、ご丁寧にその種明かしもされ、結果、書いたのが、デカルト批判って、緩すぎない! 唯一面白かったのが、論文審査の場で、志賀廣太郎の教授が、かつて東大総長についた某映画評論家そっくりの演技を披露するところぐらい。全篇に流れる音楽と歌は良かったけどね。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    きみはどうなの?、という詞の歌が歌われるが珈琲に関して言うとスターバックスとタリーズを嫌う私は最近メキシコのサパティスタが作った豆を家で自分で挽いて飲む。んなこと聞いてないか。本作が問うのはそういう政治的な趣味ではなく現代の物心の乖離。精神を病むほど悩む哲学者は森で出くわした女子大生のギター弾き語りに啓示を得る。これにかつて中沢新一や浅田彰が詩的な表現で思想をやったのを連想。ささやかに見えて射程は大きく、観る甲斐のある映画。画面も良い。

  • 文筆業

    八幡橙

    色づく秋の風景。森の中に現れる不思議なカフェ。その画はとても美しく、昔愛読した『りぼん』にも通じる少女漫画的な世界。となると、ターゲットは女子なのか? それとも夢見るおじさまなのか? そのあたりが最後まで不可解だった。哲学をちりばめた会話の妙をギャグに昇華させてくれていたら、もう少し印象が違ったのでは。論文の書けない哲学者と、コーヒーを持って現れる不思議な女。雰囲気以上に、2人のキャラクターの持つ魅力や面白味に、より重きを置いてほしかった気が。

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