広河隆一 人間の戦場の映画専門家レビュー一覧
広河隆一 人間の戦場
「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」の長谷川三郎監督がフォトジャーナリスト広河隆一の軌跡を追ったドキュメンタリー。パレスチナ、チェルノブイリ、福島、沖縄へと取材・救援活動を続ける広河の原点を見つめ、現在の活動に密着する。撮影を「歩いても 歩いても」の山崎裕、音楽を「ホノカアボーイ」の青柳拓次、録音を「あん」の森英司がそれぞれ担当。
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映画評論家
上島春彦
広河の仕事も生き方も立派なのはよく分かった。それにしちゃ星が伸びないのは「仕事も生き方」も監督の客観視の範疇から一歩も出てこない気がするからだ。ずっと広河に語らせているのに不思議な感想だが。広河の家族の件が限定的にしか話題にならないせいかな。まあそういうテーマの企画じゃないか。広河のキャリアの基盤が中東情勢におけるジャーナリストの果たすべき役割の認識であったこと。その意味は現在こそ重要視されている。私たちは、彼らのことを今でも何も知らないから。
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映画評論家
北川れい子
撮る人、を撮る。近年、よく見かける。当然、撮る人を撮ることによって、その撮られた作品と撮る人の関係が一体化、記録映画を撮る側としては一石二鳥的効果があるってワケになる。中でも記憶に残るのは、2015年9月に亡くなった報道写真家・福島菊次郎のドキュメンタリー。そのドキュの監督だけに、本作も世界の実情を撮り続ける広河隆一の姿勢や活動はしっかり伝わってくるが、ゴメンナサイ、戦場カメラマンと聞くと、危険な仕事と背中合わせの功名心を感じてしまったり。
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映画評論家
モルモット吉田
「早く来てれば息子は助かったのに」とパレスチナで詰られたという広河。時として暴力に例えられるカメラは、こういう場でこそ役に立つ。チェルノブイリ、福島などへも目を向け救援活動を行う広河の行動力に驚かされるが、それを饒舌に語るわけでもない。その分、彼が撮った写真が問題を語りかけてくる。言葉と写真の配分が絶妙だ。こんな強烈な男をどう映画として撮ったのかと思っていると、撮影が山崎裕なので納得。互いに感応し合うようなカメラを持つ男たちの息づかいを感じた。
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