溺れるナイフの映画専門家レビュー一覧

溺れるナイフ

ジョージ朝倉の伝説的少女コミックを原作に「おとぎ話みたい」の山戸結希が実写映画化。東京でモデルとして活躍していた美少女夏芽は、突然父の故郷に引っ越すことになる。そこで地元を取り仕切る神主一族の末裔で跡取りであるコウと出会い、強烈に惹かれてゆく。出演は「ディストラクション・ベイビーズ」の小松菜奈、菅田将暉、「殿、利息でござる!」の重岡大毅、「ちはやふる 上の句/下の句」の上白石萌音、「猫なんかよんでもこない。」の市川実和子、「シネマの天使」のミッキー・カーチス。
  • 評論家

    上野昻志

    説明抜き、出会った瞬間に恋に落ちた二人を、常に動きの中で描いているのがいい。自転車の相乗りもそうだが、町中を流れる浅い川に、小松菜奈扮する夏芽が背中から滑り落ちたりするところ。「黒崎くんの言いなりになんてならない」で魅力を感じなかった彼女が、本作では見事な美少女ぶりを見せているのは監督のせいか。対する、金髪で走り回る菅田将暉は言わずもがな。ただ、その勢いがどこかで削がれた感じがして、★を一つ減らしたのは、二度目の火祭りがやや長過ぎたためか。

  • 映画評論家

    上島春彦

    漠然とジュニア版「火まつり」か、といぶかしんで見ていたら、全くそうだったのでかえって面食らう。物語が青春で音楽がやかましく画面が美しい。二時間続くプロモーション・ビデオというか、インパクトだけを計算した感じが私には疑問であった。が、後で一緒に見ていた先輩に聞いたら彼女はハマったそうだ。確かにパツキン菅田の美しさは比類なく、いわば生き神さまみたいな少年だからね。面白いのはこの少年がとある出来事を契機に挫折しちゃうところで、それを許せるかが鍵だな。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    小松と菅田が2人でいるシーンは常に周囲が水で満たされ、神話的世界を形成する圧倒的な素晴らしさ。これまで男の描写に難ありだった山戸が菅田を得て身体性を活かした演出も相まり〈特別に見えた〉2人の黄金時代が夾雑物を排して美しく描かれている。だが、後半の退屈な日常や重岡(演技はいい)との関わりが増えると凡庸に。三段式ロケットの如く次々と着火させて飛距離を伸ばす山戸映画の手法は中篇では有効でも2時間の尺では失速も顕著となり、★は相殺せざるを得なかった。

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