アズミ・ハルコは行方不明の映画専門家レビュー一覧

アズミ・ハルコは行方不明

山内マリコの同名小説を原作に「私たちのハァハァ」の松居大悟監督が蒼井優主演で映画化。ある日突然姿を消した独身OL安曇春子。その行方不明ポスターのグラフィティアートが若者たちによって街に拡散していくなか、無差別に男を襲う謎の女子高生集団が現れる。共演は「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」の高畑充希、「淵に立つ」の太賀、「青空エール」の葉山奨之、「グッド・ストライプス」の菊池亜希子、「アレノ」の山田真歩、「花芯」の落合モトキ、「海街diary」の加瀬亮。2016年8月19日、一般公開に先駆け、新宿シネマカリテの特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016』クロージング作品として上映。第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 評論家

    上野昻志

    蒼井優扮する春子をはじめ、女と男が出会い、なんらかの関係が出来るのがすべて同級生という点からしても、彼らが暮らすのが地方都市でしかないのは明らかだが、その地方性が感じられない。ここで地方性というのは、街の景観の問題ではなく、彼らを取り巻く空気感だ。その閉鎖された空気が出ていれば、もっと面白くなったはずだ。ま、少女ギャング団だとか、落書きだとか、いろいろ工夫はしているのだが、それも、春子を軸にストレートに話を進めるのを回避するためと見えてしまう。

  • 映画評論家

    上島春彦

    どうしても少女暴力団が好きになれず星が伸びなかったが、これはカルト・クラシックになる映画かもしれない。高畑の成人式でのきんきらきん和装とか、まさしく地方都市の鬱屈した日常を照らし出す細部でさすが。彼女の、しくじって生きてる感じがリアルで『とと姉』とはだいぶ違うな。そして問題のアズミ・ハルコだが時制が入り乱れて構成されているため、いつ行方不明になったんだかよく分からなくて、それがこの映画の最大の良さである。いや、ちゃんと見てれば分かるけどもね。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    山内マリコの『ここは退屈迎えに来て』は面白かったが、本作は映画化を見越したような作りでつまらなかった。しかも、そのまま映画にすると「スプリング・ブレイカーズ」を超えないと絶対面白くならないという難物である。それは制作陣も承知の上のようで時制をシャッフルする迂回作戦を取ったものの、その意図が見えず小手先の誤魔化しにしか思えず。断片的には魅力的に映るシーンも多く、蒼井、高畑の演技が映画を輝かせるだけに原作を解体して脚色を徹底していれば、という思いに。

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