ヤクザと憲法の映画専門家レビュー一覧

ヤクザと憲法

阿武野勝彦がプロデュースを務める東海テレビドキュメンタリー劇場版第8弾。大阪の指定暴力団二代目東組二代目清勇会の日々の生活を追いかけながら、銀行口座を作ることができないなどの組員の悩みや、その家族たちの人権問題を浮き彫りにする。
  • 評論家

    上野昻志

    面白い! と同時に、見終わったとき怒りがこみ上げてくる。集団的自衛権が憲法に違反するという以前に、暴力団対策法につぐ暴力団排除条例は、憲法14条が定める法の下の平等という原則を踏みにじっているからだ。ヤクザの子どもは、幼稚園にも入れず、給食費を納めるための銀行ローンも組めない。ここに出てくる組員が車の事故で保険を請求したら、詐欺未遂という名目で逮捕された。ヤクザに人権はないということだが、それがヤクザに留まらないことを、本作は暗示する。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    彼らは会長、ベテラン、見習い青年まで全員こちらの目を捉える引力がある。だがヤクザの人権という主題はもっと作り手側が出すべきではないか。ひとの側に立ち、国家に対するように。被写体に比してこの作品自体は描写するのみ。客観性か加担を怖れるのか、弱い。組事務所内部や何人かの構成員の暮らしを追い、興味を引き付けるだけの素材と取材映像はあるが、全体におっかなびっくりさが激しい。飛田とか新世界とか私は普通に歩いてたぞ。しかし観る価値あるドキュメンタリーだ。

  • 文筆業

    八幡橙

    カメラが覗く大阪の「二代目東組二代目清勇会」事務所内は、思いの外整然としていて、本棚には服役中の癒しとなった犬や猫のほのぼのした書籍も。端正な風貌の組長、ヤクザとはどう考えても結び付かない「部屋住み」の地味な新入り青年、家庭を捨て、一人侘しく暮らす中年組員……。口座も持てず、子供の運動会にも参加できないという不遇と被差別の中、この道しか選べない男たちの哀れが滲む。山口組の顧問弁護士・山之内氏と、彼の事務所で働くおばちゃんのキャラが特に印象的。

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