太陽のめざめの映画専門家レビュー一覧
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映像演出、映画評論
荻野洋一
救いようのない不良少年が幾度も暴発をくり返し、ムショ暮らしまで経験しながら、恋をし、赤ん坊ができて少しずつ変容していくさまを、いっさいの感傷を排除して描ききった。C・ドヌーヴ、B・マジメルら保護司スタッフを演じた面々が、第一級の存在感を見せつける。ラストの歳月の経過がもたらす感慨と無常観、冷厳な客観描写はまさにフランス的な「感情教育」であり、「深夜カフェのピエール」など、絶頂期のアンドレ・テシネ監督が絞り出した往年のロマネスクも彷彿とさせる。
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脚本家
北里宇一郎
今号のこのページはフランス映画大会。これが一番の力作。優しさというものを教わらずに育った少年がいて、暴力三昧で生きている。で、保護司や判事がなんとか彼を更生させようとする。その長年にわたる両者の苦闘の様が描かれるわけだが、観ている側にも耐久力が要求される、粘り強い演出。女優兼業の監督のせいか、主演の少年の演技が繊細で魅力的。ただ、一つ一つの描写が丁寧すぎて、しだいに展開が重くなっていくのは残念。ドヌーヴは貫祿の演技。R・パラドくんが全篇をさらう。
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映画ライター
中西愛子
昨年のカンヌ国際映画祭で、女性監督作品としては28年ぶりにオープニングを飾り話題になった本作。監督ベルコ、女優ドヌーヴの才気溢れるタッグ。フランスの女性映画人の凄みを見せつける1本だ。危なっかしい刃のような非行少年が、長い道のりを経て、意思を持ち人生の一歩を踏み出すまでの物語。母親や女判事やガールフレンドや教育係や施設の人々。いずれの愛が欠けても少年は前に進まない。母性と共に知性に裏打ちされた複合的な視点が、映画に稀有な力強さを与えていている。
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