スポットライト 世紀のスクープの映画専門家レビュー一覧
スポットライト 世紀のスクープ
新聞記者たちがカトリック教会のスキャンダルを摘発した実話に基づく人間ドラマ。監督・脚本は、「靴職人と魔法のミシン」のトム・マッカーシー。出演は、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のマイケル・キートン。第88回米アカデミー賞作品賞、脚本賞受賞他、数々の映画賞レースで受賞、ノミネート多数。
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翻訳家
篠儀直子
大スクープでも記者たちははしゃぐ気持ちになれなかったはずで、映画もそれを理解して奇をてらわぬ見せ方。テンポのよさで観る者を惹きつけ、ラストのまとめ方も上手い。M・キートンがブンヤらしさの出たイイ顔。だが「個人ではなく教会の隠蔽システムがわれわれの標的だ」と繰り返されるわりに、システムとそれを支える勢力の手強さと怖さがほとんど描かれないのがひどく奇妙だ。一瞬だけ登場する元神父の言葉と身体が、この穏健な映画にあって唯一の生々しい映画的瞬間を形成する。
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ライター
平田裕介
奇をてらわぬ、実直でオールドスクールな語り口。だからなのか、足でネタを集める記者たちの悪戦苦闘、カトリック教会のアンタッチャブルぶり、癒えることのない被害者の怒りと哀しみがジワリとズシンと伝わってくる。ただし、神父たちを小児性愛に走らせるカトリックの病んだ構造にもう少し踏み込んでもいいし、ジャーナリズム美化映画に終わっているきらいもある。それはともかく、記者たちが机を囲むキー・アートは、年度末の納会で宅配ピザを待っている感じにしか見えず。
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TVプロデューサー
山口剛
アメリカ映画には「新聞記者もの」というジャンルが確立している。社会の木鐸といった悲壮な正義感でなく、彼らの身上がタフなユーモアなのはラニアン、ラードナー、ウィンチェルたちの伝統かもしれない。牧師たちの児童虐待という陰惨な事件がテーマではあるが、記者たちの活躍がサスペンスフルに描かれる。的確な演出もいいが、特筆すべきはキャスティングだ。人気スターを集めるだけでなくアンサンブルが見事。マイケル・キートンとマーク・ラファロの芸域の広さに驚嘆。
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