華魂 幻影の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
三上寛がパンティを飲み込もうとしたり、真理アンヌが吉澤健の股間を杖でつついたり、往年の俳優たちが楽しそうに(?!)演じているのに、大西信満だけは、生真面目な顔を崩さない。それは、黒ずくめの少女の謎に引き込まれたからだろうが、その謎が明かされるとき、彼は、映画愛ともいうべき、撮ることに憑かれた者の罪に目覚めるしかない。映画作りは罪作り? ここに監督の映画に対する批評を見るのは、読み過ぎか? とまれ大西がフィルムに巻かれて絶命するショットは秀逸。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
佐藤寿保は女を犯して殺して死姦してそれを映像に収め、見せ続けてきたが、個人的にはピンク四天王(佐野和宏、瀬々敬久、サトウトシキ、佐藤寿保)のなかで観る機会が少なかった監督(統計的証拠はないが九十年代自分がいた関西で上映少なかった?)。ずっと寿保作品を街場で不意に出くわす体感を伴って観る時期を逸した気がして残念だったが、本作の終盤はそれをもたらしてくれた。胡乱な部分もある。しかし今回の本欄のフィクション映画のなかで最も挑み、観る価値がある映画。
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文筆業
八幡橙
人間のどうしようもない欲望を、閉館間近の映画館が醸す悲哀とつきせぬ映画愛に絡め描き出す、究極の“裏「ニュー・シネマ・パラダイス」”。閉館直前の古びた映画館に謎の人物(?)が棲息し、そこで働く者たちが惑わされてゆく。基本の構造は、広島の映画館を舞台にした「シネマの天使」と変わらないあたりもまた、興味深い。その意味では本作も、映画愛を基盤とした純然たるファンタジーと呼べるのかも。劇中劇「激愛」の、「気狂いピエロ」を思わせる煩悩弾け散るラストに戦慄。震えた!
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