ルームの映画専門家レビュー一覧
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翻訳家
篠儀直子
幼い子どもの目には狭い部屋も無限大の世界に見えることを示すキャメラにまず感嘆。脱出シーンのスリルも素晴らしいのだが、ほんとうに驚かされるのはそのあとだ。特別な絆で結ばれた母と子の特異な経験。言葉少なにつづられるすべての場面、すべてのショットに胸が締めつけられるような思いがする。「ショート・ターム」でもトラウマを抱えた女性を好演したB・ラーソンが、自身の演技はもちろんのこと、子役の演技を引き出すことにも貢献。完璧に表現される5歳児のリアルに瞠目。
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ライター
平田裕介
どんな環境、空間、世界に放り込まれようとも、母子の愛と絆は揺るがないし、親離れ、子離れの時期は訪れる。原作小説の勝利かも知れぬが、そんな親子の摂理をまったく遠く離れたイメージのある監禁と絡めて描く視点に感嘆。そして5歳児の息子にとって究極の“はじめてのおつかい”ともいえる脱出劇でとことんハラハラ、外界に出てからの試練のドラマでとめどなく涙ボロボロと、どちらでもアゲる振り幅上等な監督の手腕にただただ唸る。B・ラーソンも見事だが、やっぱり子役も凄い。
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TVプロデューサー
山口剛
1監禁幽閉、2脱出、3救出後の世界の3幕からなる映画だ。通常脱出成功で大団円となるところだが、本作は救出後の第3幕に意味がある。幽閉された状況での母子の濃密な世界と救出後の情報と煩雑な人間関係に溢れた世界――我らが棲んでいるのは果して解放された世界なのか?不穏な問いかけが浮び上がる。鮮烈な問題提起だ。サスペンス映画を組込んだメタシネマの趣もある。決してスムーズな語り口とは言えないが、上出来のエンタテインメントとして楽しめる。母子の演技は圧巻だ!
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