エスコバル 楽園の掟の映画専門家レビュー一覧
エスコバル 楽園の掟
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの実話を基にした犯罪アクション。麻薬王の姪と恋に落ちたカナダ人青年が、組織の闇に巻き込まれる。「トラフィック」でアカデミー助演男優賞を受賞したベニチオ・デル・トロがエスコバルを演じる。「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」出演のアンドレア・ディ・ステファノによる初監督作品。
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映画監督、映画評論
筒井武文
何やら逃避行を企てていたらしい男女のところに呼び出しが掛かる冒頭の暗さから、一転三年前に遡り、陽光のもと、コロンビアに働きに来たカナダ人青年と土地の女性の出会いが語られる。愚直な手法だが、その分りやすさは悪くない。実際、女性の伯父である麻薬王の裏表が徐々に見えはじめるあたりから(とりわけボニーとクライドが銃撃された車に青年を乗せる件)、観客を虜にしていく。そして、冒頭の時制に戻り、同行者として15歳の父親が現れてからの不条理な切迫感は秀逸。
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映画監督
内藤誠
コロンビアの麻薬王エスコバルはマーロン・ブランドの「ゴッドファーザー」の生き方に憧れていたそうで、贅沢な生活スタイルもそれを模倣。ベニシオ・デル・トロが熱演しているのだが、ブランドほど感情移入できない。家族愛を描き、姪のマリアを可愛がりながら、物語の核心部分で、その恋人ニックをファミリーにふさわしい人物かどうか験す真似をするからだ。配下のアウトローたちもパターンになりすぎで、実在する人物と事件なら、年代順にドキュメンタリータッチで見たかった。
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映画系文筆業
奈々村久生
デル・トロがとにかく怖い。笑っていても怖い。何もしていなくても怖い。「まさかあの人があんなことを……」的な意外性ではなく、家族とたわむれるような一面も持ち合わせていながら普段の生活と地続きのテンションで非情な行為に及ぶことすら、一人の人間として矛盾のないように見えてしまうところがすごい。そんな彼に小動物みたいなハッチャーソンが追い詰められていくのはいたたまれなく感じつつも、怖いもの見たさで目が離せないホラーの娯楽性も兼ね備えている。
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