君がくれたグッドライフの映画専門家レビュー一覧

君がくれたグッドライフ

難病に冒された男性が、ベルギーでの尊厳死を目的に、妻や仲間たちと自転車で繰り広げる人生最後の旅を綴ったドラマ。主演は「ヴィンセントは海へ行きたい」でドイツ映画賞主演男優賞を受賞したフロリアン・ダーヴィト・フィッツ。メガホンを取るのは、世界の映画祭で高評価を受けているクリスティアン・チューベルト。「バチカンで逢いましょう」のミリアム・シュタイン、「ゲーテの恋 君に捧ぐ『若きウェルテルの悩み』」のフォルカー・ブルッフらが共演。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    筋萎縮性側索硬化症を患ったドイツ人主人公が、法的に安楽死の認められたベルギーへ向け、親友たちとの自転車旅行に繰り出す。若き死の無念を友情によって慰撫しようと、映画は模索し続けるが、どうしても終末期ケアのテキストの域から出てくれない。やはり映画は「いい話」であるだけでは足りず、もっと映画の力が探究されなければならない。ドイツ映画というと作家の映画ばかり輸入される日本の現状にあって、ごく普通の良心的ドイツ映画を見られるという貴重な機会ではある。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    不治の病にかかったドイツ男が、尊厳死の許されたベルギーを目指し自転車旅行をする。これに妻や仲間たちがつき合い、その道中のスケッチが綴られるわけだが、どうも映画が弾まない。男を取り巻く登場人物たちのそれぞれの挿話が、あまり“死”と絡んでこないので、空回りしている印象なのだ。脚本家の年齢を見たら30際。もちろんその若さでも本質を描ける者はいる。だけどこれは監督も含め、最初の発想にしめたと思い突っ走った、その若さの勢いが物足りなさとなったような。

  • 映画ライター

    中西愛子

    尊厳死を扱う作品は、どうしてもいつも考えさせられる。このドイツ映画は、不治の病であるALSと宣告された30代の男性の決断。年に1回、自転車で旅をする6人の仲間たちに意思を告白し、それが合法のベルギーへとみなで旅立つ。当然本人もつらいが、まだ普通に元気に見える友人の急な決断を受け入れなければならない周囲もつらい。生きることへの視点は深く、朗らかで誠実な作品だ。このケースの尊厳死も、ひとつの選択肢なのだろう。考えるきっかけとして価値のある人間ドラマ。

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