ジャニス:リトル・ガール・ブルーの映画専門家レビュー一覧
ジャニス:リトル・ガール・ブルー
1970年に夭逝した女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンの素顔にスポットを当てたドキュメンタリー。彼女の身近にいた人々からのインタビュー映像と、家族や恋人に宛てた手紙を軸に、一人の女性としての“ジャニス・ジョプリン”を浮かび上がらせる。監督は、「フロム・イーブル バチカンを震撼させた悪魔の神父」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたエイミー・バーグ。2015年ヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭、ロンドン映画祭正式出品作品。
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翻訳家
篠儀直子
ジャニスが母親に送った手紙の多さと、文面の親密さと率直さに驚かされる(読み上げるキャット・パワーの声がまたいい)。彼女は異端児ではあったけれど、決して不真面目だったことはなく、いつでも「パパとママの娘」だったに違いないのだ。だからこの映画で最も胸がつぶれそうになる瞬間は、幾度かの別れと悲劇的な死以上に、過去を上書きしようとするかのごとく参加した同窓会の?末であり、彼女の成功がほかならぬ両親を不幸にしていたとわかる瞬間だ。最後の恋人の存在も印象的。
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映画監督
内藤誠
60年代ヒッピー文化の時代を生きたジャニス・ジョプリン27歳の生涯を家族、友人、手紙まで含め、綿密に追っている。『サマータイム』のレコーディング風景は彼女の音楽の真髄に触れる場面だ。ジャニスはひたすら成り上がりたいと必死。新しいものを求めてバンドも次々に解散する。ライブが大好きで、その時の活力に満ちた顔と、舞台を降りて一人になった時の表情の落差には驚く。あげくは酒とクスリ漬けの日々となり、最後にオノ・ヨーコと登場するレノンもそれについて語った。
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ライター
平田裕介
死後数十年、評伝本も無数の故人をめぐるドキュメントの場合、目新しい話が出てくるのは稀。それでも彼女の切ない人生は何度辿ってもウルッとなるし、それに裏打ちされた歌声と曲の詞にはグッとくる。この恒久性は、彼女の存在が神話と化したことの証だが、それでもベタで新味のない構成には少し落胆。本作にも登場したジャニスの元恋人たち=穴兄弟が一同に介して思い出話をする別のドキュメント『恋人たちの座談会』(未見)があるのだが、その視点は面白いと思うし、猛烈に観たい。
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