若葉のころの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ルゥルゥ・チェンは文句のつけようのないルックスをしている。彼女を捉えるカメラはその可愛らしさを増幅するべく完璧に機能している。筋の運びや心理描写は、あくまで画面の魅力から逆算されており、個々のシーンも、ワンショットごとに切り取ってもCMかMVの一部であるかのようなクオリティを誇っている。だが、それだけだ。ここには安易な感傷と都合の良いノスタルジー以外、何もない。メインイメージにも映っている自殺した女優シンディーの名前はプレスリリースに載っていない。
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映画系文筆業
奈々村久生
アイドル映画としての効力は絶大。ヒロインの女優を知らなくとも観終わる頃には彼女を好きになっているような撮り方をしている。少女の制服の短いスカートから伸びた脚をとらえるフェティッシュな目線にも迷いがない。親娘二代の物語にすることで、近年アジア映画圏で流行りの、過去と現在の時間軸を行き来する構成を取り入れているが、スローモーションを多用したカメラワークなど観る者のノスタルジーと感傷に頼る部分も多く、よくできた壮大なMVに見えないこともない。
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TVプロデューサー
山口剛
侯孝賢を敬愛とするいう監督の第一作である。全篇を貫く初々しい清潔感には好感をもてる。台北に住む十七歳の少女とその母親の三十年前の恋がカットバックで描かれる。二役を演じるルゥルゥ・チェンがチャーミング。手書きの恋文とEメール、軍服のような制服とミニスカートといった対比は効果的だが、時代の社会的背景が十分に伝わって来ない。三十年前と言えば戒厳令解除、民主化の時代である。その辺が描き込めればもっと奥行きのある作品になっただろうと思うと残念。
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