台湾新電影(ニューシネマ)時代の映画専門家レビュー一覧

台湾新電影(ニューシネマ)時代

    1980年代に台湾映画界に新たな潮流をもたらした台湾ニューシネマの誕生30周年を記念し制作されたドキュメンタリー。「悲情城市」のホウ・シャオシェン監督ら各国の映画人や芸術家にインタビュー。後世に与えた影響や、運動の意義などを探る。また、作中にはホウ・シャオシェンやエドワード・ヤン、台湾ニューウェーブの先駆けであるワン・トンの監督作が登場する。劇場公開に先駆け、第10回大阪アジアン映画祭『台湾:電影ルネッサンス2015〈小特集:エドワード・ヤンとその仲間たち〉』にて上映された(映画祭タイトル「光と陰の物語:台湾新電影」)。
    • 映画・漫画評論家

      小野耕世

      これは私にとって切実な記憶を呼びおこす映画だ。一九八〇年代の初めに侯孝賢の映画を最初に、朝日新聞の匿名コラムで紹介したのは私だったし、楊徳昌の家で彼が結婚することになる人気歌手に紹介され、台湾映画人とは香港や日本で何度も会うことになる。また王童監督の兄は台湾最大のアニメスタジオの社長だったので、この兄弟を私は親しく交流していたなど、個人的な思い出は尽きない。いまの失われた台湾ニューシネマを、アジア以外の映画人たちはどう見ていたかがわかり刺激的。

    • 映画ライター

      中西愛子

      台湾映画に感じるある種の懐かしさ。それは悲しみも含めた日本との歴史的な関係が一因なのだと本作を観て改めて思うが、それだけではないとも痛感する。時代を躍動的に切り取るテーマ性、映画美学の純粋な追求。80年代に胎動した台湾ニューシネマは、みずみずしい勢いをもって奇跡的な何かを生み、その精神は各国の映画人の心に根を下ろしている。日本をはじめ、世界の映画人のコメントは貴重。個々に継承した思いが、いま、国境を超えて見えないムーブメントを引き起こしている。

    • 映画批評

      萩野亮

      まちがってもノスタルジーに濡れたような作品ではない。オリヴィエ・アサイヤスやワン・ビン、黒沢清らが異口同音にいうように、このフィルムは「現代映画」を構想するための証言録なのであり、彼らは台湾ニューシネマを回顧しながら、同時にみずからの映画こそを語っている。そのことがこの作品の文体をあくまで現在形にしている。アジア映画の紹介につとめた佐藤忠男のことばを聞きながら、批評家の存在が新しい運動に息吹をあたえてきた映画史を想った。書きつづけなければならない。

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