神様の思し召しの映画専門家レビュー一覧

神様の思し召し

第28回東京国際映画祭で観客賞を受賞したイタリア発のコメディ。優秀だが傲慢な外科医トンマーゾは、長男が神父になりたいと言い出したことから、調査を開始。その理由が、派手なパフォーマンスで人気のピエトロ神父にあると睨み、教会に潜入するが……。出演は「赤いアモーレ」のマルコ・ジャリーニ、「恋するローマ、元カレ・元カノ」のアレッサンドロ・ガスマン。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    こういう作品に「感動」する資質が自分には決定的に欠けているのだと思う。ストーリーといい演技といいカメラワークといい、どこをどう観ても出来の悪いテレビドラマでしかない。東京国際映画祭で観客賞を貰ったそうだが、正直うんざりせざるを得ない。断わっておくが、通俗的であることが悪いわけではない。通俗的で素晴らしい映画は幾らだってある。だが、これは全然駄目だ。笑えも泣けもしない。最も「観客」を舐めている作品が大多数の観客に支持されてしまうという悲惨な逆説。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    キリストはしばしば史上最大のロックスターとも形容されるが、現代の神父にそのカリスマ性をかぶせたキャラ造形は面白い。ただ、それにしては彼のパフォーマンスも影響力もいかがわしさも生ぬるく、記号にとどまっているように感じられるものの、小物感ゆえに作品全体をコメディーとして成り立たせるコマの役割も果たしているので、このぬるさが本作の求めるユーモアの平均温度なのだろう。途中から医師役のマルコ・ジャッリーニが古舘寛治さんにしか見えなくなってしまった。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    傲岸不遜に病院と家庭に君臨している外科手術の名医と正体不明だが名説教で人気を博している謎の牧師の奇妙な関係がコミカルに展開される。主演二人を初め脇役も上手いので楽しめる。余韻を断ち切るような終わり方は狙いなのだろうが、もう少しじっくりと牧師を描きこんで笑わせ泣かせて欲しい気もする。50年代のデュヴィヴィエの傑作「陽気なドン・カミロ」を思い出す人も多いだろう。幼なじみの喧嘩友達の牧師と共産党の町長を描いたあの喜劇も伊仏合作でイタリアが舞台だった。

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