ブレイク・ビーターズの映画専門家レビュー一覧

ブレイク・ビーターズ

1980年代の社会主義政権下の東ドイツで巻き起こった“ブレイクダンス”ブームを題材にしたドラマ。ブレイクダンスに熱狂する18歳のフランクと仲間たち。ダンスを若者向けのプロパガンダに利用したい政府は、彼らを国家の芸術集団に認定する。「暗い日曜日」のルート・トーマが脚本を担当。ヒホン国際映画祭2014 Enfants Terribles部門最優秀作品賞受賞、バイエルン映画賞2014最優秀新人女優賞ノミネート。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    一九八〇年代の東ドイツで起きたブレイクダンスブームの実話で、興味深い企画である。旧共産圏を再現したノスタルジックな美術・装飾・衣裳がおもしろく、主人公の結成した人気グループが徐々に政府公認化し、政策に取り込まれる皮肉な展開も利いている。だが今さら旧共産圏の抑圧を揶揄したところで何にもならない。むしろ終末期資本主義の抑圧の産物であるヒップホップを、新たなブレヒト的解釈によるマルチチュードの種子として位置付けし直した方が、遥かに刺激的ではないか。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    ベルリンンの壁がまだあった時代、ブレイクダンスにかける東独の若者たちが描かれて。当局の規制でダンスの振り付けがアクロバティック調になっていくのが、泣き笑いのおかしさ。青年の家族までもが監視される社会主義国家の怖さ。という具合に当時のかの国の状況を背景に、若者たちがダンスを通して自分を貫く姿は面白く興味深い。監督が西独の人のせいか、東側で生きることの痛みとか切なさが足りない気も。路上でのダンスも含めて、音楽シーンの演出がもう一つ弾まないのが残念。

  • 映画ライター

    中西愛子

    1980年代、社会主義政権下の東ドイツ。アメリカ映画を観て、当時西側で大流行中のブレイクダンスに心を奪われた若者たちが、路上パフォーマーとしてチームを結成。が、政府は彼らを“国認定”の芸術集団にしようとする。文化と国の関係は、社会主義国ならずともデリケートなところがあると思う。さらには表現や活動の規制というテーマを見ていると、異国の昔話に収まらないむず痒さを覚える。ゆえに、ダンス・シーンは楽しいけど、単純明快すぎる結末にはノレなかった。

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