ハリウッドがひれ伏した銀行マンの映画専門家レビュー一覧

ハリウッドがひれ伏した銀行マン

20世紀後半のハリウッドに変革をもたらした銀行員フランズ・アフマンの真実に迫るドキュメンタリー。ロッテルダムの銀行員だったアフマンは、大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスと知り合い、プリセールスという製作資金調達方法を編み出す。本編にはケヴィン・コスナー、ミッキー・ローク、オリヴァー・ストーン、ポール・バーホーヴェンら錚々たる顔ぶれが証言者として登場。メガホンを取ったのは、フランズ・アフマンの娘ローゼマイン・アフマン。死期の迫ったアフマンが、娘のカメラに向かって思い出を語る姿も収められている。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    非常に興味深いドキュメンタリーなのだけど、映画業界外の一般観客にどれだけ興味を持たれるかというと、それは少々疑問。だが、とにかく面白いのは確か。フランズ・アフマン自身が全編出ずっぱりで大いに語り、監督は彼の実の娘という一種の家族映画だが、語られる内容のスケールはデカい。このオランダ出身の「一介の銀行員」(本人の弁)は「映画」というビジネスを一変させたが、逆に言えば、マン・ツー・マンの小さな関係性の網が「映画」を動かしているということでもある。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    映画は現場だけで出来ているわけではない。目に見える撮影やそれに関わる人たちはフィーチャーされやすいが、人は自分の想像力の及ばないことに関しては驚くほど不寛容だ。製作、現場、宣伝の間にはなかなか超えられない壁があると思うし、解決策があるのかないのかもわからない。だからオスカーの受賞スピーチで銀行マンであるフランズ・アフマンの名が読み上げられるシーンはそれだけでグッとくるものがある。監督が娘だからこそ言及できたミーハーな一面も愛らしい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    アメリカ映画に投資する者は、皆一攫千金狙いばかりと思いきや、こんな人物もいたのだ。皆が異口同音に彼はディーセントな人だと言う。上品で控えめなお人柄だ。フィルモグラフィーを見ても芸術にも娯楽にも偏らないディーセントな良心作ばかりだ。FOX社を買収した直後お縄頂戴となる悪徳プロデューサーへの融資を「友達になれない人物」という理由で拒否し銀行を首になる。その辺の事情は昨年公開の「キャノンフィルムズ爆走風雲録」にも描かれている。知られざる映画の裏話だ。

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