ヒッチコック/トリュフォーの映画専門家レビュー一覧

ヒッチコック/トリュフォー

“映画の教科書”と呼ばれる書籍『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を紐解くドキュメンタリー。トリュフォーによるヒッチコックのインタビューの音声と、現代のフィルムメーカーたちのインタビューを交え、ヒッチコックの映画術をよみがえらせる。監督は、NY国際映画祭のディレクターを務めるケント・ジョーンズ。2015年カンヌ国際映画祭クラシック部門出品。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    あの世紀の名著の映画化(?)ということで当然ながら身構えて観た。二人の対談時の録音が使用されているのが最大のポイント、というかそれありきの作品だが、ヒッチコック入門、トリュフォー入門としては及第点の出来(とか言うと叱られそうですが)。ラストの記念撮影には素直に感動したけれど、正直こういう有り難みに特化した作りはあまり好きではない。綺羅星のごときコメンテイター陣も顔見せの域を出ていない。フィンチャーの毅然とした姿勢、フランス勢の誠実な距離感には好感。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    「めまい」をめぐる映画監督たちの見解の相違が面白い。フィンチャーは「愛の物語」だと言い、スコセッシは「筋がよくつかめない」という。妻にそっくりな女性の側のドラマに着目し「美しい変態映画」と形容したフィンチャーの感覚に痺れる。普通の人生を描くことには興味がない、徹底した娯楽主義とそれに基づいた作家性の融合という奇跡。50時間に及ぶという膨大なインタビュー音源を文字に起こしたのはトリュフォー本人だったのだろうか。でなければその担当者にも敬意を表したい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    原作はインタビューによる作家論、作品論なので映像化により新たな発見があるわけではないが、多年にわたる愛読者にとってはヒッチコックとトリュフォーの元気に語り合う姿が見られるだけで感涙だ。新たに加えられたウェス・アンダーソン、オリヴィエ・アサイアスなどあまりヒッチコキアンと思えないような人たちのコメントが面白い。この映画はスクリーンで見るのもいいが、原作を手許に置き本作のDVDとヒッチ作品のDVDを交互に参照しながら観るのが正しい鑑賞法かも知れない。

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