ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気の映画専門家レビュー一覧
ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気
第80回アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞受賞作「フリーヘルド」を劇映画化。末期ガン患者のローレルはパートナーのステイシーが遺族年金を受け取れるよう求めるが、同性同士のため却下される。平等を求めるローレルの訴えは、やがて全米を動かしていく。「フィラデルフィア」のロン・ナイスワーナーが実話を基に脚本化、「キミに逢えたら!」のピーター・ソレットが監督を手がけた。「アリスのままで」で第87回アカデミー賞主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアが、病を押し愛する人を守るために闘うローレルを演じる。また、彼女のパートナー、ステイシーを演じた「JUNO/ジュノ」のエレン・ペイジは、本作のプロデューサーも兼任した。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
アカデミー賞の短篇ドキュメンタリー映画賞受賞の「フリーヘルド」(本作の原題も同じ)でも描かれた、婚姻の権利を求めて裁判を起こした実在の同性愛カップルを、ジュリアン・ムーアとエレン・ペイジが驚くべき熱量と繊細さで演じている。事実を追っただけでドラマチックな物語になるのだが、映画のタッチとしては完全に社会派で、メロドラマ的演出は抑制されている。刻々とガンに蝕まれていくムーアの演技が素晴らしい。エレン・ペイジの真に迫ったスピーチと表情には泣かされた。
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映画系文筆業
奈々村久生
中年男性と若い女性の年の差カップルは珍しくもないが、これが女性同士の関係に置き換えられただけで、年齢の離れた相手と人生を共にする選択が何を意味するのか、思いもよらない角度から見えてくる。20代のペイジと50代のムーアが睦まじく寄り添う姿はビジュアルでもその現実を生々しくつきつけ、実写の力がものを言う。男と女、善と悪の対立ではなく、ごく一般的な感覚を持ち合わせた人たちの意識の変化を丁寧に描いているのもいい。スティーヴ・カレルの存在は救いだ。
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TVプロデューサー
山口剛
レズビアンの難病ものかといってこの面白い映画をくれぐれも敬遠なさらないよう。性的少数者の権利という社会的テーマをきっちり押さえながら、警察もの、裁判劇、恋愛ものとジャンルを横断するドラマチックなエンターテインメントになっている。LGBTの活動家でもあるナイスワイナーの脚本、P・ソレットの的確な演出はアメリカ映画の作り手の層の厚さを感じさせる。「アリスのままで」をしのぐジュリアン・ムーアの熱演と制作にも名を連ねるエレン・ペイジの個性が見ものだ。
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