グッバイ、サマーの映画専門家レビュー一覧

グッバイ、サマー

「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリーが、自ら脚本も手掛けた自伝的青春ロードムービー。数々の悩みを抱える14歳のダニエルは、風変わりな転校生テオと意気投合。2人でスクラップを集めて“動くログハウス”を作り、夏休みに旅に出る。出演は、オーディションで抜擢された新人のアンジュ・ダルジャンとテオフィル・バケ。「ムード・インディゴ うたかたの日々」のオドレイ・トトゥが脇を固める。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    こういう作品って一種のファンタジーだと思うんですよ。つまりリアリズムではないということ。ここに描かれた少年たちは、現在にも過去にも、どこにも存在はしていない。ただ監督ミシェル・ゴンドリーの脳内世界にだけ棲んでいる。そしてそれが一概に悪いわけではもちろんない。そりゃフィクションだもの、ということではなくて、たとえ一見そう思えたとしても、実のところは現実の淀みや歪みを濾過された「理想の未熟さ」なのだ。それさえ認めてしまえば、とても良く出来ている。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    いい歳をして大人になりきれない男女の生態描写が得意ながら、よくも悪くもそこに漂うロマン色が強いミシェル・ゴンドリー。だが登場人物の精神年齢はそのままに、肉体をリアル思春期に引き下げると、これがぴったり。彼らのナイーブさや面倒くささを素直に受け入れて楽しめる。手づくりの創作自動車や動くログハウスの構想にはアナログ魂にあふれたゴンドリーらしさが炸裂。落ち武者のような出来損ないの金髪サムライカットを自らバリカンで剃り上げる少年がかっこいい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ロマンティックで芸術家肌の「チビ」と兄貴分のメカおたくの転校生「ガソリン」。世間を軽蔑しながらも世間に同調できない不安、セックスへの不安と憧れ、家族や学校の疎ましさ――二人ともトリュフォーの描いたアントワーヌ少年の末裔と言って良い。生き生きした会話が楽しい。もう一つの主役は「動く隠れ家」だ。家族や学校のしがらみを逃れ好きな所へ行けるアジール。こんな車を夢見なかった少年はいないだろう。黒こげになって谷底へ落ちる車は、幼年期との決別のようだ。

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