お嬢さん(2016)の映画専門家レビュー一覧

お嬢さん(2016)

サラ・ウォーターズの小説『荊の城』を原作に「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督が映画化。1939年の朝鮮半島。支配的な叔父と豪邸で暮らす華族令嬢・秀子のもとへ、新しいメイドのスッキがやって来る。彼女は秀子の莫大な財産を狙う詐欺師の手先だった。出演は「泣く男」のキム・ミニ、「暗殺」のハ・ジョンウ、「チャンス商会 初恋を探して」のチョ・ジヌン。美術は「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」のリュ・ソンヒ。2024年8月2日より恵比寿ガーデンシネマにて「別れる決心」と2本立て特別上映決定。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    これぞ真正パク・チャヌク。『イノセント・ガーデン』なんか遠慮しまくりだったことが本作を観るとよくわかる(あれも好きですが)。とにかく過剰なエキセントリシズムのためだけに構築されたかのごとき設定、物語、場面、演技その他ではあるが、夥しいツッコミどころをあっさりと越えて映画はひたすら暴走してゆく。サラ・ウォーターズ『荊の城』をあんな異形の映画に翻案してみせた監督の奇才ぶりには舌を巻く。これがデビュー作のキム・テリが非常に魅力的。そんなエロくないです。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    パク・チャヌクは様式美の監督だ。だから型や作法で固められた上流階級のライフスタイルを描くことは、建築・衣裳・小道具における表現も総合して彼の作家性と非常に親和性が高く、実際相当な完成度で成功している。そこにしっかりとフェティシズムの血が通っているのもいい。貴族趣味の追求が一種の変態性に到達するサド等の使い方たるや。エロティシズムが型に昇華されていく体位の描写も見事だ。イメージのビジュアル化を極める能力の高さゆえ生身の俳優の真価が問われる。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ロマンポルノ・リブートのある作品を見て、完成度はあるがエロスと活力の不足を感じた折、この作品を見て興奮を覚えた。レズビアンのセックス・シーンは「キャロル」をはじめ最近多いがこの映画のエロスと言うより猥褻に近い描写には圧倒された。パク監督のテーマはずばり異端の追求だろう。設定やストーリーの展開は強引だが、エンターテインメントのツボは外していない。伝奇小説的なおどろおどろしさ、ミステリーの意外性、アナーキィな抒情、興趣つきない二時間半だ。

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