奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガールの映画専門家レビュー一覧
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
渋谷直角の同名コミックを原作に「モテキ」の大根仁監督が映画化。ライフスタイル誌編集部に異動になった35歳のコーロキ。ある日、男性すべての運命を狂わせると評判のファッションプレス・あかりに一目ぼれしたことで、希望と絶望が交錯する過酷な日々へと突入する。出演は「愚行録」の妻夫木聡、「高台家の人々」の水原希子、「葛城事件」の新井浩文、「百円の恋」の安藤サクラ、「PとJK」の江口のりこ、「恋妻家宮本」の天海祐希、「美しい星」のリリー・フランキー、「ジヌよさらば かむろば村へ」の松尾スズキ。
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評論家
上野昻志
初め、妻夫木聡が奥田民生になりたいボーイとして出てきたのには、ゲッ、ボーイというには老けすぎじゃないと思ったが、一所懸命ウブなボーイを演じようとしているのを見るうちに、あまり気にならなくなった。対して水原希子の狂わせるガールは填まっていた。整った美人じゃないのが良かったのかも(失礼!)。あと、リリー・フランキーを始め、マンガチックなキャラを次々と繰り出して話を引っ張るあたりは手慣れたものだが、妻夫木と新井浩文と松尾スズキ三者の対決は迫力を欠く。
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映画評論家
上島春彦
純情なエリート編集者、妻夫木。高嶺の花と憧れていた希子さまと出来ちゃって疾風怒濤の日々が始まる。希子は妻夫木の、というより実は編集者の守護神なんだね。この人のおかげで世界が回っている。ウディ・アレン映画的なディーヴァを演ずるのに彼女のトンガリ具合は最適だ。ハイソなネタを扱う雑誌でも最先端的な編集技術が投入されるのじゃなく、写真植字を切り貼りしているのがまた笑わせてくれるというか、泣かせてくれる。地味な職業映画という切り口に未知の可能性を感じた。
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映画評論家
モルモット吉田
「モテキ」よりも小ぶりな話だけにメジャー用の無謀な拡張を危惧したが、そこは大根仁だけに嗅覚と均衡感覚に狂いなし。原作の魅力を最大限抽出して小品としての完成度を高めて100分で描き切る手練の技を味わう。昨今のサブカル退潮期の流れも踏まえ、ギミックよりも普遍的な語り口を重視し、現代日本映画としては屈指のファムファタールものに。脇に回ると狂気の飛び道具と化す面々も揃い、妻夫木の困惑顔がおかしくも哀しい。希子ちゃんだけを眺めるためにもう一度観てきます。
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