古都(2016)の映画専門家レビュー一覧

古都(2016)

川端康成の同名長編小説を、舞台を現代に置き換え映画化。松雪泰子が双子の二役を演じている。京都で代々続く呉服店を営む千重子と、北山杉の里で働く苗子。生き別れた双子の姉妹とその娘たちは、時代が大きく移ろう中、受け継いできた伝統の継承に葛藤する。京都とフランス・パリで撮影が行われた。監督はハリウッドで映画を学び「Re:Play-Girls」などを手がけたYuki Saito。岐路に立つ娘たちを「寄生獣」シリーズの橋本愛と「無伴奏」の成海璃子が演じる。2016年11月26日より京都先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    ちょっと批評のことばもない。星一つはおマケです。どういう狙いがあってハリウッドで8年映画作りを学んだという実力未知数の新人監督を起用したのか不明だが、和服姿の松雪泰子が京都をウロウロする、その歩き方からしてブザマで、しかもその表情はミジメッたらしい八の字顔、古都も文化もヘッタクレもあったもんじゃない。川端原作の現代版? 古都つながりでパリに留学? とにかく場面はあっても絵ハガキ未満、終盤のパリの日本文化デモンストレーションは、悪夢か悪い冗談か。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    川端康成『古都』は過去に岩下志麻版、山口百恵版があるが、本作は単に再映画化ではない、いま流行の新味を加えた改変をアピールしたいリブート版。変えたところ付け加えたところに?まれるものがある「古都 怒りのデスロード」。生活格差が生じた双子という従来の設定に、さらにその娘たちは、と線を延ばしたところが現代。そこでの自立や人生の開拓がおこなわれる。松雪泰子二役、蒼あんな蒼れいな姉妹、橋本愛、成海璃子と、落ち着いた系の美人が満載でそれだけでも観られる。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    本作は西陣織の世界を描いているが、これは〈映画〉そのもののことを描いているようでもある。後継者を失い、技術が廃れ、次世代に引き継げないという現状。この映画は、その“伝統”のあり方を川端康成の『古都』に倣いながら、かつて栄華を誇った撮影所のある街・京都を舞台にしている。それは単なる偶然ではない。映画の始まりと終わりを飾る、着物の縦糸と横糸。それはまるで、京都の街を象る碁盤の目のようではないか。そして、唐突に思えるパリの風景に共通項を見出すのである。

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