アイ・ソー・ザ・ライトの映画専門家レビュー一覧

アイ・ソー・ザ・ライト

1950年前後に“キング・オブ・カントリー”と呼ばれたアメリカのシンガー、ハンク・ウィリアムスの半生を描いた伝記映画。1944年、ハンク・ウィリアムスは愛する女性と結婚。息子も生まれるが、音楽活動が軌道に乗るにつれ、家族との溝を深めてゆく。ハンクを演じたのは「アベンジャーズ」(12)のトム・ヒドルストン。劇中の全楽曲を自分で歌っている。共演は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」のエリザベス・オルセン。「ロボコップ」(14)などのプロデューサー、マーク・エイブラハムが製作・監督・脚本を兼任。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    カントリーの大スター、ハンク・ウィリアムスの伝記映画。たった29年しか生きなかったこの天才歌手の短過ぎる人生を、トム・ヒドルストンが情感たっぷりに演じている。録音に差し替えたりせず、すべての歌をヒドルストン自身が歌っている。これがいいんだ。妻オードリー役のエリザベス・オルセンの蓮っ葉な愛らしさも魅力的。彼女の歌がまたいいんだ。というわけで、主演二人の演技と歌対決みたいな様相もあり。逆光と影を活かした、くすんだ画面がクラシカルな効果を上げている。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    トム・ヒドルストンは劇中の歌唱もすべて自分でこなしたそうだが、それが本当であってもなくても関係ないぐらい、ハンクという人にしか見えなかった。栄光も堕落も抑制の利いた演出が冴える。美しく魅力的だが良妻賢母からはほど遠いエリザベス・オルセンもいい。才能ある者が必ずしも人間のできた相手を愛するとは限らないし、傍目には不相応に見えても(ハンクの音楽面での成功を除けばむしろ相応だ)互いが相手を必要としていれば関係は成立する、その説得力が凄まじい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    トム・ヒドルストンの歌唱力、演技力は超絶的名演と言っていいだろう。まるでハンク・ウィリアムスが憑依した感がある。強い南部訛りで唄う誰でも知っているこの歌手の役を、シェイクスピアを演じているイギリスの舞台俳優に振り、歌の特訓を重ねたというプロデューサーの賭けは見事に的中している。アル中と不幸な結婚の半生は、その歌とは対照的に暗く悲惨なものだが、ヒットパレードのごとく次々と懐かしい名曲が聴かれるのは嬉しい。妻を演じたエリザベス・オルセンも面白い。

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