花筐/HANAGATAMIの映画専門家レビュー一覧
花筐/HANAGATAMI
檀一雄による同名短編小説を大林宣彦監督が映画化。「この空の花 長岡花火物語」「野のなななのか」に続く“戦争三部作”の最終章。1941年の佐賀県唐津市を舞台に、戦禍の中に生きる若者たちの心が火傷するような凄まじい青春群像劇を、圧倒的な映像力で綴る。出演は「野のなななのか」の窪塚俊介、「三度目の殺人」の満島真之介、「マイ・バック・ページ」の長塚圭史、「彼女の人生は間違いじゃない」の柄本時生、「クレヴァニ、愛のトンネル」の矢作穂香、「チア・ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」の山崎紘菜、「世界は今日から君のもの」の門脇麦、「だれかの木琴」の常盤貴子。脚本は大林宣彦と「HOUSE ハウス」「ふたり」の桂千穂。音楽の山下康介、撮影・編集の三本木久城、美術の竹内公一、録音の内田誠ら「野のなななのか」スタッフが引き続き参加。2017年12月7日より唐津先行上映。2017年第91回キネマ旬報ベスト・テン日本映画2位、日本映画監督賞(大林宣彦)。
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評論家
上野昻志
大林作品らしい絢爛たる画像が次々と繰り出されるのに眼を奪われるが、主人公かつ語り手の俊彦に扮する窪塚俊介の表情が気になる。唐津という新しい世界にやってきて、見るもの、接するものに興味津々というイノセントな青年ぶりを現すためだろうが、演技臭を感じるのは当方の偏見か。俊彦が訪ねた吉良(長塚圭史)の部屋で寝台から降りる千種(門脇麦)の足に血が垂れるとか、兵隊姿の案山子がいつの間にか人間の兵隊として行進するといった目覚ましいシーンには事欠かないのだが。
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映画評論家
上島春彦
引退したのかと思っていた穂香ちゃんが華やかに復活。しかもあろうことかツルピカなお尻まで。それはともかく、いかにも大林的な吸血鬼(風)美少女がハマって嬉しい。ただし私はこの監督の映画を一切評価しないので、星を足してもこんな感じ。無意味な百八十度切り返し編集としつこい合成画面。配役は豪華でも記号みたいにしか演出されていない。こういう悪い見本みたいな作風になってから評価が高まったのは、彼には不幸なことであった。インタビューもやたらと言い訳がましい。
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映画評論家
吉田伊知郎
半年前に観て以来、夢の中にこの映画の極彩色の映像が現れては消えるほど、フィルムからデジタルへ移行してから過剰さを増した大林映像絵巻の極地を体感。黒澤、新藤と同じく晩年を迎えた監督が枯淡の境地に達するのではなく、剥き出しになったイノセントが独自の映像美学へと衰え知らずに昇華されていくのに否応なく圧倒。キャリアのある若手俳優たちからも驚くような初々しさが引き出され、デジタル紙芝居に血を通わせる。集大成ではなく、大林の“まあだだよ”が聞こえてくる。
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