映画 夜空はいつでも最高密度の青色だの映画専門家レビュー一覧
映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
最果タヒの同名詩集を原作に「舟を編む」の石井裕也監督が映画化。看護師をしつつ夜はガールズバーで働き、不安や孤独を抱えながら日々を過ごす美香と、建設現場で日雇いの仕事をしながらひたむきに生きる青年・慎二。そんな二人が夜の都会で、偶然に出会う。出演は、新人の石橋静河、「セトウツミ」の池松壮亮、「少女」の佐藤玲、「淵に立つ」の三浦貴大、「シン・ゴジラ」の市川実日子、「ぼくのおじさん」の松田龍平、「映画 ビリギャル」の田中哲司。2017年第91回キネマ旬報ベスト・テン日本映画1位、日本映画脚本賞(石井裕也)、新人女優賞(石橋静河)。
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評論家
上野昻志
喪失感を抱え、潔癖さのために世の中の当たり前が信じられず、その虚しさから身を守るために言葉を連ねる女と、他人に対しては間歇的に饒舌になりながら、自分のことに関わる言葉を発しない男。そんな二人が、喧噪に満ちた都会の底ですれ違う。それを緻密に設計された対位法と反復によって描くことで、事件らしい事件などないのにサスペンスを孕み、見ているわたしたち自身に、彼女と彼が正面から向き合うことを切望させる。新人・石橋静河と彼女を輝かせた池松壮亮に乾杯!
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映画評論家
上島春彦
詩集が原作というのは十分セールスポイント、別に登場人物が詩人というわけではない。原作を活かした独白のせいで「妙にカラむ女だなあ」という第一印象になったのは失点だが、その骨太美女が「青春の門」の頃の杉田かおるに似ているのは気に入った。もう一方の言葉が空回りする若者と娘との恋以前の恋というコンセプト。というか、昨今のこの手の物語には珍しく肉体関係がないんだよね。労働現場のストレス、ワーキングプア、孤独死と暗い話題が多いが暗い映画じゃないのを評価する。
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映画評論家
モルモット吉田
現代の東京のディテールが丹念に描かれるが、20分経ってもどういう話なのか不鮮明。ようやく動き始めてもそこで提示される労働、貧困、独居老人、地震、原発、放射能と、まるで社会問題の全品総ざらいで、最終的に挨拶しましょう、いただきますを言いましょうと教育映画的なメッセージが残される。ストリートミュージシャンを野嵜好美に演らせたのは面白いが励まし系の単純な歌詞に苦笑。それでも本作が忘れ難いのは石橋静河の圧倒的な存在感にあり。今年の新人賞は総ナメだろう。
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