ハート・オブ・ドッグ 犬が教えてくれた人生の練習の映画専門家レビュー一覧
ハート・オブ・ドッグ 犬が教えてくれた人生の練習
ニューヨークの音楽家ローリー・アンダーソンが、亡き夫ルー・リードと共に飼っていた愛犬との日々を振り返りつつ、“愛と死”、“アメリカの今”を見つめたドキュメンタリー。様々な思い出の断片が、美しい映像とアンダーソン本人の朗読によって綴られる。監督、脚本、音楽をアンダーソン本人が担当。撮影も共同で手掛けている。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
私の高校時代、L・アンダーソンがデビューした。1stアルバム『ビッグ・サイエンス』はロックから逸脱したNY派らしい前衛エレクトロとポエトリーリーディングの融合で、高校生の私は第2のニコが出現したと思った。この直感がのちに奇妙な感慨を呼ぶのは二〇〇八年、彼女がルー・リードと結婚したというニュースを見た時だ。私が彼女の音楽を聴いたのは高校時代だけだが、今こうして彼女と30数年ぶりに再会した。愛犬と夫ルーを悼むあまりにも美しく悲しげなシネエッセーにおいて。
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脚本家
北里宇一郎
こういう映画は、家族と友人と熱烈なファンを集めて見せればいいと思った。そう、閉ざされたプライベート・シネマなのだ。だけど、惹きつけられる。それは“死”と懸命に格闘しているから。“死”をどう受け止めようか模索している心の動き。それを、犬や母、自身の事故の体験を通して探り続ける。その混沌とした軌跡がコラージュ的映像で刻まれていく。そして最後にL・リードの歌声が。その時これが、ローリーの夫に対する深い哀しみと愛に満ち溢れた追悼の映画だと分かって。黙祷。
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映画ライター
中西愛子
NYアートシーンで活躍し続ける音楽家ローリー・アンダーソン。愛犬と戯れる、そんな何気ない日常風景から、縦横無尽に広がる発想を映像にしたためたシネマ・エッセイ。前半の9・11を契機に起こったNYの変化を見つめる思索の旅は、後半“死”というテーマが濃密に立ち込めるにつれ、アンダーソンの内的世界の物語に移行していく。撮影中、夫のルー・リードを闘病の末、亡くしたこともあるだろう。繊細に紡がれる映像と言葉と音楽のミクスチュア。感覚を研ぎ澄まして味わいたい。
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